はじめに
日本の人手不足に伴い、外国人労働者を積極的に受け入れる傾向が見受けられますが、現状では、逆に外国人労働者の日本離れも問題となっています。
日本に憧れて来日する外国人というのは表向きのイメージで、実際は日本でたくさん稼いで母国の家族に貢献したいというのが本音であったりもするようです。
日本で働いても思ったように稼ぐことができないのならば、日本を離れていくことを考える外国人も少なくありません。
日本で働くと良い給料がもらえるという目的で来日しても、近年の円安や母国の最低賃金の上昇、日本より待遇や給料がいい他の国の存在など、日本が魅力的になくなる理由はいくつかあります。
①母国の最低賃金が上昇傾向にあること
2022年の日本の最低賃金は、全国平均額961円。上げ幅は過去最大の31円となっています。
引き上げ幅アップの背景には、物価の高上昇と政府方針である年率3%程度、全国平均1,000円を目標にかかげていることがあげられます。
一方日本で働く外国人で最も多い国籍、ベトナムでは2022年度の最低賃金が平均6%引き上げとなっており、2016年度からの最低賃金の推移は、後述する通り 上昇傾向にあります。
近年、アジア諸国の各都市では、法定賃金の引き上げの傾向が見られ、ベトナム以外にも、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、カンボジア、タイなどでも、最低賃金の引き上げが毎年実施されています。
日本で働く外国人上位ベトナムの最低賃金について
「外国人雇用状況」の届出状況(令和3年 10 月末現在)」によりますと、外国人労働者の総数は 1,727,221 人。国籍別で最も多いのが、ベトナム453,344 人(全体の 26.2%)、次いで中国 397,084人(同 23.0%)、フィリピン 191,083 人((同 11.1%)となっています。
上位国籍のベトナムの本国での最低賃金を調べてみると、例えば、首都ハノイを含む、第1区域(ハノイ市、ホーチミン市、ハイフォン市など)では、2016年:350 万ドン → 2022年:468万ドンというように この6年で 30%以上も 賃金が上昇しています。
※1 ドン 0.0057 円(2022.11/15時点)
途上国の最低賃金が上昇傾向にあることを踏まえて、今後、近い将来、日本との差は埋まっていくことを想定すると、もう日本で働かなくても母国で働いて生活できると考える外国人が増えていくこともありえます。
また、日本で働きたい外国人が日本の賃金に魅力を感じなくなれば、当然、母国に帰るか、他の国へ出稼ぎにいくことになるでしょう。
実際に聞こえて来る情報として、日本への送り出し国として人材を輩出しているネパールでは、日本で就活するよりもオーストラリアや欧米諸国へとルートを変更する若者が増えています。
②円安で母国送金ができない
記録的な円安で、日本で働く外国人労働者が、定期的に行っている母国への送金ができない状況が続いています。
日本で働く外国人労働者、特にアジア諸国出身者の場合、日本で働いた給料で母国の家族を養っている人も少なくありません。
このまま円安が続けば、外国人労働者は日本から離れて他の国へ移動していき、日本の人材不足はさらに悪化することが予測できます。
例えば、オーストラリアでは年間9カ月の労働と3カ月は自由に活動できるメリットがあり、外国人労働者には魅力的な国として人気が上昇しています。世界一最低賃金が高い国オーストラリアでは、2022年7月から5.2%引き上げとなっています。
③厳格すぎる日本に着いていけない
新型コロナウィルスの入国制限が、世界と比較して圧倒的に厳しくなっている日本は、外国人から見て敬遠される理由にもなっています。
日本に留学や就労を予定していた外国人は、日本への長い入国待ちにしびれを切らして、他国へルート変更した人も少なくありません。
文部省の調査では、コロナ影響で日本から他国へルート変更した外国人留学生は、4万人近くいるといわれています。また、関西の某私立大学では2022年度の留学志願者がコロナ前より3割減っていると公表しています。
外国人留学生が、留学先を選ぶ基準は、だいたい親族や知人からの情報や口コミから決める傾向があり、日本の留学が魅力あることが拡散されない状況では、今後の留学生の往来も厳しくなると言われています。
新型コロナウイルスの厳格な水際対策に対して、日本を目指している外国人が日本に対する印象をどのように捉えているのか?日本人は海外から見た日本について考えることが必要になっています。
④日本人のワークライフバランスが悪い
日本人が仕事に追われるように働いている姿を外国人労働者はどのように見ているのでしょうか?仕事が終わらなければ残業は当たり前という、法令違反のブラック企業がいまだ存在しています。
仕事優先の日本では、家族との係わりは二の次で、家事や育児の負担は一人に偏りがちです。また、非正規社員にもかかわらず、正社員と同じように業務負担を科せられるなど、雇用管理が曖昧な会社もあります。
このような日本の働き方の悪い典型に外国人労働者は、不満を持って離れていくことがあります。給料も悪くて労働条件も悪いのならば、わざわざ日本で働く必要はなく、出稼ぎ国は他にいくらでも変更することはできます。
日本人のワークライフバランスの悪さは、外国人労働者の働き方に合わないため、難しくなっています。
まとめ
外国人労働者や留学生が、日本に魅力がなくなる要因について解説しました。
かつては、日本はアジアの中でも一番憧れる国として君臨していましたが、近年の現状や今後を予測してみると、あまり明るい兆しが見えてこないのが残念です。
外国人労働者の雇用活動を行う際は、外国人労働者が日本を就労国として選ぶポイントについてもう一度考え直すことが必要となっています。