1. 帰化とは(日本国籍の取得)
帰化とは、外国籍の個人が法務大臣の許可を得て、日本国籍を取得する制度です。国籍法に基づき、一定の要件(継続在留歴・善良な素行・独立生計能力・日本語能力など)を満たす必要があります。帰化により日本国民となることで、以下のような法的変化があります。
- 日本国の戸籍に登録される- 選挙権・被選挙権の付与
- 国家資格・公務員試験の受験制限の解除
- 日本のパスポートを取得可能
- 配偶者や子も日本国籍を取得することが可能(一定の条件および審査により許可)
なお、日本は二重国籍を原則として認めていないため、原則として元の国籍を離脱する必要があります。しかし、母国の制度により国籍離脱ができないなどの特別な事情によって、重国籍状態が残るケースもある点は知っておきましょう。
参照:東京法務曲「帰化について」
帰化と特定技能2号の違いについて
外国人労働力を取り巻く制度の理解は、今や企業経営の一部と言っても過言ではありません。
とくに、特定技能2号と帰化の違いは、「外国人がどれだけ長く、安定して働けるか」に直結するといえるでしょう。
「特定技能2号」と「帰化」の違いは以下のとおりです。
比較項目 | 特定技能2号 | 帰化 |
法的な立場 | 外国籍のまま「外国人」として在留資格で滞在する | 国籍を日本に変更し、法的に「日本人」になる |
国籍 | 元の国のまま(例:ベトナム、中国など) | 日本国籍を新たに取得(元の国籍は原則放棄) |
在留資格・更新 | 在留資格が必要、数年ごとに更新が必要 | 取得後はビザ不要、更新なし |
制度の安定性 | 法改正や制度変更の影響を受けやすい | 一度取得すれば制度変更の影響を受けない |
選挙・参政権 | なし(選挙に投票できない。被選挙権もなし) | 選挙権・被選挙権ともにあり、日本人として政治参加が可能 |
職業の制限 | 公務員など一部の仕事に就けない場合がある | 国家公務員・地方公務員などすべての職業に就くことが可能 |
家族の扱い | 配偶者・子どもの帯同は可能だが、在留資格が別途必要 | 家族も日本国籍を取得でき、教育・福祉制度が日本人と同等に利用可能 |
老後の不安 | 高齢で働けなくなると在留継続に不安が残る | 日本の年金制度・介護制度などを日本人と同様に利用可能 |
金融・住宅ローン | 制限がある場合もあり、審査が厳しくなることがある | 日本人としての信用が得られ、ローン審査も通りやすくなる可能性が高い |
社会的な地位 | 就労者としての位置付けであり、法的にも“外国人”扱い | 日本社会の構成員として、法的にも“日本人”として認められる |
2. 永住許可とは(在留資格の一種)
永住許可とは、出入国管理及び難民認定法(入管法)に基づき、日本に無期限で居住できる在留資格です。永住許可を受けた者は以下のような特徴を持ちます。
- 在留期間の更新が不要(ただし在留カードの更新7年毎は必要)
- 職業選択が自由- 国籍は外国籍のままいかのURLから永住許可セルフチェックリスト(スクリーニング)が可能です。
1.在留資格「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」の方
https://www.moj.go.jp/isa/content/001428358.xlsx
2.在留資格「定住者」の方
https://www.moj.go.jp/isa/content/001428359.xlsx
3.就労関係の在留資格の方
https://www.moj.go.jp/isa/content/001428360.xlsx
永住者は「外国人」として扱われ続けるため、選挙権や一部の公務員職などに制限があります。
3. 帰化と永住許可の比較
少子高齢化が進む中、多くの企業で外国人材の雇用が増えてきました。
日本で働き、生活を続けるうちに「長く日本に住みたい」「日本社会の一員として暮らしたい」と考える方も増えている状況です。
「永住権」と「帰化」の違いを簡潔にまとめると以下のようになります。
比較項目 | 永住者(永住許可) | 帰化(日本国籍取得) |
国籍 | 外国籍のまま | 日本国籍 |
在留資格 | 無期限 | 日本人のため、なし |
在留期間更新 | 不要(在留資格維持) | 不要 |
選挙権・被選挙権 | なし | あり |
公務員・資格制限 | 一部制限あり | 制限なし |
戸籍 | 日本に戸籍なし | 戸籍が作成される |
4. 帰化のメリットと留意点
外国人が帰化によって日本国籍を取得した場合、生活の安定や将来設計において多くのメリットがあります。国籍が変わるだけではなく、法的・社会的にも「日本人」として扱われるため、人生の選択肢が大きく広がります。 ここでは、主なメリットについてみていきましょう。
① 在留資格・在留期間の制限がなくなる
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② 政治参加(選挙権・被選挙権)を得る
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③ 公務員への就職が可能に
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④社会保障に対する制限がなくなる
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⑤ 身分行為・法的地位の安定
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⑥ 金融・住宅ローンなど信用上の利便性 |
⑦ 子ども・家族の将来への影響
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⑧ 国家に対する法的帰属とアイデンティティの明確化
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留意点は以下のとおりです。
①元の国籍を失う(場合によっては複雑な離脱手続)
②元の国に入国する際にビザが必要な場合あり
③一度の帰化で元の国籍に戻すのが困難な場合がある
④一度の帰化で元の国籍に戻すのは困難
⑤申請にあたっては、勤務先での就労状況、事業経営者の場合には会社の業績、公的義務の履行状況、近隣との関係など様々な観点から総合的に審査され、出生から現在に至るまでの全ての経歴が審査対象となる。
⑥親族間で、別の国籍となることを意味する場合が多く、有事の際には家族を分断する可能性もある。家族の理解が必要である。
⑦アイデンティティに関わる行為であるから、将来的な見通しも含めた慎重な判断が求められる。
5. 帰化申請の手続きと要件
法務局での相談・書類提出を経て、面接や場合により実地調査を含む審査が行われます。主な要件は以下のとおりです。
- 原則として日本に継続して5年以上在留- 満18歳以上(成人)
- 素行が善良であること(犯罪歴・税金・交通違反等)
- 安定した生計があること- 日本語能力(読み書き・会話)
-その他審査項目は多岐に渡る
帰化申請では、必要書類を入国管理局に申請した後、面接を行い審査が通ると法務局で帰化届の提出といった手続きを実施します。
また、帰化申請には、戸籍や収入証明、翻訳文書など大量の書類が必要です。
許可まで3年ほどの時間がかかるため、外国人材だけでなく、企業としても計画的な準備やサポートが必要といえるでしょう。
6. まとめ
永住許可と帰化は全く異なる制度であり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。
企業が外国人材を支援する際には、制度の違いを正確に理解した上で、個別事情に応じたアドバイスや手続きをサポートすることが重要です。
LTBでは「外国人材を拡充したい」「今すぐ人材が欲しい」といった企業をサポートしています。
とくに、「制度の違いを把握して今から外国人材を採用したい」という担当者の方はご相談ください。
※本稿は2025年6月時点の法令に基づいており、分かりやすさを重視し、原則や一般論について記載しております。実際の手続きに際しては専門家、法務局、入管当局への確認を推奨します。