人手不足の解消策として外国人の採用活動が高まっています。
一方、外国人の離職問題は企業の採用担当者の悩むところでしょう。
外国人が離職するのは給与が安いという理由もあり、給与設定についての解消策を考える必要があります。
そこで、本記事では、外国人の給与について、離職を防ぐためのポイントを解説します。
外国人の離職状況について
ハローワークの調査では、外国人の離職の割合は、2020年2月以降増加しており、同年7月には68.6%に達しています。
2021年10月に、いったん2019年10月の離職率を下回りましたが、その後も概ね離職の割合は上がっている傾向です。
2023年1月は2019年1月の割合35.9%をやや上回り、37.3%となっています。
外国人が離職する理由
外国人が離職する理由で多いのは、上司のマネジメントや指導に不満があることや業務内容があわないこと、そして給与に満足していないことがあげられます。
給与については、面接時での認識よりも給与が安く感じる人もいて、残業未払いなどは早期離職に繋がる原因となってす。
日本で就労する外国人の大半は、母国よりも給与水準の高い日本を選んで来日している方も多く、日本における生活費が母国より高いなど、期待していた給与の効果が得られなければ離職しやすくなります。
厚生労働省の「外国人労働者の職場・地域における定着」による調査では、外国人からの不満や質問について以下の例文を提示しています。
給与に関する不満があった場合、その他の不満(労働条件、休暇、人間関係、業務内容)などの不満が重なって、離職したい気持ちに拍車がかかることもあります。
外国人社員がどのような疑問を持っているのか?普段からコミュニケーションをとって、早めに問題を解消するようにしましょう。
※外国人の方からの質問や要望の例
- 最初に聞いた給料と振り込まれている金額が違うのは何で?
- なぜ、彼の方が先に昇給したの?
- 育児のために休暇を取りたいが、どうすれば?
- 残業をたくさんして稼ぎたいのになぜいけないの?
- ハラスメントを受けているかも知れません。誰に相談すれば良いですか?
- 8時が始業なので、8時ちょうどに会社に出社していけないのは、なぜですか?
- 終業時間の18時半になったので、帰ります。
- 年末年始の休暇はいらないので、代わりに2月に多く休ませてください。
- 会社に住所を教えたくありません。
- 健康診断を受けたくありません。
- 転勤はしたくありません。
外国人の給与設定について
では、外国人社員の定着を高めるために、給与の設定について解説します。
「最低賃金法」に適用する
最低賃金法は、雇用側が労働者に支払わなければならない賃金額のルールです。
労働基準法では、給与額は最低賃金を満たさなければならないと定めています。
したがって、ルール違反を犯した場合は、罰則の対象になります。
- 最低賃金法第4条第1項
「使用者は、最低賃金の適用を受ける労働者に対し、その最低賃金額以上の賃金を支払わなければならない。」
罰則については、地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合、最低賃金法に罰則50万円以下の罰金が定められ、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合は、労働基準法に罰則30万円以下の罰金が定められています。
外国人の最低賃金
最低賃金法は、外国人にも適用されます。
外国人社員を雇用管理する際は、給与設定について注意が必要です。
外国人社員は、日本人社員と比較すると言葉の問題や文化習慣の違いからコミュニケーションがしづらい面があります。
このようなリスクを理由に安い給料で雇用することは法律違反に繋がります。
技能実習生であっても最低賃金法が適用されます。
外国人の給与
外国人の給与を設定する際は、こちらの最低賃金を確認しましょう。
最低賃金は例年10月頃に改定されますので随時チェックしましょう。
また、厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」による在留資格別の外国人の一般労働者賃金について、以下の表を参考にしてください。
外国人労働者の在留資格区分別賃金及び対前年増減率・令和4年
在留資格区分 | 賃金(千円) | 対前年増減率(%) | 年齢(歳) | 勤続年数(年) |
外国人労働者計 | 248.4 | 8.9 | 34.1 | 3.6 |
専門的・技術的分野(特定技能を除く) | 299.6 | -8.2 | 31.9 | 3.3 |
特定技能 | 205.7 | 5.5 | 29 | 2.4 |
身分に基づくもの | 280.7 | 3.7 | 43.8 | 5.6 |
技能実習 | 177.8 | 8.3 | 27.9 | 2.4 |
その他(特定活動及び留学以外の資格外活動) | 220.9 | 16.5 | 31 | 2.8 |
外国人にも適用される「同一労働同一賃金」
同一労働同一賃金とは、正社員と非正規社員(パート)に対して賃金格差が生じないように設定された制度です。
外国人にも同一労働同一賃金が適用されます。
厚生労働省の同一労働同一賃金のガイドラインでは、不合理な待遇差を解消するために、賃金、福利厚生、キャリア形成・能力開発などを含めた取組が必要であると示しています。
詳しい内容は、厚生労働省:同一労働同一賃金ガイドラインから確認できます。
外国人の税金について
外国人の税金については、所得税・住民税など、日本人社員と同様に扱われます。
なお、外国人を雇用して源泉徴収する際は、「居住者」または「非居住者」によって課税方法が異なります。
外国人の住所が日本国内にある、または、1年以上居住している場合は、年末調整または確定申告で所得税が決まります。
一方、居住者以外の外国人は非居住者に該当しします。
まとめ
外国人の給与は、外国人だからといって決して安くて良いというものではないことを念頭に置きましょう。
また、厚生労働省の公表している在留資格別の外国人の一般労働者賃金についても参考にしてください。
また、外国人に給与について説明する際は、待遇、税金関係などをわかりやすい言葉で理解できるように努めましょう。
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