【各採用プロセスにおける留意点】
外国人労働者を採用する際に、各採用プロセスで留意するべきポイントについて以下にまとめます。
・事前調査
採用活動をはじめる前に、社内の採用ニーズを整理しましょう。
配属先の部署からもヒアリングを行い、即戦力が必要なのか、類似の経験を持っていれば育成する余裕があるのか、等を確認します。
また、採用しようとしている職種に該当する就労ビザがあるか、必要な日本語レベルがどの程度か、という点については予め調べておきましょう。
現場で必要な人材像と、採用する人材像のずれを小さくするために事前調査を行うことが大前提として重要です。
・募集開始
実際に募集をかける際には、求人の流通方法について検討します。
大手のメディアであっても、必ずしもリーチしたい求職者が閲覧しているとは限りません。一例として、日本で働きたいインドネシア人がフォローしているFacebookのアカウントがあり、外国人採用を検討している日本企業がそこで求人情報を流通させている事例があります。ターゲットとする外国人に情報を届けられる手段を選びましょう。
また、求人掲載時には、求める資格、日本語レベル、在留資格も差別的な表現にならないよう留意してください。
なお、募集にあたっては、外部にサポートを依頼する事例もあります。外国人の採用支援サービスを展開し、一定のノウハウがある業者をパートナーとすることで、求人に対する応募喚起や採用プロセスを進める上でのアドバイスを受けることができます。
・書類選考
書類選考の際には、「ビザ」、「学歴」、「職歴」、「日本語レベル」を中心に確認します。
まずは、募集職種で働くことができるビザを取得している、もしくは、取得できる要件を満たしていることが必要です。ビザ取得の必要要件については、法務省のHPでも公開されていますが、判断に迷ったときには、行政書士や採用支援企業等のアドバイスを受けることをおすすめします。
学歴については、国ごとに教育の制度が異なることから、履歴書上は大学卒業となっていても、日本の学士相当と認められないケースがあります。認識に齟齬がないかを確認するため、必要に応じて「学位証書」等を提出してもらって確認しましょう。
職歴については、これまでの職務経歴が書類と齟齬がないか確認が必要です。こちらも、直近の勤務先については、必要に応じて現地で就労していた企業から「在職証明書」(退職証明書)を発行してもらい確認します。
日本語レベルについては、日本語能力試験の結果が判断材料となります。N1~N5のどのレベルかによって、ある程度日本語レベルの想定ができますので、書類選考の時点で確認をしておきます。(難易度はN1が一番高く、「幅広い場面で使われる日本語を理解できる」レベルであるとされています)
・面接
面接では、長く働いてくれそうか、活躍してくれそうか、という点を確認します。
はじめて日本にくる外国人の場合には、日本で働きたい理由と志望動機を確認します。これまでの経験に根ざした明確な理由がある方ほど、長く定着してくれる傾向があります。また、就業にあたって強くこだわっている点(給与条件/労働時間/仕事内容等)についても確認します。どうしても折り合いがつかない点がある場合には、この時点で採用を見送ることが双方にとってプラスになります。
活躍できるかどうかは、配属先で求められているスキル・日本語能力を満たしているかどうかを確認します。採用要件のミスマッチが起きないよう注意してください。また、職務経歴について、短期間の経歴については書面上省略をして記載をしている方も見受けられます。今後任せたい業務に関連しそうな経歴については漏れがないように丁寧に確認をしてください。
・内定
内定後は、雇用条件を提示し、内容を正しく理解してもらいます。
日本では当たり前の慣習が、海外では一般的ではないケースがありますので、丁寧に説明します。
以下、外国人からよく質問される雇用条件をまとめます。
・残業代の支払い条件、また、そもそも残業はどの程度見込まれるのか。
・各種手当(住宅手当、資格手当、皆勤手当、通勤手当、家族手当等)は支給されるか、また、支給対象となる条件はなにか。
・給与から控除される項目(税金、社会保険、雇用保険等)はあるか、また、どの程度の金額になることが見込まれるか。
・一時帰国が認められるか、認められるための条件はなにか。
固定残業代を採用しているケースでは、認識が食い違いやすいので丁寧に説明しましょう。
給与条件の認識のずれは特に早期離職につながるリスクが高いですので、注意が必要です。
・受入準備
内定を承諾してもらって雇用が決まったら、実際の就業開始に向けて受入準備を進めます。
その際、日本語でのコミュニケーションがスムーズに取れる人であっても、細かいニュアンスで意味を違って捉える可能性があります。日本人同士であれば「以心伝心」で伝わるような内容であっても、異なる文化的背景をもった相手に対しては、より明確で具体的に話をする必要があります。特にはじめのうちは、少しでも反応に違和感があれば認識のずれがないかこまめに確認をするようにしましょう。
【制度上必要な手続き】
次に、外国人労働者を採用する際に必要な制度上の手続きについて整理します。
ビザの種類によって、必要な手続きに違いがありますので、ここでは共通して必要になる手続きをまとめます。
・共通して必要な手続き
行政に対して必要な書類を提出します。
外国人労働者の採用の際に気をつけなければならないのは、「外国人雇用状況の届出」の提出です。外国人の雇入れ及び離職の際に、全ての事業主が届け出る必要があります。
その他は、基本的に日本人採用と同様です。以下に一般的なものをあげます。
・ハローワーク:雇用保険被保険者資格取得届
・年金事務所:被保険者資格取得届
・市区町村:(住民税の納税者であれば) 住民税異動届
住民税の異動届について、日本国内での転職の場合、前職を退職した後に住民税が自分で納付する普通徴収となっていることが気づかず、不納付になっていることが多いです。
可能であれば特別徴収(給与から控除して納付)を検討してみてください。
【おわりに】
外国人は特別なんじゃないかと臆する必要はありません。
日本人の場合と同様に、新しい環境に馴染めるかという不安や、新しい仕事にチャレンジをする期待などを抱えながら、皆さんの職場に飛び込んできます。
日本人の新入社員を迎え入れるときと同様に、先輩として気を配り、コミュニケーションを取ってあげてください。
新しい環境に馴染んでくれば、頼もしい仲間として活躍をしてくれることでしょう。