一見普通でも風営法の対象になる施設とは?
風営法の適用を受けるのは、いわゆる性風俗店だけではありません。見た目は通常の飲食店やサービス業でも、提供内容や営業実態によっては風営法の規制対象となるケースがあります。
ここではとくに、外国人材を雇用する際に注意すべき施設の種類と特徴について詳しく解説します。
1. 一見普通の店でも風営法に該当するケース
表向きには飲食店やカフェとして営業しているものの、実際には「接待行為」が含まれているため、風営法に抵触する可能性がある店舗があります。
見た目では判断がつきにくいため、営業実態に基づいた判断が必要です。
ガールズバーやメイド喫茶
カウンター越しでの接客が中心であっても、外国人材が客の隣に立って会話を続ける、長時間にわたり対応するなどの行為があれば「接待」と解釈されることがあります。
仮に、実態がキャバクラやホストクラブに近いものであれば、風営法の1号営業に該当し、公安委員会の許可が必要です。
コンセプトカフェ・コスプレ系バー
外見上は普通のカフェでも、来店客と長時間会話をしたり、個人的なサービスを提供する場合には、「接待」に該当する可能性があります。
とくに外国人材を雇用する場合、接客スタイルの内容次第で風営法に抵触するリスクがあります。
2. 無店舗型や映像系サービスも風営法の対象
無店舗型やインターネット上のサービスであっても、風営法の規制を受ける場合があります。
店舗を持たない場合でも規制の対象となる点は把握しておきましょう
派遣型風俗(デリヘルなど)
実店舗を持たない業態であっても、性的サービスを提供していれば風営法の対象になります。
事業所として使用している拠点やオフィス、待機場所なども規制の対象です。
そのため、外国人材がその場で業務に関与する場合も注意が必要です。
映像送信型性風俗業
ライブチャットやアダルト配信といった映像配信業は、「映像送信型性風俗特殊営業」に該当します。
自宅や簡易スタジオで行う業態でも、インターネットを介していても風営法の規制を受ける点に注意が必要です。
外国人材を関与させる場合、在留資格との適合性確認が必須です。
3. 施設外でも注意が必要な業務
接客業務ではなくても、風営法対象施設に関わる業務全般で注意が必要です。
とくに施設内への立ち入りや関連業務を行う際には、外国人材の在留資格に関する確認が欠かせません。
パチンコ店・風俗施設の清掃や設備工事
直接の接客がない業務であっても、風営法に基づく営業施設内で外国人材が作業を行う場合、在留資格によっては「従事」と見なされ、就労不可になるケースがあります。
業務委託でも立ち入りには十分な配慮が必要です。
店舗運営の間接業務(Web管理、制作など)
風俗営業に関わるWebサイトの運営・更新や広告制作といった業務も、内容によっては風営法対象業務と見なされる可能性があります。
外国人材が業務を担う場合には、就労資格の範囲内かどうかを十分に確認しなければなりません。
風営法対象施設で働ける在留資格とは?
一般に、風営法の対象となる施設では「働けない」在留資格が多い中で、ごく一部の在留資格に限って就労が可能です。
ここでは、風営法に対応可能な主な在留資格についてみていきましょう。
また、在留資格以外にも指定書を確認する必要もあるため、こちらの記事もご参照ください。
在留資格 | 就労可否 | ポイント |
永住者 | 可能 | 日本に無期限で住むことが認められており、就労制限なし。日本人と同等の扱いで、風営法対象施設での就労も可。 |
日本人の配偶者等 | 可能 | 日本人と婚姻関係がある外国人に与えられる在留資格。就労制限がなく、職種の制限もない。 |
永住者の配偶者等 | 可能 | 永住者と婚姻関係がある者。日本人の配偶者等と同様、就労の制限がない。 |
定住者 | 可能 | 日系人などに多い在留資格。永住に近い扱いで、基本的に職種制限はなし。風営法対象業種にも従事可能。 |
特別永住者 | 可能 | 主に在日韓国・朝鮮人に該当。出入国管理の制限が極めて緩やかで、就労の自由も保障されている。 |
外国人材を雇用する際の実務フローと注意点
風営法の対象となる施設で外国人材を雇用する際には、「施設の営業形態」と「外国人の在留資格」の両面を丁寧に確認する必要があります。
以下は、採用前に確認すべき4つの基本ステップです。
ステップ | 確認内容 | チェックポイント・注意点 |
1. 施設の確認 | 営業形態が風営法の対象か? | - 「接待」「深夜営業」があるか- 1号営業、映像送信型などの区分- 公安委員会の許可・届出の有無を確認 |
2. 在留資格の確認 | 就労が可能な在留資格か? | - 在留カードの裏面に「風俗営業等の従事を除く」の記載有無- 「特定活動」の場合はパスポート添付の「指定書」を確認 |
3. 業務内容の確認 | 担当予定業務が就労制限に抵触しないか? | - 清掃・調理補助も対象施設内なら注意- 客対応の有無に関係なく「従事」と判断される場合あり |
4. 専門家への相談 | 不明点は法的に確認したか? | - 行政書士・社労士・警察(生活安全課)へ相談- 入管への事前確認でトラブル予防 |
風営法に関係する施設では、見た目や職種だけでは判断できない就労制限があります。
外国人材の雇用を検討する際は、施設の営業実態を正確に把握し、次に在留資格と業務内容が法的に適合するかを確認する必要があります。
また、不明な点があれば専門家や関係機関に相談し、違法雇用や不法就労助長のリスクを未然に防ぐことが重要です。
採用前のこの4ステップを徹底することが、安全で適切な雇用につながります。
まとめ
風営法の適用範囲は、いわゆる性風俗店に限らず、接待を伴う飲食店や深夜営業のバー、さらには無店舗型・映像配信型のサービスまで多岐にわたります。
表面的には「普通の飲食店」や「軽作業の裏方業務」であっても、営業実態や立ち入り場所によっては風営法の対象となり、外国人材にとっては就労が制限されるケースも少なくありません。
外国人材を雇用する際の施設の営業形態や在留資格、業務内容の確認に関しては、10年以上外国人の採用支援をしてきたLTBにお問い合わせください。
とくに「採用して問題ないか判断に迷う」「どこまで業務を任せてよいかわからない」といったご不安がある場合には、まずはお気軽にご相談ください。
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