はじめに
雇用契約満了に伴い外国人社員が帰国する際は、日本での活動を終了して出国する単純出国での扱いとなります。
外国人が単純出国する場合には、在留資格や住民票の取り消しやその他、日本社会で活動を終えるための各種手続きを行い、帰国がスムーズにできるように外国人本人への説明とサポートが必要となります。
今回は、外国人社員が帰国するまでに必要な退職の手続きや、単純出国での帰国について説明いたします。
外国人が退職して単純出国する場合
外国人が日本を出国する場合、2つのパターンがあります。雇用契約満了で外国人社員が退職し帰国する際は、単純出国での扱いとなります。
単純出国
在留期間の満了と今後日本での活動を継続しない場合、再入国許可を取らずに出国することになります。単純出国では、日本の住民票が無い状態になり、国民年金、または厚生年金保険の被保険者資格を喪失することになります。
一時帰国
在留資格・有効な旅券・在留カード等を所持している条件で、出国後1年以内であれば日本での活動を継続するために再入国することができます。この場合、みなし入国許可が適用されます。外国人が、母国へ一時帰国する場合には、みなし入国許可をしてから出国するようになります。
単純出国に備えて準備しておくこと
外国人社員が退職し単純帰国する際の手続きについて説明いたいます。外国人の退職手続きでは各種届出に時間がかるため、帰国日をさかのぼって早めの準備をしておくと良いでしょう。また、外国人本人が、各種手続きについて理解できるようにわかりやすく説明し、後になってトラブルが生じないようにコミュニケーションをとることが大切です。
会社が行う退職の手続き
以下は、日本人社員が退職する場合の手続きと同じです。
- 健康保険の被保険者証を返却してもらう
外国人の退職により、健康保険の被保険者資格を喪失する場合、雇い主は、日本年金機構へ健康保険証を提出する必要があります。もし、健康保険証を紛失した場合は、「資格喪失届」または「被扶養者異動届」に「被保険者証回収不能届」添付して提出する必要があります。
- 雇用保険の離職票を発行する
離職証明書をハローワークへ送付し離職票の交付を行います。離職前に外国人本人の自筆による署名、離職理由等の記載内容について確認することが必要です。
- 源泉徴収票を発行する
本人から請求されなくても退職日から1ヶ月以内に退職者と税務署に源泉徴収票を交付する義務があります。(所得税法第226条・源泉徴収票 第1項)給与所得の源泉徴収票は、その年の1月1日から退職日までの給与に基づいて発行されます。
- 住民税のの手続き
市町村の役所に「給与支払報告に係る給与所得異動届」を退職した日の翌月10日までに提出する必要があります。
加えて、以下は、外国人社員特有の手続きです。
- 外国人雇用状況の届出
ハローワークへ届出を行います。ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出をした場合は、出入国在留管理局庁への届出は免除されます。
また、在留資格が外交、公共、永住者、永住者の配偶者、日本人の配偶者、定住者の外国人は、「雇用保険被保険者資格喪失届」の申請は必要ありません。
雇用保険被保険者資格喪失届の必要事項
- 個人番号
- 被保険者番号
- 事業所番号
- 資格取得年月日
- 離職等年月日
- 喪失原因、退職の事由
- 離職票交付希望の有無
- 1週間の所定労働時間
- 補充採用予定の有無
- 被保険者氏名、性別、生年月日
- 被保険者の住所または居所事業所名称
- 被保険者でなくなったことの原因
- 事業主の住所、氏名、電話番号、押印
- 被保険者氏名(ローマ字)
- 在留期間
- 派遣・請負就労区分
- 国籍・地域
- 在留資格
なお、「雇用保険被保険者資格喪失届」の提出をしなかった場合、雇用主に対して6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられますので注意が必要です。
入管法第19条の17:外国人が離職したとき、会社は入国管理局に届出るよう努めなければならない。(努力義務)
- 在留カード番号記載様式を申請
退職をした外国人の外国人雇用状況の届出では、在留カード番号の記載が必要となります。退職後10日以内に手続きを行います。
外国人本人が行う退職の手続き
外国人本人が行う手続きは、会社または支援機関のサポートが必要です。
- 契約機関に関する届出
外国人本人は、出入国在留管理庁に退職後14日以内に「所属機関等に関する届出」を行う必要があります。(入管法第19条の16)
届出の方法は、郵送、ネット送信、または窓口での手続きを行うことも可能です。
直接窓口で行う際は、手続により曜日や時間が設定されている場合がありますので、確認が必要です。
対象者は、高度専門職1号イまたはロ/高度専門職2号(イまたはロ)/研究/技術・人文知識・国際業務/介護/興行/技能/特定技能/の在留資格の外国人です。
届出事項
- 外国人の氏名
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 住居地
- 在留カード番号
- 契約機関との契約が終了した年月日
- 契約が終了した契約機関の名称及び所在地
- 住民票の転出届
居住していた区役所市民課で住民票の転出届とマイナンバーカードの返却が必要です。
マイナンバーカードは廃止となり使用できなくなります。
- 外国人の脱退一時金の手続き
外国人は、日本を出国後に脱退一時金の請求を行い、厚生年金保険の加入期間に合わせた金額が支給されます。
脱退一時金とは、日本の会社で厚生年金保険に加入6ヵ月以上働いたことのある外国人が、帰国後に、厚生年金保険の納入金が掛け捨てにならないように支払われる一時金です。
脱退一時金の請求できる条件
- 国民年金・厚生年金の支払い期間が6ヶ月以上あること
- 日本国籍を有しない外国人
- 厚生年金保険の被保険者期間が6ヵ月以上ある外国人
- 日本を出国してから2年以内経過している外国人
- 日本で年金(障害手当金を含む)を受給の権利を持ったことのない外国人
脱退一時金の支給額と通貨
厚生年金の加入月数(被保険者期間)に対して計算され支給されます。
20%の所得税が差し引かれます。(源泉徴収)
また、脱退一時金で支給される通貨は日本円ではなく、ドル(USD)またはユーロ(EUR)など、外国の通貨で支給されます。
脱退一時金の手続き
必用書類を揃えて日本年金機構あてに提出し審査後、支給額の支払いが確定した後、外国人あてに国際送金されます。申請から受理されるまでの期間はおよそ3~4か月くらいかかります。
〇必要書類
脱退一時金裁定請求書(国民年金/厚生年金保険)
- パスポートの写し
- 在留カードの写し
- 国際送金の振込先の詳細
- 年金手帳
まとめ
外国人が会社を退職し、転職や日本での活動を継続しない場合は、単純出国での帰国となります。外国人が退職して単純出国するまでの期間には、各種届出が必要となりますので、帰国日に合わせて申請手続きを進めていきましょう。
また、脱退一時金は、外国人が帰国してからの本人への振り込みとなりますので、請求申請から受理されて振込されるまでの流れについて外国人本人に説明しておくと良いでしょう。
単純出国では一時帰国での手続きとは異なりますので、外国人本人に今後の予定に合わせて、適切な準備を行うことが必要です。