外免切替における業務利用と私的利用の違いとは
ここでは、外免切替における業務利用と私的利用の違いについて詳しくみていきましょう。
「業務利用」とは、業務の一環としての運転を意味する
業務利用は、外国人労働者が雇用契約にもとづき、就労中に車両を運転することを意味します。単なる移動ではなく、業務遂行の一部と見なされます。たとえば、以下のようなケースが該当するといえるでしょう。
- 宅配や営業ルートを担当する配送ドライバー
- 建築・設備現場への資材搬入を行う現場作業員
- 顧客訪問や現地確認のために移動する営業職
- 外国人技能実習生の生活支援を行う通訳・支援スタッフ
運転行為は基本的に労働時間中に発生し、企業の管理下にあるものです。
つまり、事故や違反が起きた場合、企業側に安全配慮義務や法的責任が発生する可能性があるという点で、極めて重い意味があるといえます。
「私的利用」とは、生活上の移動手段に過ぎない
「私的利用」は、外国人本人が自発的に車を使って生活を営むための手段であり、以下のような行為が含まれます。
- 毎日の通勤
- 買い物や家族の送り迎え
- レジャー、旅行などの休日の移動
永住者や定住者、日本人配偶者ビザ、特定技能等の在留資格を持つ人々が生活基盤を築くなかで自然に発生する行為だといえます。
日本人と同様に「運転が生活インフラとなっている」地域も多くあり、とくに地方圏では、公共交通機関の利便性が限られているため、自家用車による移動は不可欠だといえます。
そして、私的利用においては、運転に対する監督義務は雇用主には及ばず、事故発生時の責任や補償対応も基本的に本人の責任範囲となります。
問題なのは私的利用ではなく形式的な利用となっていること
一方で、現在問題視されているのは、本来生活者を対象とした制度が、「観光目的の短期滞在者」によって形式的に利用されている状況です。
たとえば、観光客が短期間だけ住民登録を行い、外免切替を申請することで日本の免許を取得し、そのままレンタカーで運転するという事例が散見されています。
こうしたケースでは、交通ルールの理解や道路マナーの習得が不十分なまま運転を開始することになり、事故リスクが高まる要因となっています。
生活上の私的利用とは異なり、交通安全教育や運転者としての責任意識が希薄なまま切替が行われている点が制度運用上の課題となっているといえるでしょう。
制度上は一律でも、実務では無視できない「目的の違い」
外免切替制度の手続きは、業務利用か私的利用かを問わず、「適性検査+学科試験・技能試験(または免除)」という同一のフローで実施されています。
つまり、制度上は利用目的による区別がありません。しかし、現場では以下のような重大な乖離が発生します:
- 業務利用では、運転の失敗が企業全体のリスクに直結
- 企業側に「運転適格性を見抜く責任」が暗黙のうちに課せられている
- 保険適用や労災・損害賠償の判断も、業務か私用かでまったく異なる
そのため、企業は外免切替を「通ったか否か」だけで済ませず、利用目的の明確化・業務利用者への追加確認や研修の導入が強く求められるといえるでしょう。
業務利用と私的利用の違いを前提に企業は備えるべき3つの対策
外免切替制度は、業務利用と私的利用を区別せず一律に処理されているのが現実です。
しかし、実務においては「運転が仕事か、生活か」で企業の法的責任・管理体制は大きく異なります。
とくに、外国人労働者を業務目的で運転に従事させる企業にとっては、「免許があるから大丈夫」では済まされません。
事故が発生した際の使用者責任や安全配慮義務の有無、さらにはコンプライアンス違反のリスクにも直結します。
ここでは、採用から配属、教育・管理まで、具体的な対応策を3つみていきましょう。
対応段階 | 企業が行うべき実務対応 |
① 採用時 | ・外免切替の有無と発給国を必ず確認・試験免除国の場合は運転経験・能力を面談でヒアリング・曖昧な場合は運転業務を伴わない配属も検討 |
② 配属前 | ・独自の運転技能評価(実地確認)を実施・業務で想定されるルートや車両ごとのリスク指導・社内交通マニュアルを多言語で整備、本人に確認させる |
③ 配属後 | ・定期的なフォローアップ講習を設定・事故時の対応フローを社内で共有・明文化・運転を業務に含む旨を契約書類に明記 |
④ 外免切替支援時 | ・支援内容と責任の分担を文書化・免許取得=即戦力ではないと管理者・本人に説明・必要に応じて専門家(行政書士・交通教育機関等)と連携 |
制度の「一律」運用に頼らず、実務上の「分岐点」を設けることが重要です。
外免切替制度は、業務・私的利用を問わず同一手続きとなっています。
そのため、リスクを含めた選別は制度ではなく、現場の企業判断に委ねられているといえるでしょう。
企業の観点からすれば、制度を理由に「確認しなかった」「教育しなかった」では、事故発生後の責任逃れは困難です。
今後は「制度に頼らず、企業として独自に線引きし、安全管理の手続きを設けているか」を意識し、採用リスクの低減がより必要だといえるでしょう。
特定技能・永住者による運転業務は、制度上の適格性が前提にある
制度全体としては外免切替に関する運用は一律です。しかし、実際には在留資格の違いによって、運転業務への適格性や制度的な前提条件は大きく異なります。
とくに「特定技能」や「永住者」といった在留資格を持つ外国人は、就労内容や日本での生活実態が明確に制度上定義されており、外免切替制度の利用に対してもより高度な適合性が前提とされています。
たとえば、特定技能1号(自動車運送業分野)における運転業務の主な要件は以下のように非常に厳格に定められている状況です。
業種区分 | 必要な運転免許 | 技能評価試験 | 日本語能力要件 | その他の要件 |
トラック運送業 | 第一種運転免許(普通・中型・大型) | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(トラック) | 日本語能力試験N4以上またはJFT-Basic A2相当以上 | 安全性優良事業所(Gマーク)または「働きやすい職場認証制度」の認証取得 |
タクシー運送業 | 第二種運転免許 | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(タクシー) | 日本語能力試験N3以上またはJFT-Basic B1相当以上 | 新任運転者研修の修了、「働きやすい職場認証制度」の認証取得 |
バス運送業 | 第二種運転免許 | 自動車運送業分野特定技能1号評価試験(バス) | 日本語能力試験N3以上またはJFT-Basic B1相当以上 | 新任運転者研修の修了、「働きやすい職場認証制度」の認証取得 |
一方で、永住者は、日本人とほぼ同等の就労制限のない在留資格であり、転職や就労内容の自由度も高い点が特徴です。そのため、永住者が運転業務を行う場合は、一般の日本人ドライバーと同様の法的枠組みで運用することが可能だといえます。ただし、外免切替制度によって免許を取得している場合は、その取得経緯(免除国か否か)や技能確認を企業側が行う必要がある点に注意しましょう。
まとめ
外国免許切替制度は、日本で生活する外国人が安全に運転できるよう設計された制度です。
しかし、現実の運用では、観光目的の短期滞在者による形式的な利用や、制度の「一律運用」によって、企業にとって見えづらいリスクがある状況だといえるでしょう。
また、業務利用と私的利用は、制度上は区別されていません。
そのため、企業の立場から見れば法的責任・事故時の対応・保険の適用に至るまで、まったく性質の異なるものです。
とくに業務利用においては、採用時点での切替経緯の確認、配属前の技能評価、配属後の教育体制が求められる状況です。
採用段階から運転業務のリスクを念頭に置いた評価基準を整備し、事故予防・責任回避・社内統制の面から、外免切替制度との向き合い方を整えていきましょう。
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