2023年11月24日、政府の有識者会議が「技能実習制度」を新しい制度「育成就労制度」にするための最終報告書をまとめました。
2024年の通常国会を目途に、技能実習制度廃止後は「育成就労」が新しい在留資格として創設を目指しています。
本記事では、最終報告書についての最新情報として「技能実習制度に代わる新制度、育成就労制度」について解説します。
技能実習廃止の背景
技能実習制度は、深刻な失踪問題や不法就労トラブルなどの社会問題で、廃止論が長く交わされていました。
2023年5月に有識者会議の中間報告のたたき台として、「技能実習制度と特定技能制度の在り方」について話し合いが行われ、技能実習制度は廃止の方向性で示されていました。
技能実習制度は、制度目的と実態の乖離によってさまざまな問題が発生しており、今回、技能実習制度を改め「育成就労制度」に変更されることが公表され、政府としては新制度により、問題が解消されることを期待しています。
育成就労(仮称)で何が変わる?
技能実習制度は、在留期間が1号が1年、2号が2年、3号が2年で、通年して5年間日本で就労できますが、転職が認められていません。
一方、「育成就労」は、3年の在留期間が基本となります。
将来的に「特定技能1号」のレベルまで育成することを目的とし、さらに高レベルの熟練技能が求められる「特定技能2号」の試験に合格した場合は、家族帯同と就労制限なしの条件が可能になります。
「育成就労」は、「特定技能」への移行で将来的に永住許可のルートも開かれる在留資格として検討されています。
また、技能実習制度では認められなかった転職については、「育成就労」の転籍(転職が可能な例をあげます。
転籍が可能な例
- やむを得ない事情
- 本人の意向
やむを得ない事情については、
- 労働条件に ついて契約時の内容と実態の間で一定の相違がある
- 職場における暴力 やハラスメント事案等がある
本人の意向については、
- 同一の受入れ機関において就労した期間が1年を超えていること
- 技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語 能力試験N5等)に合格していること
- 転籍先となる受入れ機関が、例えば在籍している外国人のうち転籍してきた者の占める割合が一定以下であること、転籍に至るまでのあ っせん・仲介状況等を確認できるようにしていることなど、転籍先とし て適切であると認められる一定の要件を満たすものであること
とされることとなりました。
育成就労のメリット
育成就労は、まだ本決まりではありませんが、現段階で検討されている内容からメリットになるポイントを解説します。
長期雇用と外国人のキャリア育成
技能実習制度と特定技能で従事できる業務内容は、同じではないため、在留資格を移行する際に整合性が取れないケースがありました。
一方、育成就労は、特定技能の12職種に合わせる予定であるため、在留資格の移行がスムーズになります。
したがって、同じ職種で就労できるようになるので、企業は長期的に外国人を雇用できることや、外国人が同じ職種で長く従事できるので、キャリアを築くことにも繋がっていきます。
日本語能力のある外国人を雇用できる
技能実習制度では、日本語能力の水準が設定されていないため、実習中の日本語コミュニケーションに問題が生じるケースもありました。
育成就労では、一定の日本語能力が取得要件となり、「外国人が就労開始前までに日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)に合格すること又は相当の日本語講習を受講することを要件とした上で、外国人の技能修得状況等を評価するため、受入れ 機関は、新たな制度による受入れ後1年経過時までに技能検定試験基礎級 等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語能力試験N5等)を外国人に 受験させる」としており、日本語能力が上がるような仕組みが具体的に検討されています。
育成就労と特定技能
育成就労の対象職種については、特定技能と同じ12職種に合わせるとされていますが、技能実習制度が83職種151作業で、廃止となると職種が大幅に縮小されることになります。
まとめ
技能実習生制度に代わる新制度「育成就労制度」について解説しました。来年の通常国会を目途に、もう少し具体的な内容が公表される見込みです。
政府の方針をこの最終報告書から鑑みたとき、より現実的で運用しやすいもの、そして人権に配慮した内容になってきていることが垣間見えます。
いかがでしたでしょうか。
1993年から制度が開始され、国際社会でも非難を受けていた技能実習制度が節目を迎えようとしています。
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