業界別:外国人材の活用実態と可能性
少子高齢化による人手不足は、産業構造全体に影響を及ぼしていますが、特に「人の手」に依存する現場中心の業界ではその影響が顕著です。
製造、建設、運送、接客といった分野では、「もう日本人だけでは事業が立ち行かない」という危機感が強まっており、外国人材の受け入れが“選択”から“前提”へと移行しつつあります。
ここでは、それぞれの業界で外国人材がどのように活用され、どんな課題と可能性があるのかを具体的に見ていきましょう。
製造業
製造業では、とくに地方の中小工場で人材確保が困難になっており、ライン作業・検品・機械オペレーターといったポジションで慢性的な人手不足が続いています。
40代以上の中堅層に業務が集中し、若手の応募がほぼゼロという企業も珍しくありません。
こうした状況に対して、多くの企業が技能実習制度や特定技能制度を活用し、外国人材を受け入れています。単
純な補助作業にとどまらず、以下のような幅広い業務で活躍しています。
- 組立・加工・ライン作業
- 検品・検査機器の操作
- 自動機の立ち上げや定期メンテナンス
- 品質チェックや報告書作成のサポート
たとえば、母国で工学教育を受けた人材であれば、CADソフトの操作やIoT機器の保守・設定といった業務にも対応可能です。
ただし、この場合は、大学をはじめとする高等教育を受けて卒業する、在留資格としても技術・人文知識・国際業務(技人国)が必要となる点は知っておきましょう。
スマートファクトリー推進に向け、技術人材としての登用も期待されています。
建設業
建設業では、就労者の高齢化が進んでおり、50代以上が過半数を占める現場や企業も少なくありません。
若手の新規入職が激減し、「技能の継承が間に合わない」「班編成ができない」といった現場の声が増えているのも現状です。そのうえで、建設業では、以下のような職種で外国人が活躍しています。
- 型枠施工
- 鉄筋施工
- 左官・とび・内装仕上げ
- 建設機械施工
- 塗装・配管・電気通信など
実務現場への配属・定着も進んでいます。また、技能実習生からスタートした場合であれば、特定技能2号への移行によって、在留制限のない長期雇用が見込まれる点も企業にとって大きな魅力です。
すでに2号移行後に班長・リーダー格として活躍している外国人職人も現れ始めています。
運送業
運送業は、2024年の時間外労働規制強化も含めて、人材確保の難しさが表面化している業界です。
とくに夜間便・中距離配送では、ドライバーが不足し、受注制限をかける事業者も少なくありません。
そのため、現在の主な対応として、以下のような外国人採用が広がっています。
- 永住者・定住者の在留資格を持つ外国人をルート配送に登用
- 普通免許を保有した外国人の小口配送(在留資格は永住者が代表的)
企業側が日本語指導・免許取得支援を行うことで、中長距離輸送にも対応できるドライバーの育成が期待されています。
接客業(外食・宿泊)
接客業では、人手不足が慢性化しています。特に地方の観光地や24時間営業の飲食チェーンでは、人材が足りずに営業時間を短縮したり、休業日を設けたりする店舗も増えています。
その中で、外国人は以下のような採用が進んでいる状況です。
- 外食業や宿泊業での特定技能1号による採用
- 留学生アルバイトの活用(資格外活動・28時間以内)
- 技人国ビザを取得した外国人のフロント業務・企画業務への就業(永住者や定住者なら問題なし)
また、キッチン補助やベッドメイキング、清掃業務などから始め、段階的にフロント業務や接客全般に広げている企業もあります。
ロールプレイ研修やメンター制度の導入によって、永住者や定住者に対して、外国人の接客力を高める取り組みも行われており、将来的には店長やフロントマネージャーへの育成も視野に入れられています。
実際の導入ステップとポイント
外国人材を活用するには、単に人手不足を補うだけでなく、中長期的な視点で「どう活かすか」を考えた採用設計が欠かせません。
ここでは、以下のような段階的アプローチについてみていきましょう。
1. 採用計画の立案
外国人採用は目的が曖昧なままだと失敗しやすくなります。たとえば、以下のように目的によって適切な制度やサポート体制は異なるといえるでしょう。
- 長期人材として現場の中核に育てたい → 特定技能1号、2号・育成就労・永住者、技能実習(中・長期前提)
- 繁忙期や期間限定で補いたい → 留学生バイト・技能実習
- 多店舗展開や海外展開を視野に入れている → 多国籍人材の組織活用
「なぜ採るのか」「どのポジションで活躍させたいのか」を明確にすることが第一歩です。
2.在留資格と制度の選定
採用目的に応じて、適切な在留資格を選定しなければなりません。それぞれの在留資格の特徴をある程度理解しておきましょう。
- 特定技能1号:即戦力としての就労が可能。分野ごとの試験に合格し、最長5年の在留が認められている
- 特定技能2号:1号よりも高度な技能を要し、在留期間に制限がなく、家族帯同も可能
- 技能実習:技能の習得が目的で、教育的側面が強く、就労ではなく研修という位置づけ。2027年までには制度が育成就労に移行される
- 永住者・定住者・日本人配偶者等:日本人と同等に就労でき、職種や業種の制限がない
制度の選び方次第で採用後の柔軟性や定着率に大きな差が出てきます。
より詳しく在留資格の概要を知りたい方は以下の記事から。
2025年版|外国人雇用と在留資格の最新動向【制度理解と法改正ポイント】1
3.採用フローの整備
外国人採用には通常3〜6か月のリードタイムがかかります。以下の対応を事前に準備しておくことが不可欠です。
- 登録支援機関との提携や契約
- 支援計画書の作成と認可手続き
- 現場との受け入れ前説明会やマニュアル整備
- 住居手配、通勤経路の確認、業務言語の準備
日本人採用よりも制度的な整備が求められるため、社内の総務・現場との連携が成否を分けるといえるでしょう。
4.教育・定着・キャリア支援
採用した後に定着させ、育成していくための仕組みも同時に設計する必要があります。特に「職場内での孤立」や「早期退職」を防ぐためには、以下のような仕組みが効果的です。
- OJT(現場教育)におけるやさしい日本語や図解資料の活用
- メンター制度や外国人先輩社員とのバディ制
- キャリアマップを用いた3年後・5年後のビジョン共有
- 面談を通じた定期的な不安解消
日本人と同様に「育てる対象」として丁寧に向き合うことが、長期定着の前提となります。
また、最もつまずきやすい課題である日本語教育に関しては、こちらの記事を参照ください。
とくに、自社における日本語教育の内容について本格的に考えたいという場合には参考になるでしょう。
特定技能2号受験者向け。外国人のための効果的な日本語教育プログラムを解説(1)
特定技能2号受験者向け。外国人のための効果的な日本語教育プログラムを解説(2)
まとめ
外国人採用は人手不足を補う手段から、企業の未来を左右する戦略へと変化しています。
各業界の実情に即した制度選定と、丁寧な定着支援こそが成功のカギです。「人がいない時代」に備え、今こそ実行可能な人材戦略を構築すべき時期に来ているといえるでしょう。
よくわからず不安といわれる外国人労働者の確保を、10年以上外国人の採用支援をしてきたLTBが、格安の完全採用成功報酬型で外国人採用をサポートいたします!ぜひお問合せください。