介護業界の労働者に関するファクツ
人手不足が顕著な介護業界の事実はいったいどのようなものなのでしょうか。2020年12月の有効求人倍率は3.99倍、コロナとはいえ高い水準のままです。一般職業紹介状況より/厚生労働省の数値等にもあるように、全産業に比べ常に有効求人倍率が高いまま推移していることがわかります。
また2017年度介護労働実態調査/(公財)介護労働安定センターによると、年々、調査対象事業所では労働者不足感が増しており、不足と感じる割合(大いに不足+不足+やや不足と感じる割合)は2010年には約5割だったものが、2017年には6割強に増加しています。
そもそもの原因は一体なんでしょうか。採用が困難であると答えた事業所は88%で、離職率が高いは約20%で人手の確保そのものが困難であることがわかります。さらに、採用が困難である理由を「同業他社との人材獲得競争が激しい」、「労働条件が他の産業に比べて良くない」等が5割以上(事業所ごとの回答で複数回答可)となっています。
一方で、厚生労働省の試算によれば介護人材ニーズは2016年に160万人であったものが、2020年には216万人、2025年には245万人必要になってくるとしています。
介護職員数と要介護(要支援)認定者の推移 | |||||
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項目/年度 | 2000年 | 2005年 | 2010年 | 2015年 | 2017年 |
要介護(要支援)認定者 | 218万人 | 411万人 | 487万人 | 608万人 | 633万人 |
入所系事業所従事者 | 32.1万人 | 54.8万人 | 75.3万人 | 92万人 | 95.7万人 |
訪問系事業所従事者 | 18.0万人 | 41.3万人 | 43.2万人 | 52.8万人 | 50.8万人 |
通所系事業所従事者 | 4.8万人 | 12.5万人 | 21.0万人 | 32.1万人 | 33.2万人 |
2017年要介護(要支援)認定の方が600万人を超える状況に対して、介護事業に従事する方達は全体で186万人であり、この表から言えることは高齢化が加速度的にすすみ、介護人材の確保が間に合っていないのではないかということが言えそうです。
介護に携わる外国人と在留資格種類
介護に携わる外国人はどのように推移しているでしょうか。2019年時点ではEPAに基づく介護福祉士候補者の受け入れは累計で5,026名、介護の資格を持って従事する外国人は592人となっています。このほか、技能実習生での受け入れも可能となっています。特定技能では介護在留資格を持つ外国人は2020年6月現在170人でしかありません。2019年4月に特定技能制度が創設されたとき、5年で6万人の特定技能外国人労働者を介護業界で誕生させるとしていました。
介護業界で就労可能な在留資格とその流入ルートを見ていくととしましょう。
外国人を介護福祉士として受け入れる方法は様々あることがわかりました。他の在留資格に比べ、これほど多くの流入経路と働くことを目的とした在留資格の種類があるのは稀かと思います。さらに、特定技能の他の職種では通算5年を経過すると帰国をしなくてはならいのが現状ですが、試験に合格をしてしまえさえすれば、家族も連れてこられる、在留資格も無期限に更新が可能といった、外国人からすると特典もあるように感じます。
政府がいかに将来に向けた高齢化への備として打ち手をたくさん備えていることが伺い知れるのではないでしょうか。
介護現場での課題
さて、これだけの打ち手を持っても外国人を介護現場へ導入がなかなか進まない理由は何でしょうか。私たちが現場のお話を伺う限り、外国人自身の能力によるものと、利用者や一緒に働く日本人の同僚や上司との壁がありそうだということが判ってきました。
外国人自身の能力というのは、利用者と機微なコミュニケーションが求められるような介助で何か間違いがあってはならないということや、特に漢字圏ではない国出身の外国人が「記録(IT化している事業所もたくさんあります)」を手書きでつけたり、周りと共有したりすることへの難しさ、つまり日本語のリテラシーに不安があることがあげられるように考えます。
また、利用者側も日本が美徳としてきた以心伝心を重んじる傾向があることなどで、外国人に利用者の意を汲み取って欲しいという欲求に応えられるのかといった不安や、言わなくても分かって欲しいというような日本人の同僚・上司の姿勢など、外国人に対してまだまだ心理的なハードルが高いことがあげられるのではないでしょうか。
とはいえ、高齢化が加速度的に進む日本でいかに裾野を広く介護をする人材を確保していくべきか、私たちの意識も変えて行かなくてはならないことは間違いなさそうです。
次の記事では、特定技能外国人の日本語力や試験の内容、受け入れ可能な事業所などに触れていきます。