はじめに
現在、在留資格『特定技能2号』の産業分野の拡大が検討されています。仮に制度改正となった場合、外国人の永住権取得に繋がる条件となるため、特定技能制度の動向が注目されています。
永住許可の条件では、現在『特定技能1号』からは認められていませんが、『特定技能2号』に移行することで条件を満たすことが可能となり、外国人が日本に定住できる間口が広がることとなります。
今回は、在留資格の中でも、外国人が最も日本人に近い生活ができる『永住者』と、外国人が永住権を取得できる条件について、また『特定技能2号』から永住権へのルートについて説明いたします。
永住権とは?
永住権とは。出入国管理及び難民認定法第22条により永住許可を認められた外国人に与えられる権利です。在留資格『永住者』を取得した外国人は、日本での活動制限がなくなり、他の在留資格に比べて自由度が高くなります。
永住権のメリット
- 在留期間の制限がなくなること。
- 日本での職業の選択が自由になること。
- 滞在する理由について制限がなくなること。
- 日本で生活し働く中で信用度が上がること。
- 国籍はそのままで日本に永く住み続けることができること。
永住許可の条件
在留資格『永住者』を取得できるための在留期間については以下の条件となります。
- 在留期間は原則的には10年。
- 日本人配偶者の場合は3年以上。
- 日本への貢献が認められた場合には5年以上。
また、永住権を取得するためには、以下の3つの条件を満たしていることが必要です。
- 素行が善良であること
- 交通違反や入管法違反などの不法行為に対しては厳しく審査されます。また、地域住民とのトラブルもなく社会的に順応した生活者であることが求められます。
- 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- 安定して長く自活できるか、本人と配偶者、家族の収入状況について審査されます。
- 対象者の永住が日本国の利益に合致すると認められること
- 原則として引き続き10年以上日本に在留していること。
ただし、在留資格「技能実習」と「特定技能1号」での在留期間は含まれません。
- 罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。
- 公的義務、納税義務を適正に行っていること。
(納税・公的年金・公的医療保険の保険料の納付/入管法に定める届出等の義務など) - 現在、取得している在留資格で最長の在留期間を有していること。
- 公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。感染症や中毒のおそれがないことも審査の判断になります。
- 日本国内に居住している日本人または永住者の身元保証人が必要であること。
- 特例となる条件
- 日本人の配偶者であること。婚姻生活が3年以上で日本在留期間1年以上。
- 難民認定を受けていること。難民認定後5年以上継続して日本に在留。
- 高度人材であること。
在留資格・高度専門職(『高度学術研究活動』『高度専門・技術活動』『高度経営・管理活動』)の場合、出入国在留管理庁が認定するポイント制によって評価が加算され、3年以上在留し70ポイント以上、または、1年以上在留で80ポイント以上であれば、原則の10年を満たなくても永住権取得が可能となります。)
技能実習、特定技能から永住権は取得できるか?
永住権取得の条件に、“原則として引き続き10年以上日本に在留していること”があげられていますが、この10年の期間では、『技能実習』と『特定技能1号』での在留期間が除かれています。
仮に、『技能実習』で5年間在留から『特定技能1号』5年間在留で通算10年の在留期間になっても、永住許可は認められない法令になっています。ただし、『特定技能2号』では、家族帯同と永住権への条件を得ることができます。
よって、『技能実習』や『特定技能』から永住許可を受けるルートは、『特定技能1号』から『特定技能2号』へ移行することが必要となります。
現在『特定技能2号』に移行できる産業分野は、人手不足が特に深刻な建設分野と造船・舶用工業分野の2分野のみとなり、今後、1号から2号へ移行できる産業分野が拡大されることについて検討されています。
『特定技能2号』について
『特定技能1号』から『特定技能2号』へ移行すると、外国人は永住権の取得と家族帯同が認められるようになり、就活においては登録支援機関を通さずに自由に活動できるようになります。外国人が日本社会に定住しやすくなるメリットと、その一方では移民政策の不透明さや日本社会の治安に対する懸念、外国人の社会保障や年金などの問題があげられています。移民に対する日本国民の意見は賛否両論あり、『特定技能2号』の産業分野が拡大され、外国人の就活範囲が広がることが日本人にとって、どような影響があるのか今から知っておく必要はあるでしょう。
現在、コロナの影響下、外国人の入国制限により、特定技能受け入れ2019年から2024年度までの5年間に最大約34.5万人とする方針から大幅に下回っています。
2021年9月末現在、法務省公表の特定技能外国人の受入数では、総数38,337人中30,734人は、技能実習生からの移行者であり、新規の特定技能への受け入れは足踏み状態となっています。
『特定技能1号』受け入れが、予測を下回る受け入れ人数である中、『特定技能2号』の制度改正の見直しやそれに伴う永住権へのルートについて、外国人雇用する管理者と外国人本人は、将来的な動向を踏まえて特定技能の活用方法について検討する必要があるでしょう。
永住権の取得方法について
- 申請者:本人。または代理人(法定代理人)
- 申請先:住居地を管轄する地方出入国在留管理官署
- 審査期間:およそ4ヵ月。個人の事情や入管混雑状況によって審査期間は変わります。
- 申請書類:在留カード/写真/立証資料/資格外活動許可書/在留資格証明書/パスポート/身分証明書
- 申請手数料 8,000円
永住権取得後の注意点について
永住権の取り消しに係わる以下の内容について注意が必要です。うっかりと忘れた場合や、意図的に不正を犯した場合はもちろん、永住権の取り消しとなります。
- 申請内容に虚偽があること。
永住許可申請に必要な添付書類などに不正があった場合には、永住権取り消しとなります。 - 再入国許可を受けていないこと。
1年以内に再入国をする場合は「みなし再入国許可」、1年を超える場合「再入国許可」の申請が必要です。 - 居住地の登録をしていないこと。
3か月以上日本にいる外国人は、居住地で住民登録をする必要があります。 - 在留カードの更新手続きをしなかったこと。
永住権は在留期間の制限がなくなりますが、所持している在留カードの更新を7年に1回行う必要があります。 - 懲役や禁固刑に処せられたこと。
犯罪行為があった者に対しては、強制退去処分が下される可能性があります。
まとめ
外国人が日本社会の一員として日本人に近い条件で在留できる資格が永住権です。永住権を取得するためには、審査基準にそった毎日の暮らしぶりや雇用先での働き方が反映されるため、永住許可を希望する外国人は、日本社会のルールに順応できる要素が求められます。
また、『特定技能2号』からの永住権へのルートは、現在、産業分野の拡大について検討されていますが、今後、制度見直しによって、日本社会へ移民が増える流れが想定されます。ここでは、移民増加に伴う様々な課題があるため、外国人との共存社会について受け入れる側の日本人は、個々に受け入れ体制や意識変革を行うことが必要となっています。