はじめに
「技能実習制度」で外国人を雇用する際の留意点について解説いたします。
まず始めに「技能実習制度」の概要を確認し、実習生を受け入れるメリットと注意点、最後に実習生を受け入れる際の雇用の流れについて見て行きましょう。
技能実習制度とは
「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております。」(厚生労働省による技能実習制度の説明)
簡単に言うと、「技能実習制度」とは、開発途上国の外国人が、日本の技術を学びながら日本の企業で働き、帰国後は母国の発展に役立つ人材となることを目的とする制度です。
「技能実習制度」の趣旨は”技術移転となる国際貢献”です。
もともと「技能実習制度」の前身は、研修のための受け入れ制度でしたが、後に研修生を労働者として認める制度内容に改正され2010年「技能実習制度」が設立されました。
「技能実習制度」では、技能実習生の保護と適切な実習を行うために「外国人技能実習機構OTIT」が2017年に設立され、外国人技能実習生を受け入れる手続きでは「外国人技能実習機構OTIT」を通して行うことができます。
技能実習制度の概要
「技能実習制度」を活用して外国人を雇用する際に知っておくべき概要を解説いたします。
技能実習制度に係わる役割の紹介
外国人技能実習生を雇用する際は、以下の4つの役割について確認しておきましょう。
- 外国人技能実習生:技能実習制度を活用して日本の企業で実習を行う外国人
- 受け入れ企業:外国人技能実習生が実習する企業(実習実施先)
- 監理団体:技能実習計画の作成を指導する/実習先の監査業務を行う非営利法人の機関
- 送り出し機関:外国人技能実習生の求人、面接、日本入国までの研修サポートを行う機関
外国人技能実習生が日本の企業と雇用契約を結び、実習期間中に適切な実習ができるためには、4つの役割の担当者が、お互いサポートし合えるような体制づくりが必要です。
技能実習制度の受け入れ方式
「技能実習制度」の受け入れ方式には、「団体監理型」と「企業単独型」があります。
2つの受け入れ方式のうち「団体監理型」の方が需要が多く、監理団体を通して技能実習生を受け入れる方式が一般的です。
- 団体監理型:営利目的としない団体が技能実習生を受け入れて実習を行う方式
- 企業単独型:直接海外の支店や関連企業・取引先等から職員を受け入れて実習を行う方式
「団体監理型」で技能実習生を受け入れる際は、以下のポイントにそって適切な機関であることを見極める事が必要です。
- 主務大臣(厚生労働大臣、法務大臣)より監理団体の許可を受けている機関であること。
- 営利を目的としない法人であること。
(商工会議所、商工会、中小企業団体、職業訓練法人、農業協同組合、漁業協同組合、公益社団法人または公益財団法人)
- 監理団体の役割を行うこと。
- 外国人技能実習生の個人情報を適正に管理できること。
- 実習先の企業の指導と監督ができること。
- 適切な送り出し機関と連携できること。
技能実習制度の在留資格
技能実習制度には在留期間に対して3つの在留資格に区分されています。
3つの在留資格
- 技能実習1号
- 技能実習2号
- 技能実習3号
- 技能実習1号:
入国1年目の技能実習生が対象
原則2か月間、座学の講習を受けること
- 技能実習2号:
入国2年目と3年目の技能実習生が対象
所定の学科・実技試験に合格し、入国管理局の審査を得て技能実習2号に移行できる
- 技能実習3号:
入国4年目と5年目の技能実習生が対象
2号から3号への移行は、所定の技能評価試験に合格することが必要
技能実習制度の対象職種
外国人技能実習生の受け入れが可能な対象職種は、在留期間によって異なります。
受け入れ検討される際は、対象となる職種と作業を確認する必要があります。
- 技能実習2号移行の場合:158職種86作業
- 技能実習3号移行の場合:77職種135作業
技能実習生の受け入れ人数
外国人技能実習生を受け入れる際の基本人数枠は「常勤職員の人数」によって決まっています。
常勤職員数 技能実習生の人数
30人以下 3人
31人~40人以下 4人
41人~50人以下 5人
51人~100人以下 6人
101人~200人以下 10人
201人~300人以下 15人
301人以上 常勤職員総数の20分の1
入国前に求められる外国人のスキル
外国人が入国前に求められるスキルは特に定められていませんが、介護職の場合は、日本語能力試験レベルN4が要件となります。
技能実習制度活用のメリット
外国人技能実習生の活用にどんなメリットがあるか見て行きましょう。
- 技能実習3号までの最長5年間、雇用ができる。
- 一定の日本語能力を持つ若い労働力が確保できる。
- 新しい価値観によって社内が活性化する。
- 人手不足解消に繋がる。
- 良い実習生が育つと、同じ国から実習生を受け入れるシステムができる。
技能実習制度活用の留意点
外国人技能実習生を受け入れる前に知っておきたい気を付けるポイントです。
- 技能実習生は転職ができない
原則、技能実習生の転職は認められていません。
ただし、新型コロナウィルスの特例措置として、要件に合えば転職可能となる場合もあります。
- 適切な監理団体を選ぶことが必要
技能実習生の実習を適切に行うためには、適切な監理団体選びが重要です。信頼のできる監理団体を選ぶためには、主務大臣の許可認定にある機関で且つ、実績や監理指導内容、料金を確認し、良い監理団体を見極めることが必要です。
- 適切な送り出し機関を選ぶことが必要
外国人の求人と面接、採用までの研修等は、海外の送り出し機関に委託されます。良い人材選びには適切な送り出し機関を選ぶことが必要です。
- 労働条件と入管法に基づく雇用が重要
技能実習生は、企業と雇用契約を結び、日本人社員同様に労働基準法に守られた条件で実習を行います。また、入管法により在留資格の活動範囲が規制されているため、法令に基づく雇用管理が必要です。違法行為となった場合には、罰則が科せられるため、事前に確認しておくことが必要です。
- 失踪に繋がらないようにサポート体制が必要
技能実習制度では、過去に失踪する実習生の問題が多発しています。今後、失踪者を出さないために、受け入れ企業、監理団体、送り出し機関、そして実習生本人は、それぞれ防止策となる方法に留意することが必要です。
技能実習制度を活用した雇用の流れ
監理団体型で外国人技能実習生を雇用する際の流れを解説いたします。
- 監理団体を介して海外の送出機関に求人を依頼し、面接と採用までを行う。
- 監理団体の指導で技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構に提出する。
- 技能実習計画が認定された後、在留資格認定証明書の交付申請を行う。
- 在留資格認定証明書が発行後、ビザ(査証)を申請する。
- ビザ(査証)取得後、日本入国の準備が整う。
入国後、技能実習生は実習先の企業へ配属される前に、約2ヵ月間の研修があります。
研修内容:
- 日本語学習を行う
- 日本での生活するための一般常識などを学ぶ
- 労働基準法、入管法など、技能実習生の法的保護に必要な情報を学ぶ
- 日本で適切な実習ができるための知識を学ぶ
まとめ
外国人技能実習生を受け入れる際は、制度概要と雇用の流れを知り、労働基準法と入管法に従って違法行為とならないように雇用管理を行うことが必要です。
実際に、技能実習生受け入れを検討する場合は、本記事で解説した雇用の留意点を押さえて、さらに詳しく確認していくことをおすすめいたします。