はじめに
6月9日に成立した改正入管難民法によって、外国人の出入国に関わるルールが変更されています。
日本の人手不足解消策として外国人受け入れが拡大されている現状、改正入管法に関しては、外国人を雇用管理している担当者の方は、概要を知っておくことをおすすめします。
本記事では、2023年版の改正入管法の内容と、外国人採用で成功させるポイントについて解説していきます。
入管法とは?
入管法の正式名称は「出入国管理及び難民認定法」と言います。
入管法は、本邦における全ての日本人と外国人の出入国の管理、及び、全ての外国人の在留の管理を図るとともに、難民の認定手続きを整備することを目的とします(入管法1条)。
外国人を雇用する企業は、この入管法に基づいて採用活動を行い、外国人の在留資格について管理する必要があります。
入管法の大きな改正は2019年に行われ、現在、在留資格「特定技能」での受け入れがスタートしています。
また、2023年の6月には、外国人の収容に係る改正入管法が成立しています。
外国人受け入れの現状
2019年の入管法改正により「特定技能」がスタートしましたが、新型コロナウィルスの影響により新規外国人の流動が一時的に停止していました。
その一方、日本国内に在留している「技能実習生」から「特定技能」への移行ルートで「特定技能」で働く外国人が増える現象となっています。
今後の新規外国人の流れについては、入国制限が終了したことと、特定技能2号の産業分野拡大によって外国人の入国がしやすくなり、外国人採用活動が高まることが期待されています。
その他の就労ビザについては、2023年4月から特別高度人材制度(J-Skip)が導入されたことや、留学生が就活しやすくなる「特定活動46号」の創設など、外国人の受け入れ体制が拡大されてきています。
なお、技能実習制度については、今後、廃止の方向性と「特定技能」との連携を考慮しながら、外国人が働きやすい条件を前提に新たな見直しが検討されています。
外国人の収容に係る改正入管法の成立
外国人の収容・送還のルール変更の改正入管法が、2023年6月9日に成立しています。
改正案の内容は、外国人の送還ルールを強化することとしていますが、この法案に対しては、人権上の問題点が指摘されています。
入管法改正の成立の背景には、入管施設での収容期間の長期化も大きな課題となっており、名古屋の入管に収容されていたスリランカ人女性のいきさつ等も、入管法改正のキーワードとして国会の審議の争点のひとつとなっていました。
今回、入管法改正の成立後も、難民認定のあり方に対して各方面より疑問点が集まっている現状です。
改正入管法の変更内容について
改正案の内容については以下の通りです。
- 難民認定の申請期間中は、送還が認められていませんでしたが、改正後は、3回目以降の申請者に対しては「相当な理由」で認められない場合は、本国へ送還されることになります。
改正された理由としては、難民認定の申請に上限を設けていないことで、難民認定申請を繰り返すことで送還から逃れようとするケースがあるためです。
- 難民には該当しない外国人で紛争などから逃れて来た人(ウクライナ避難民など)を「補完的保護」の対象者として入国を許可します。
- 送還を妨害した人などに対する罰則も新設されます。
- 入管施設への収容については、3カ月ごとに見直しが行われます。
- 施設に収容してきた外国人に対して、支援者や親族等の「監理人」をつけることで、施設外での生活を認める「監理措置」制度が創設されます。
外国人採用を成功させるためには?
2023年の改正入管法により、違法対象となる外国人の送還ルールが強化される方向性となっています。
今回は、難民認定に関わる対象となっているため、正規に就労ビザを取得して入国している外国人に対しては、直接的には大きく左右される問題はないと言えるでしょう。
ただし、外国人の採用においては、入管法にしたがって雇用する必要があり、もし雇用している外国人が違法行為した場合には、強制送還や収容施設での待機などに関わりを持つ可能性もあります。
また、今後、外国人との共存社会が予測される中、入管法について基本知識を得ておく、または、いつでも相談のできる専門家の窓口を決めておくことをおすすめします。
では、外国人採用で成功させるためには、改めて以下のポイントを確認しておきましょう。
- 外国人の在留資格が就労ビザであるか確認しましょう。在留資格には、就労できるビザとできないビザがあります。
- 就労できない留学生や家族滞在ビザの外国人を採用する際は、資格外活動許可の確認が必要となります。
- 在留資格と自社業務の内容に整合性があるか確認しましょう。在留資格の条件には、業務内容の範囲や日本での活動の制限が決まっています。
- 入管法の罰則について確認しておきましょう。外国人を不法就労させてしまった場合は「不法就労助長罪」の対象となり、最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性があります。
- 不正な上陸の申請や更新などをした人に対しては、「在留資格等不正取得罪則」の対象となり、最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性があります。
- 営利目的で虚偽の情報や不正な手段で上陸する外国人の手助けをした人に対しては、「営利目的在留資格等不正取得助長罪」の対象となり、最長3年の懲役、最大300万円の罰金が科される可能性があります。
まとめ
外国人を採用する際は、入管法のルールにそって雇用管理する必要があります。
入管法は、社会の動向にしたがってルール改正となる傾向にありますので、外国人を採用する担当者の方は、リアルタイムで正しい情報をキャッチすることをおすすめします。
弊社では、入管業務に携わって10年の顧問行政書士の指導のもと、常に入管法の知識をアップデートしているため入管法を遵守しながら安心してご利用いただけます。
外国人の採用においては、ぜひ当社までお気軽にご相談ください!