建設業における外国人労働者の現状と課題
ここでは、建設業における外国人労働者の現状と課題についてみていきましょう。
人手不足と外国人労働者の増加
令和6年10時点で厚生労働省が発表している『「外国人雇用状況」の届出状況まとめ』では、すでに約17.7万人の外国人労働者が建設業に従事しています。
2024年の建設業の労働人口が約483万人であることから考えると、27分の1は外国人となっており、3.7%は外国人労働者となっているといえるでしょう。
また、2022年の特定技能1号の拡充により、より多くの業務で外国人労働者が活躍できるように変化しています。
たとえば、2022年以前は型枠や鉄筋といった特定の18職種でなければ特定技能1号となることが難しい状況でした。
しかし、2022年の改正後は以下のような分野に変化しているため、外国人が業務として従事しやすい内容に変化しています。
- 土木(型枠施工、コンクリート圧送、建設機械施工、トンネル推進工 など)
- 建築(左官、屋根ふき、鉄筋施工、建築板金、内装仕上げ など)
- ライフライン・設備(電気通信、配管、保温保冷 など)
建設業で外国人労働者の定着が難しい理由
建設業で外国人労働者の定着が難しい理由は大きく分けて、以下の3つです。
- 言葉の壁:作業指示の理解不足によるトラブル
- 安全管理の意識不足:日本の安全基準との違いによる事故リスク
- キャリアパスの不透明さ:長期的な雇用につながらない
たとえば、言葉の壁のみに焦点を当てても指示が明確に伝わらず、施工ミスが発生したり道具の名称がわからず 作業が遅れてしまったりする可能性があるといえます。
ただし、以下のような対策ができれば、トラブルを軽減できます。
・多言語マニュアルでの学習を1ヶ月程度は行い、テスト形式でフィードバックする
・安全管理についてもルールを徹底的に多言語対応動画やマニュアルで学習を進める
翻訳アプリなどの導入によってミスを減少することも可能です。
キャリアパスについては、会社側で整備する必要があるものの、日本語学習によって防げるトラブルは多数あるといえるでしょう。
外国人採用の失敗例:日本語能力のミスマッチによる施工ミスと安全トラブル
A社(建設業)は人手不足の解消を目的に、ベトナムから5名の特定技能1号の外国人労働者を採用しました。
彼らは母国で建設業の経験があり、基本的な作業は問題なくこなせると判断されていました。
しかし、日本語の理解力に関しては「日常会話レベルで問題なし」との報告のみで、作業指示や安全管理の理解度について事前の確認を行いませんでした。
発生した問題
1ヶ月後、ある建設現場でコンクリート打設作業を行っている最中に、3つの問題が発生しています。
- 現場監督が「型枠の補強が終わるまで、コンクリートを流し込むのを待って」と指示した。外国人作業員は「流し込んでOK」と誤解し、型枠が未完成の状態でコンクリートを流し込み始めてしまった
- コンクリートが漏れ出し作業のやり直しが発生。
- 周囲の作業員が慌てて止めようとした際に、足元が滑り、転倒事故が発生した
日本語の理解不足によって、作業のやり直しと安全リスクの発生によって、現場のスケジュールに大きな影響を与えてしまいました。
発生原因
今回の事例の発生原因は、「作業指示の理解不足」と「教育・研修不足」でした。たとえば、日本語に加え、作業内容に対しても以下のような問題が発生していたといえるでしょう。
- 日本語の「待つ」「準備ができたら」という指示が正しく伝わらなかった
- 技術的な日本語用語(型枠・補強・打設)が分かりにくかった
- 安全管理意識の違い
対策
建設現場におけるミスは、作業工程の遅れだけでなく、時には命に関わるといえます。
そのため、この企業では徹底的に日本語の技術用語を事前に学習させるため、建設業に特化した「安全指示」「作業手順」の日本語講習を2週間実施することにしました。
たとえば、以下のような施策を実施しました。
- 翻訳ツールや指差し会話シートを導入し、「作業を止める」「確認する」などの重要フレーズを多言語で可視化し、すぐに理解できる環境を構築した
- 作業前のロールプレイング研修を義務化し、コンクリート打設の流れを動画や実演で見せ、適切な判断ができるようにした
- 安全管理の強化を図り、「日本では慎重に確認することが重要」と文化的な違いを説明し、現場監督の指示を待つ習慣を徹底した
外国人を採用する場合、日本語の理解力は「日常会話ができる程度ではなく、 自社の作業が滞りなく できる程度まで引き上げる必要がある」といえるでしょう。
技能実習生 や特定技能 1号といった 在留資格の違いはあるものの、何をどこまで把握しているのかを会社側で判断できるような研修と仕組み作りが大切です。
日本語教育について詳しく知りたい場合は、こちらの記事から。
外国人採用を成功させる3つのポイント
建設業の外国人採用を成功させる3つのポイントは以下のとおりです。
- 日本語教育+通訳の活用―建設現場では作業指示や安全管理の理解が不可欠。業務に必要な日本語研修を実施し、多言語マニュアルや指差し会話シートを活用する。翻訳アプリや通訳スタッフを配置し、言葉の壁をなくすことで、作業ミスや事故を防ぐ
- キャリアパスを明確にし、昇給制度を整備―特定技能1号から2号への移行支援を行い、長期雇用を促進する。資格取得支援や昇給の仕組みを整え、努力が評価される環境を作ることで、モチベーションを維持し、離職率を低下させる
- 生活支援(住居、ビザ手続きサポート)を充実させる―住居の確保やビザ更新手続きをサポートし、安心して働ける環境を整える。銀行口座開設や文化適応支援も行い、生活面での不安を軽減する
また、デジタルツールを活用し、言語・安全管理を強化する方法も効果的です。
企業全体で多文化共生を推進し、外国人労働者の長期定着を目指しましょう。
まとめ
外国人採用を実施し、言葉の壁を克服するためには、翻訳ツールの導入や多言語マニュアルの活用といった施策が重要です。
実際の業務を想定したロールプレイ研修を取り入れることで、作業精度の向上や日本語のスキルを向上させられます。
また、外国人労働者にとって、昇進や待遇改善の見通しが立たないことが、短期離職につながる要因の一つです。
長期的に特定技能2号への移行支援や資格取得の促進を通じて、長期的なキャリア構築を支援する仕組みが求められます。
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