外免切替制度の概要
外免切替制度は、外国で取得した有効な運転免許証を、日本の運転免許証に切り替える制度です。
申請には、以下の要件を満たす必要があります。
- 外国の有効な運転免許証の所持―失効・停止中の免許証は対象外
- 当該免許証の発給国における「通算3か月以上の滞在歴」―免許取得後に、発給国で通算3か月以上の滞在を証明する必要がある(パスポート出入国履歴や在留証明書等で確認)
- 日本における有効な在留資格と住民登録―観光などの短期滞在者(例:90日以下の査証免除者)は住民票を取得できないため、制度の対象外
ただし、一部の国(例:ドイツ、フランスなど)については、学科試験および技能試験が免除される場合があります。
外免切替に必要な書類
外免切替に必要な書類は以下のとおりです。
外国運転免許証から日本の免許へ切り替えるためには、単に免許証を所持しているだけでは不十分だといえます。
運転技術や法制度への適合性を確認する目的から、各種証明書や身分関係書類の提出が求められます。
とくに、日本では居住実態(住民票)や免許発行国での滞在歴の裏付けは、外免切替制度の根幹をなす審査項目です。
必要書類 | 補足 |
外国の運転免許証(原本) | 有効期限内であること |
免許証の日本語翻訳文 | JAFまたは発給国の大使館等が発行 |
パスポート | 免許取得日と滞在歴を確認するため |
住民票(マイナンバー未記載のもの) | 現住所および日本居住の事実を証明 |
写真1枚(縦3cm×横2.4cm) | 申請用 |
手数料(普通車:約2,550円) | 地域により若干異なる |
参考:警視庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには」
必要書類から、現状では在留カードが外免切替には必須の書類にはなっていません。
つまり、在留資格が何であっても必要書類が用意できれば、外免切替が可能な点が大きな問題となっているといえます。
知識確認、技能確認を免除する国一覧
現状の外免切替制度では、一定の信頼性が認められた国・地域については、運転技能試験および学科試験が免除されています。
適性検査のみで日本の運転免許への切替が可能です。
以下は、2025年5月時点における免除対象国・地域を、地域別に整理した一覧です。
地域区分 | 国・地域名 |
ヨーロッパ | アイスランド、アイルランド、イギリス、イタリア、オーストリア、オランダ、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、スロベニア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、モナコ、ルクセンブルク |
北米 | アメリカ合衆国(※オハイオ州、オレゴン州、コロラド州、バージニア州、ハワイ州、メリーランド州、ワシントン州に限る)、カナダ |
オセアニア | オーストラリア、ニュージーランド |
アジア | 韓国、台湾 |
免除対象国であっても、日本の交通ルールに不慣れなまま運転を開始するリスクは残されており、制度利用にあたっては交通安全教育の徹底が求められます。
参考:警視庁「外国で取得した運転免許証を日本の運転免許証に切り替えるには」
現行制度の外免切替は何が問題になっているか
2025年5月21日には、警視庁は外免切替制度について、住所確認を厳格化する方針を打ち出しています。
たとえば、住民票の写しの徹底や筆記試験の難易度についても改善を検討している状況にあります。
そのうえで、現状の外免切替制度については次のような課題があるといえるでしょう。
- 形式的な判別しかできてない―住民票がなかったとしてもパスポートと一時滞在証明書で外免切り替えが可能。つまり、観光目的では通常外免切替ができないと定められているものの、実態は形式的な住民票取得ができ、交通ルールの理解がない
- 不正が横行している―ブローカーが関与し、虚偽の住民登録や形式的な書類作成で申請を支援している事例がある
- 多言語対応・交通教育の不足―学科試験免除の国が定められているものの、簡潔な適正検査のみで外免切替ができてしまう。試験・講習の言語対応が限定的で、日本の交通規範を理解しないまま運転開始ができる
- 在留資格に応じた明確な運用ルールがない―滞在目的や期間の違いが制度運用に反映されておらず、短期滞在者の流入が続く要因となっている
- 取得後の追跡調査が未整備―事故率・違反率等のデータが集計・公開されておらず、制度の有効性検証が困難となっている。ニュースになってから初めて知るというケースが多すぎる
制度上は、外免切替制度は厳格に設計されています。しかし、実務の運用実態を見ると、信頼性は決して確立されているとはいえず、事業者視点では信頼性が揺らぐケースもあるといえます。
今後は、制度の本来の趣旨を踏まえた運用が必須だといえるでしょう。
まとめ
外免切替制度は、外国人が日本において社会生活を送るうえで円滑な移動手段を確保するためのものであり、業務上の必要や生活上の利便性に配慮した制度です。
とくに、日本の道路交通法制度に準じた適正な運転者の受け入れという観点では、制度の存在意義は否定しがたいものです。
しかし、近年は制度設計と現実運用の乖離が明白になっており、観光目的の短期滞在者やブローカー介入による形骸的な申請、不十分な交通理解のままの運転開始といった構造的な問題が顕在化しています。
そのため、警視庁でも改善を図っており、外免切替制度は制度改革の最中にあるといえるでしょう。
次回は、業務利用と私的利用による免許の違いについて解説します。