はじめに
新型コロナウィルス感染拡大は、帰国困難な外国人や海外からの新規外国人の入国に大きく影響が及んでいます。現在、日本の水際対策においては、随時対応が更新されており、3月1日より段階的な緩和が始まっています。
本記事は、水際対策の状況、帰国困難な外国人の対応など、現在の入国に関わる内容のまとめとなります。
水際対策とは?
水際対策とは、新型コロナウイルス感染拡大防止の取り組みとして、空港や港で行われる検疫・検査を強化する日本政府の対策です。予測できないウィルス感染拡大においては、水際対策が長引く傾向にあり国際的な人の往来に大きな影響を与えています。
日本で働く予定の外国人が、水際対策によって入国できない場合、または、在留期間が満了で帰国予定していた外国人が帰国できない場合など、通常通りではない状況に対応が迫られています。
コロナ禍で在留外国人数が減少
法務省公表の在留外国人数(2021年6月末)によりますと、在留外国人数は282万3,565人で、前年末(288万7,116人)に比べて6万3,551人(2.2%)減少しています。
在留外国人数の減少の原因には、新規外国人の入国が制限されているため、技能実習生、特定技能、留学生の動向に大きく影響しています。また、、飲食業のアルバイトをしていた留学生が仕事を無くしたり、技能実習生が実習先から解雇されたりなど、在留外国人が日本で働いて生活するにも困難な状況が発生しています。
在留資格・特定技能では2023年度までの5年間に対象の産業14分野で、合計34万5,150人の受け入れ人数で上限を設定していましたが、新規の特定技能外国人の入国が停止されているため、予測から大幅に下がって受け入れ人数は伸び悩んでいます。この状況下、帰国困難な留学生や技能実習生の中から特定技能へ移行するルートが認められ、特定技能の在留人数に反映しています。
- 技能実習:2019年410,972人~2020年378,200人~2021年354,104人
- 特定技能:2019年1,621人~2020年15,663人~2021年29,144人
- 留学生:2019年345,791人~2020年280,901人~2021年227,844人
また、コロナ禍に帰国困難となった外国人が、在留資格・特定活動を活用して在留許可を延長するケースがあり、特定活動の在留外国人数は増加の傾向にあります。
在留資格別在留外国人数の推移によりますと、特定活動の人数は、2019年65,187人、2020年103,422人、2021年112,382人で、対前年末増減率8.7%となっています。
出入国在留管理庁:在留外国人数について第2表・在留資格別在留外国人数の推移
オンライン申請による水際対策の緩和
現在、原則として全ての国・地域からの新規入国を一時停止し「特段の事情」がある場合に限り、新規入国を認めるようになっています。この場合、外国人を雇用したい会社や大学等は、事前にオンライン申請による手続きが必要になっています。
2021年3月1日より始まっているオンライン申請では、受け入れ企業や学校側に外国人受け入れの責任者の配属と管理ができることが条件となっています。
受け入れ責任者は、入国者を雇用する企業や学校以外に、第三者となる行政書士に委託することも可能です。
また、法人以外で個人事業主が受け入れ責任者となる場合は、「法人以外の受入責任者に係る確認書類」の提出と必要事項が確認できることが条件となります。
●入国できる対象者とは?
商用・就労等の目的で入国し、日本国内で受け入れ責任者の管理下で活動する外国人であること。
●ビザについて
再入国の場合を除き、現在すべての外国人に入国前にビザの取得が必要です。
企業や大学などの受け入れ責任者が、ビザの受付済証と申請書類を提出し手続きを行います。
受付済証とは、入国者健康確認センター・ERFSオンライン申請をして発行された証明です。
●検疫所の宿泊施設での待機措置については、待機期間が随時更新されているため、雇用する外国人の国籍に合わせて対応が必要です。待機期間の対応は、アプリを活用することが義務付けられています。
●ワクチン接種証明書の条件
日本で発行されたワクチン接種証明書であること。
外国で発行されたワクチン接種証明書の場合は、氏名、生年月日、ワクチン名またはメーカー、接種日、接種回数が日本語または英語で記載されていること。
政府等公的な機関で発行されたワクチン接種証明書であること。
- ワクチンの種類の規定
コミナティ/ファイザー/バキスゼブリア/アストラゼネカ/モデルナ/コビシールド/ジョンソン・エンド・ジョンソン(1回のみ)/のいずれかを2回目接種し、コミナティ/ファイザー/モデルナ/のいずれかを3回目に接種していること。
外国人学生受け入れの緩和策
4月1日より水際対策の緩和が発表されています。5月末までに日本入国を希望する外国人留学生10万人超の受け入れを計画として、日本政府は受け入れ人数の上限を1日5,000人から7,000人に引き上げ、留学生の受け入れ対策を行っています。
日本政府の対策では、コロナ禍で足止めとなっている留学生に対して、文部科学省の「外国人留学生入国サポートセンター」による航空機の予約代行も開始する予定となっています。
また、水際対策の緩和に伴い入国する留学生のうち、3月末までの在留している留学生に対して、1人当たり10万円を支給の受付を始めています。
●対象者
国公私立大学・大学院、短大、高専、専修学校、日本語教育機関(法務省認定)の外国人留学生
●給付額 10万円
●給付対象者の条件
- 高等教育の修学支援新制度の利用者
- 自宅外で生活していること
- 仕送りがないこと
- 収入が減少していること
- コロナの影響でアルバイトができないこと
- 第一種奨学金制度の利用者
- 通学している教育機関から推薦があること
帰国困難な外国人の状況
日本への出入国が段階的に緩和される中、在留外国人の中には、長期にわたる水際対策強化のために、帰国できない外国人の状況はさまざまな形で負担や苦労が続いています。
帰国困難な外国人にとっては、日本で延長して生活するために在留資格の変更手続きや、在留中の生活費の工面など予想外の出費が大きな負担となっています。
在留資格を変更して就職やアルバイトができている外国人以外に、帰国を予定している外国人にとっては、空港再開となっても飛行機のチケットが高昇していることや、日本で待機中の経済的な負担額が大きくなっています。
現在、水際対策を撤廃する国もある中、日本政府のコロナ対応には厳格さと慎重さが際立ち、海外から日本へ就活または留学を目指していた外国人の中には、待ちきれず他国へ移行している外国人もいます。
今後、コロナの感染状況による日本政府の対応は、在留外国人または日本への就活を希望している外国人に再び、大きな影響が及ぼすことが想定されているため、外国人雇用を計画している企業は、厳格な水際対策によるリスク回避策を考えておくことが重要となっています。
まとめ
新型コロナウィルス感染拡大による水際対策と、現在の外国人受け入れ状況についてのまとめでした。
出入国の手続きが再開されることで、帰国困難な外国人や技能実習や特定技能で新規入国する外国人、留学生の方々の往来により外国人雇用の活動も再開してきています。
外国人雇用においては、今後もコロナ影響があることを踏まえて、受け入れる外国人に対して、ワクチン接種や入国時の注意点について指導とサポートを行うことが必要となります。