はじめに
【特定活動】は、他の在留資格に該当しない活動の受け皿として、法務大臣が個々の外国人について特に活動を指定する在留資格です。
”他の在留資格に該当しない”という点から、外国人を【特定活動】で雇用できるのか?という疑問もよくあげられています。
本記事では、特定活動で外国人を雇用する際に知っておきたい雇用時の留意点について解説いたします。
特定活動とは
特定活動は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を許可するための在留資格です。外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者など、合計46種類の特定活動が現在許可されています。
特定活動が制定された理由は、新しい在留資格を認めるために法改正を行わずに、法務大臣が許可できる仕組みを設けるためです。
入管法改正のための時間に左右されず外国人の受け入れを効率良く行うために、特定活動が設立されています。
特定活動の概要
特定活動では、活動範囲の内容があらかじめ告示されていない場合でも、明確な活動内容があれば、許可されて在留資格を取得することも可能です。
以下で詳しく解説していきましょう。
特定技能の種類
特定活動は大きく3種類に分かれています。
特に外国人を雇用する場合は、活動内容が雇用する実務に適合するか判断することが必要となります。
- 法定特定活動:
出入国管理及び難民認定法に規定されている特定活動です。
法定特定活動はさらに3種類に分別され、それぞれに活動範囲が定められています。
(1)特定研究活動
(2)特定情報処理活動
(3)特定研究等家族滞在活動及び特定情報処理家族滞在活動。
- 告示特定活動:
法務大臣が告示している活動内容で、46種類の活動内容があります。
(以下、特定活動の種類で詳しく説明いたします。)
- 告知外特定活動:
慣例的に法務大臣が日本への上陸・在留を認める活動です。おもに人道上の配慮を理由として許可される活動です。
例えば、日本に在留する外国人で高齢となった両親を母国から呼び寄せる場合に活用できます。また、日本での就職先が決まらないまま卒業した留学生の就職活動に許可される場合があります。他には、在留資格が不許可で30日間の出国準備期間中にやむを得ない理由で出国できない場合は、特定活動として出国準備期間2~4ヵ月の滞在許可が出る場合があります。
特定活動の46種類
特定活動(告示特定活動)では現在46種類の活動範囲があります。
※11、13、14号は、現在削除されています。
号 | 活動内容 | 号 | 活動内容 |
---|---|---|---|
1号 | 外交官家事使用人 | 27号 | EPAベトナム看護師候補者 |
2号 | 高度専門職・経営管理家事使用人 | 28号 | EPAベトナム介護福祉士候補者 |
3号 | 台湾日本関係協会/在日事務所職員と家族 | 29号 | ベトナム介護福祉士技能研修 |
4号 | 駐日パレスチナ総代表部の職員と家族 | 30号 | 27号のベトナム人家族 |
5号 | ワーキングホリデー | 31号 | 28号のベトナム人家族 |
6号 | アマチュアスポーツ選手 | 32号 | 外国人建設就労者 |
7号 | アマチュアスポーツ選手の家族 | 33号 | 高度専門職就労配偶者 |
8号 | 外国人弁護士 | 34号 | 高度専門職の父母 |
9号 | インターンシップ | 35号 | 外国人造船就労者 |
10号 | イギリス人のボランティア活動 | 36号 | 高度専門知識を必要とする研究研究の指導、 教育活動、または関連する事業を経営する活動 |
12号 | サマーシップ | 37号 | 自然科学、人文科学の分野の技術・知識を要する情報処理 |
15号 | 国際文化交流 | 38号 | 36、37号の活動で在留する者に扶養される配偶者と子 |
16号 | EPAインドネシア看護師候補者 | 39号 | 36、37号で在留する者とその配偶者の親 |
17号 | EPAインドネシア介護福祉士候補者 | 40号 | 富裕層の短期滞在 |
18号 | 16号のインドネシア人家族 | 41号 | 富裕層の短期滞在の配偶者 |
19号 | 17号のインドネシア人家族 | 42号 | 製造業外国従業員 |
20号 | EPAフィリピン看護師候補者 | 43号 | 日系4世 |
21号 | EPAフィリピン介護福祉士候補者 | 44号 | 外国人起業活動管理支援計画に基づき 起業準備活動計画の確認を受けた外国人起業家で1年を超えない範囲 |
22号 | EPAフィリピン介護福祉士技能研修 | 45号 | 44号外国人の扶養を受ける配偶者と子 |
23号 | 20号のフィリピン人家族 | 46号 | 本邦大学卒業者 |
24号 | 21号のフィリピン人家族 | 47号 | 本邦大学卒業者の配偶者と子 |
25号 | 医療滞在 | 50号 | スキーインストラクター |
26号 | 医療滞在同伴者 | – | _ |
特定活動で外国人を雇用する際の留意点
特定活動で外国人を雇用する際は、チェックポイントとして【在留カード】と【指定書】の確認が必要です。
「指定書」とは?
