外国人採用がうまくいかなかったケース
ここでは、外国人採用がうまくいかなかった ケースについてみていきましょう。
とくに、書類や手続きとしての準備を進めるだけでなく、コミュニケーションや労働環境の整備が大切です。
外国人技能実習生の早期退職が相次いだ失敗事例と対策
日本の建設業界では、高齢化や若手の担い手不足が問題となっており、多くの企業が外国人技能実習生を受け入れて労働力の確保を急いでいます。
ある企業では、技能実習生を数十人単位で採用し、人手不足を解消しようとしました。
しかし、採用からわずか半年で技能実習生の大半が辞めてしまうという深刻な事態に直面しています。
原因1・文化や労働環境の違いによるトラブル
1点目は、日本の「報・連・相(報告・連絡・相談)」の文化を知らず、仕事の指示が明確に伝わらなかった点です。多くの外国人技能実習生は、「言われたことをやる」というスタイルに慣れており、自分から相談する文化や考え方がなかったといえます。
そのため、作業中に問題が発生しても報告されず、上司が気づかないままトラブルに発展するケースが多発し、技能実習生がストレスを感じる環境になったと考えられます。
また、技能実習生は母国では「週5日労働・土日休み」などの勤務体系に慣れていたものの、日本の建設業では土曜日も出勤が多いことに納得していなかった点も挙げられます。
企業側は「事前に説明した」と考えていたが、実習生は「こんなに大変だとは思わなかった」とギャップを感じ、モチベーションが低下したといえるでしょう。
原因2・言葉の壁や文化の違いに適応できなかった
技能実習生に対して、企業側は住居の手配や銀行口座開設などのサポートもほぼなしでした。
そして、言葉の壁もあり、日常生活での困りごとを誰にも相談できず、「日本での生活が苦しい」と感じるようになったといえるでしょう。
また、日本のルール(ゴミの分別、公共交通機関の使い方、役所での手続きなど)が分からず、日常生活でのストレスも増加していました。
結果として、「日本の生活に馴染めない」と感じ、早期退職につながったと考えられます。
対策:外国人技能実習生視点で必要な支援
この失敗を受けて、ある建設事業者は「単に雇うだけでなく、技能実習生が安心して働ける環境を整えることが重要」と考え、以下の改善策を導入しました。
- 事前研修を実施し、「日本の仕事の進め方」を教える
- 労働時間や休日のルールを事前に明確に説明する
- 生活支援を充実させ、技能実習生が日本に馴染める環境を作る
まず、技能実習生の受け入れ前に、以下の研修を実施することを徹底しました。
- 日本の「報・連・相」文化を理解できるように解説し、報告・相談のタイミングを具体的に指導した
- 建設現場の安全ルールを分かりやすく説明し、「なぜ守る必要があるのか」を丁寧に伝える
- 現場の指示を正確に理解できるよう、業務に必要な日本語の研修を行った
技能実習生が業務の進め方を理解し、上司とのコミュニケーションがスムーズに取れるように変化しました。
また、現場内の会話だけでなく、研修でもコミュニケーションを取るようにしたところ、お互いの考え方が把握できるようになり、円滑な業務進行につながっています。
次に、採用時や研修時に「実際の勤務スケジュール」を以下のように、具体的に伝えることを徹底しました。
- 土曜は月2回出
- 残業は1日平均1時間
たとえば、日本の建設業界では 後期が厳しく、契約の段階で「自社の施工が理由で工期遅れになった場合には、罰則が発生する」というルールも伝えています。
労働時間に関しては、「法律の基準に従って管理している点は採用時の研修」で伝えるようにしたことで、勤務についての不満はなくなりました。
また、外国人の働き方に合わせて日本人の働き方も管理ツールの導入などによって長時間労働の削減や休日の増加を図ったことで、より働きやすい環境に変化しています。
事例からみる齟齬を無くすためのポイント
外国人材を採用して共に働く場合、 以下のようなポイントを意識しましょう。
- キャリアパスを明確にして長期的に働ける環境を作る
- 生活支援を充実させ、職場以外の不安を軽減する
- 仕事内容や働き方の「具体的な説明」を徹底する
実際の働き方に関しては言っただけでは伝わらない可能性があり、残業や休日などもう仕組みとして整えておかなければ 急には対応できません。
しかし、労働時間や休日の考え方、相談窓口を作るといった対策は、すぐに対応できる施策だといえるでしょう。
仮に、 建設業でなかった場合だとしても、「外国人材が業務内容を把握できる環境が整えられているかどうか」という視点から、現状を把握することが大切です。
たとえば、 「技能実習生からスタートして特定技能 2号まで取得すれば長く働ける」という見方は企業側の視点です。
その視点に加えて、採用する外国人材に対しては、キャリアパスを具体的に示し、3年後にはどうなっているのかを明確に示す必要もあります。
つまり、 企業側としても外国人材に納得して働いてもらうための要素を複数持っておかなければなりません。
まとめ
ここまで、外国人材の失敗事例からの対策についてみてきました。
企業によって、課題は異なるものの、現状を把握し、1つずつ対策を取っていけば状況は改善していきます。
とくに、コミュニケーションに関しては、企業側からも支援する必要があるという点は把握しておきましょう。
LTBでは、「外国人採用を進めたいが不安」「相談先を探していた」という企業のサポートを行っています。興味がある場合は、お気軽にお問い合わせください。