単純出国に備えて準備しておくこと
ここでは、外国人社員が退職し、単純帰国する際の手続きについて解説します。
外国人の退職手続きでは、各種届出に時間がかかるため、帰国日が把握できてることがほとんどであるため、早めの準備をしておくと良いでしょう。
また、外国人本人が各種手続きについて理解できるようにわかりやすく説明し、後になってトラブルが生じないようにコミュニケーションをとることが大切です。
たとえば、退職時に必要な手続きをリスト化し、チェックリストを渡し解説しておくといった対策も考えられます。
加えて、本人任せにせず企業側でサポートを行えば、罰則を受けるリスクも低減可能です。
会社が行う退職の手続き
日本人社員が退職する場合の手続きと同じものからみていきましょう。
・健康保険の被保険者証を返却してもらう
外国人の退職によって、健康保険の被保険者資格を喪失する場合、雇い主は日本年金機構へ健康保険証を提出しなければなりません。
仮に、健康保険証を紛失した場合は、「資格喪失届」か「被扶養者異動届」に、「被保険者証回収不能届」を添付して提出する必要があります。
具体的な手続きはこちらから。
雇用保険の離職票を発行する
離職証明書をハローワークへ送付し離職票の交付を行います。離職前に外国人本人の自筆による署名、離職理由等の記載内容について確認することが必要です。
手続きは退職から10日以内に行う必要があり、以下の情報が明確に記載されているかも確認しましょう。
- 退職者の氏名や生年月日、在留資格など
- 入社日や退職日、被保険者期間の記載
- 会社都合や契約満了などの退職理由
- 直近6カ月の給与額など
具体的な手続きはこちらから。
源泉徴収票を発行する
本人から請求されなかったとしても、企業と退職日から1ヶ月以内に退職者と税務署に源泉徴収票を交付する義務があります。(所得税法第226条・源泉徴収票 第1項)給与所得の源泉徴収票は、その年の1月1日から退職日までの給与に基づいて発行されます。
起業から給与を受け取っている場合には、必ず源泉徴収表は発行されるものだといえます。
支払い金額や所得控除後の金額、源泉徴収税額などが記載されているといえるでしょう。
住民税の手続き
市町村の役所に「給与支払報告に係る給与所得異動届」を退職した日の翌月10日までに提出する必要があります。
市町村ごとに様式が異なるため、提出先の自治体の書式を確認しておきましょう。
外国人社員特有の手続き
ここからは、外国人社員の退職時のみ必須となる手続きについてみていきましょう。
外国人雇用状況の届出
ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出をした場合は、出入国在留管理庁への届出は免除されます。
また、在留資格が以下の場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」の申請は必要ありません。
- 外交
- 公共
- 永住者永住者の配偶者、日本人の配偶者
- 定住者の外国人
雇用保険被保険者資格喪失届の必要事項は以下のとおりです。
- 個人番号
- 被保険者番号
- 事業所番号
- 資格取得年月日
- 離職等年月日
- 喪失原因、退職の事由
- 離職票交付希望の有無
- 1週間の所定労働時間
- 補充採用予定の有無
- 被保険者氏名、性別、生年月日
- 被保険者の住所または居所事業所名称
- 被保険者でなくなったことの原因
- 事業主の住所、氏名、電話番号、押印
- 被保険者氏名(ローマ字)
- 在留期間
- 派遣・請負就労区分
- 国籍・地域
- 在留資格
なお、「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出をしなかった場合、雇用主に対して6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられますので注意が必要です。
入管法第19条の17:外国人が離職したとき、会社は入国管理局に届出るよう努めなければならない。(努力義務)
在留カード番号記載様式を申請
退職した外国人の外国人雇用状況の届出では、在留カード番号の記載が必要となります。
退職後10日以内に手続きを行います。外国人の雇用状況を適切に管理し、不法就労を防ぐための制度であり、すべての事業主が対象です。
詳しくはこちらから。
外国人本人が行う退職の手続き
外国人本人が行う手続きは、会社または支援機関のサポートが必要です。
契約機関に関する届出
外国人本人は、出入国在留管理庁に退職後14日以内に「所属機関等に関する届出」を行う必要があります(入管法第19条の16)。
届出の方法は郵送やネット送信、窓口で手続きを行うことも可能です。
直接窓口で行う際は、手続きによって曜日や時間が設定されている場合があるため、確認が必要です。
対象者は、高度専門職1号イまたはロ/高度専門職2号(イまたはロ)/研究/技術・人文知識・国際業務/介護/興行/技能/特定技能/の在留資格の外国人です。
届出事項は以下のとおりです。
- 外国人の氏名
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 住居地
- 在留カード番号
- 契約機関との契約が終了した年月日
- 契約が終了した契約機関の名称及び所在地
詳しくは以下のリンクから。
住民票の転出届
居住していた区役所市民課で住民票の転出届とマイナンバーカードの返却が必要です。マイナンバーカードは廃止となり使用できなくなります。
外国人の脱退一時金の手続き
外国人は、日本を出国後に脱退一時金の請求を行い、厚生年金保険の加入期間に合わせた金額が支給されます。
脱退一時金とは、日本の会社で厚生年金保険に加入して、6ヵ月以上働いたことのある外国人に対して支払われる一時金です。
帰国後に、厚生年金保険の納入金が掛け捨てにならないように支払われます。
脱退一時金を請求できる条件は以下のとおりです。
- 国民年金・厚生年金の支払い期間が6ヶ月以上あること
- 日本国籍を有しない外国人
- 厚生年金保険の被保険者期間が6ヵ月以上ある外国人
- 日本を出国してから2年以内経過している外国人
- 日本で年金(障害手当金を含む)を受給の権利を持ったことのない外国人
脱退一時金の支給額と通貨
厚生年金の加入月数(被保険者期間)に対して計算され支給されるため、20%の所得税が差し引かれます(源泉徴収)。
また、脱退一時金で支給される通貨は日本円ではなく、ドル(USD)かユーロ(EUR)など、外国の通貨で支給されます。
脱退一時金の手続き
必用書類を揃えて日本年金機構あてに提出し審査後、支給額の支払いが確定した後、外国人あてに国際送金されます。
申請から受理されるまでの期間は約3~4か月です。必要書類は以下のとおりです。
- 脱退一時金裁定請求書(国民年金/厚生年金保険)
- パスポートの写し
- 在留カードの写し
- 国際送金の振込先の詳細
- 年金手帳
- 日本年金機構:脱退一時金制度について
まとめ
外国人が会社を退職し、転職や日本での活動を継続しない場合は、単純出国での帰国として扱われます。
外国人が退職して単純出国するまでの期間は、各種届出が必要です。そのため、帰国日に合わせて申請手続きを進めていきましょう。
また、脱退一時金は、外国人が帰国してからの本人への振り込みであるため、請求申請から受理されて振込されるまでの流れについて把握しておくことが重要です。
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今回は帰国に関する内容でしたが、採用にも詳しいため、外国人採用に悩んでいる場合は気軽にお声掛けください。