特定活動では、個々の外国人の活動範囲に対して活動許可を定めているため、活動範囲を指定書に記載することで、誰が見ても明確にわかるようにパスポートに添付されています。
「指定書」の確認方法は?
- まず始めに、雇用する外国人が所持している【在留カード】を確認しましょう。
- 在留カードの表面に「特定活動」裏面に「指定書により指定された就労活動のみ」と記載されている場合は、パスポートを確認しましょう。
- パスポートに添付された【指定書】を確認しましょう。
- 【指定書】には、本人氏名/国籍・地域/活動範囲/が記載されています。
- 【指定書】に記載された活動範囲を確認し、外国人を雇用する業務と適合するか判断しましょう。
コロナ禍の特定活動について
新型コロナウィルスの影響によって、外国人の在留資格に関して、特定活動を活用した特例措置が、出入国在留管理庁より公表されています。
現在では、コロナによる入国制限が段階的に緩和してきている状況で、コロナ禍の特定活動においても、随時更新された内容となっています。
2022年5月31日、出入国在留管理庁の公表した内容によりますと、帰国が困難な外国人に対して以下の特定活動を許可しています。
外国人の在留期限によって対応が異なるため、それぞれ確認が必要となります。
新型コロナウイルス感染症の影響により帰国が困難な方に対する在留諸申請の今後の取扱いについて
- 在留期限が2022年6月29日までの外国人が対象
- 「特定活動(6か月)」から「特定活動(4か月)」の在留期間に変更
- 「短期滞在(90日)」
- 在留期限が2022年6月30日以降の外国人が対象
- 「特定活動(6か月)」から「特定活動(4か月)」の在留期間に変更
- 「短期滞在(90日)」
- 在留期限が2022年11月1日までの外国人が対象
- 「特定活動(4か月)」
- 「短期滞在(90日)」
- 在留期限が2022年11月2日以降の外国人が対象
コロナ帰国困難を理由とした「特定活動(4か月)」または「短期滞在(90日)」は許可されません。
なお、上記の対象者は、以下の在留資格から特定活動を取得する外国人となります。
- 元技能実習生
- 元留学生
- 元中長期在留者
- 短期滞在者
- 雇用維持支援対象者
- インターンシップ(告示9号)
- 製造業外国従業員(告示42号)
- 元外国人家事支援人材
まとめ
特定活動について解説いたしました。特定活動は、個々の外国人の状況に合わせて法務大臣が認めた場合、許可される在留資格です。
特定活動を活用して外国人を雇用する際には、留意点として、在留カードとパスポートに添付された指定書の確認をすることが必要です。
また、コロナ禍に特例措置として特定活動の範囲が、段階的に規定が変更されていますので、該当する外国人を雇用する際は、在留期間に合わせて特定活動の許可期間について把握しておくことが必要です。
外国人雇用において、在留資格による活動範囲から外れて雇用してしまった場合には、不法就労助長罪の罰則の対象となるため、よく確認してから雇用活動をすすめるようにしましょう。