技能実習が抱えていた問題と廃止の背景
技能実習制度は、在留資格の1つです。
技能実習生の対象となる外国人が日本の企業と雇用契約を結んだうえで、出身国では習得が難しいスキルや知識を得るための制度といえます。
しかし、これまでの技能実習制度には次のような問題が生じていました。
- コミュニケーション不足によるハラスメント
- 低賃金・長時間労働による失踪、不法就労
- 犯罪への加担
これまでの技能実習制度は、企業側の対応も問題があるものの、技能実習生が関与している闇バイトや失踪に関しては社会問題となっていました。
結果として、全16回にわたる「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議」が行われ、技能実習制度は廃止となりました。
そして、新しい制度である「育成就労制度」に変更されることが2024年3月15日には閣議決定されたという流れです。
育成就労(仮称)で何が変わる?
技能実習制度と育成就労の大きな違いをまとめると次のようになります。
目的に関しても技能実習制度は国際貢献でしたが、育成就労は日本国内の人材不足を補う目的での人材育成といった違いがあります。
技能実習制度 | 育成就労制度 | |
在留資格の呼称 | 技能実習1号、2号、3号 | 育成就労 |
在留期間の長さ | 5年 | 3年 |
転籍 | 不可 | 可能 |
日本語能力 | 介護以外はなし | 日本語能力検定N5 |
管理団体の名称・責任 | 管理団体 | 支援管理団体 |
技能実習制度は、在留期間が次のように定められており、通算で5年ほど日本で就労可能でした。
1号からスタートし、3号までスキルや本人の希望に合わせて段階的に上がっていくという内容になっています。
- 1号が1年
- 2号が2年
- 3号が2年
しかし、「育成就労」では、3年の在留期間が基本となります。
また、年数によって呼び名が変わることがない点も知っておきましょう。
将来的に「特定技能1号」のレベルまで育成することを目的としており、その後は「特定技能2号」を目指すことになります。高レベルの熟練技能が求められる「特定技能2号」の試験に合格した場合は、家族帯同と就労制限なしの条件が可能です。
「特定技能2号」の在留資格を保有している場合、あらゆる産業のリーダーとして特定技能外国人が活躍できます。
永住許可につながる下地を作れる
育成就労は、最終的に特定技能1号や2号に合格するための人材育成制度だといえます。
仮に、「特定技能2号」に移行した場合、永住許可を取得できます。
素行やスキル、利益といった要素から判断されるものの、育成就労から特定技能2号まで移行してきた外国人材であれば、十分に要件を満たす可能性が高いといえるでしょう。
また、永住権があるかどうかによって、企業としても長期的な視点から、計画・シミュレーションしやすくなります。
特定技能2号の試験は、簡単に合格できるものではないものの、期限のない人材確保につながる点はメリットです。
加えて、育成就労は日本国内の人材不足を補うための人材育成が目的であるため、受け入れる企業としてもこれまで以上に外国人材が活躍しやすい労働環境が整うことにも期待できるでしょう。
転籍が可能
技能実習制度では認められなかった転籍は、「育成就労」では可能となっています。転籍が可能な例は次のようになります。
- やむを得ない事情
- 労働条件に ついて契約時の内容と実態の間で一定の相違がある
- 職場における暴力 やハラスメント事案等がある
- 本人の意向
- 同一の受入れ機関において就労した期間が1年を超えていること
- 技能検定試験基礎級等及び日本語能力A1相当以上の試験(日本語 能力試験N5等)に合格していること
- 転籍先となる受入れ機関が、例えば在籍している外国人のうち転籍してきた者の占める割合が一定以下であること、転籍に至るまでのあ っせん・仲介状況等を確認できるようにしていることなど、転籍先とし て適切であると認められる一定の要件を満たすものであること
とくにやむを得ない事情については、企業側の問題も加味されるため、これまで以上に厳格な人材管理とコミュニケーションが必要です。
まとめ
今回は、技能実習制度に代わる新制度「育成就労制度」について解説しました。
1993年から開始され、国際社会でも非難を受けていた技能実習制度は廃止され、2030年までには完全に移行することになります。
これまでの技能実習制度と比較し、より日本国内の企業に焦点を当てた内容となっているといえるでしょう。
詳しい受け入れ分野やメリットについて知りたい方はこちらの記事も参照してみてください。
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