はじめに
少子高齢化による労働人口の減少に伴い、外国人雇用の活動が盛んとなっています。
外国人を採用し、よりよい雇用関係を築いて行くためには、外国人を受け入れるための準備と外国人が働きやすい労働環境づくりが必要です。
本記事では、外国人の採用を検討している事業者の方に向けて、現在の外国人雇用状況と外国人採用活動を成功させるためのポイントについて解説します。
現在の水際対策は?
新型コロナウィルス感染拡大による入国制限が、外国人の採用活動に大きく影響し、長期に渡って採用を停止せざるを得ない状況が続きました。現在では、水際対策の緩和により、徐々に入国者数が増加するようになり、外国人採用活動が再開してきています。
今後の外国人労働者の受け入れにおいては、コロナ禍の燃料高の影響により渡航費用が高騰していることや、日本入国時の検疫措置では、滞在国の区分ごとに有効なワクチン接種証明書の提示条件が異なること等、新たな受け入れ方法について把握しておくことが必要となっています。
現在の外国人雇用状況
外国人の採用について考える前に、現在の日本の外国人雇用状況について知っておくと良いでしょう。
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和3年10月末現在)によりますと、外国人労働者数は1,727,221人、前年比 2,893 人増加となり、平成19年に届出が義務化されて以降、最高の数値となっています。
国籍別の順位
- ベトナム453,344 人 (外国人労働者数全体の26.2%)
- 中国 397,084 人 (同23.0%)
- フィリピン 191,083 人 (同11.1%)
在留資格別の順位
- 「特定活動」65,928 人 、前年比 20,363 人 (44.7%) 増加
- 「専門的・技術的分野の在留資格」394,509 人、前年比 34,989 人(9.7%) 増加
- 「身分に基づく在留資格」580,328 人、前年比 33,859 人 (6.2% ) 増加
- 「技能実習」は 351,788 人、前年比 50,568 人(12.6%) 減少
- 「資格外活動」のうち「留学」267,594人 、前年比 38,963 人 (12.7%)の減少
外国人雇用活動においては、日本の企業から「技能実習」と「留学」「特定技能」での受け入れが主流となっていましたが、新型コロナウィルスによる入国制限により、入国者数が前年比より減少となっています。
技能実習での受け入れ
新型コロナウイルス感染拡大に伴う入国制限が緩和され、日本各地で外国人技能実習生の受け入れが徐々に進んできています。コロナ禍で、多くの実習生候補が来日を諦めた背景があり、新たに技能実習生を受け入れるルートの再開が期待されています。日本の水際対策が長引いたため、日本就活から他の国へ変更した外国人も多く、あらためて日本で働くことの魅力やアピールを海外の外国人向けに発信していくことが必要となっています。
留学生での受け入れ
文部科学省は、留学生の受け入れをコロナ発生前の水準に回復させる方針を打ち出しています。具体的には、5年後の2027年をめどに外国人留学生の受け入れは30万人超を目標とし、留学生が卒業後も日本で就職や起業がしやすくなる支援や日本へ留学するための情報発信を推進するなどの取り組みが行われています。
また、留学生が日本で就労できる「資格外活動」での受け入れでは、外国人労働者の19.4%を占め、その3分の1が宿泊業・飲食サービス業での採用となっており、「資格外活動」の留学生は、人手不足の産業界では貴重な人材となっています。
特定技能での受け入れ
「特定技能」では、日本に在留中のベトナム人が33月末時点4万人を超え、全体の63%を占めています。その理由は、新型コロナウイルスの水際対策により新規外国人の入国が停止される中、既に日本に在留している外国人で、在留資格変更「技能実習生」から「特定技能」への移行者が増加していることによります。
日本政府は、「特定技能」の制度開始時に5年で合計34万5,150人が受入れ上限を想定していましたが、現在の受け入れ総数は6万人余りとなっており、水際対策の緩和により「特定技能」での新規入国の外国人増加が見込まれています。
外国人採用のポイント
外国人を採用する際は、いくつかのポイントに分けて対応すると良いでしょう。
- 異文化・宗教
- 多言語対応(母国語・英語・日本語)
- 職場環境
- 外国人の家庭環境
- キャリアプラン
- 就労ビザの取得
- 日本の特徴を知る
異文化・宗教を知る
外国人社員の労務管理では、異文化コミュニケーション研修などを行って毎日の業務がスムーズに運ぶための対策を行うことが必要です。さまざまな国籍の外国人と同じ職場で働くためには、国籍ごとに異なる習慣や考え方について日本人社員と外国人社員が、お互いに共有しておくことが大切です。ただし、既に身に付いている習慣を変えることは容易ではないため、先ず始めに「違う」という前提を理解し、徐々に意識変化を促す方法が理想的です。
また、宗教に関しては、食べ物や儀式に伴う配慮は対応しやすい内容となりますが、毎日の行動が宗教に基づくこともありますので、適切な解釈のために外国人本人と定期的に話し合う機会を設けると良いでしょう。
多言語対応(母国語・英語・日本語)
外国人を採用する際は、面接時に必要な日本語能力のレベルをチェックし、実際に会話した時の受け答え方などから判断することが必要です。
入社後に、ビジネス日本語研修や公用語として英語を取り入れたり、または、日本語以外に多言語を自由に使える職場は、外国人採用の成功に繋がる傾向があります。
毎日の会話のベースにはお互いの国の文化や習慣が大きく影響するため、共通の言語を増やすことと同時に異文化への理解も必要となります。
職場環境のダイバーシティ
日本人社員と外国人社員が個々の違いを受け入れて働ける、ダイバーシティに配慮した職場環境が必要です。外国人採用が成功している会社では、コミュニケーションがしやすくなる言語研修や、海外と日本の働き方の違いを学ぶ研修など、日本人社員の意識変革に繋がる取り組みが行われています。
また、外国人社員に対応できる方法は言語力だけではなく、相手に伝わりやすい方法であることが重要です。そのためには、異文化理解の妨げとなるステレオタイプではなく、柔軟な思考や発想を変える練習が必要となるでしょう。
外国人の家庭環境を知る
外国人の中には、日本入国までに多額の借金をしていたり、家族や親せきからの支援を背負って日本で働いているケースが多く、大半の外国人は定期的な海外送金をすることが義務となっています。
外国人社員の経済的な状況や家族環境などについて、採用前に知っておくとコミュニケーションがしやすくなるでしょう。
また、アジア諸国出身の外国人の場合、家族を中心とする生き方が主流となる傾向があるため、そういった習慣への理解があるとコミュニケーションが円滑に繋がって行くでしょう。
外国人向けのキャリアプラン
外国人に対して面談時に将来のキャリアプランについてヒアリングしておくことと、入社後も再度、ミスマッチを防ぐために繰り返し話し合うことが必要です。外国人の場合、国籍別に仕事への価値観が異なるため、国籍に応じたキャリアプランを築くことが必要です。
入社後の外国人のキャリア形成をサポートできるように、将来のビジョンと現状の業務にズレが生じないようなサポートがあると良いでしょう。
就労ビザの取得
外国人の採用では、適切な就労ビザを取得していることが第一条件です。日本人社員を採用する場合と大きく異なる点は、ビザの取得や入管法についての知識を理解しておくことです。仮に、入管法で違法となる外国人を雇用した場合には、罰則が科せられるため注意が必要です。
高コンテクスト文化の日本
異文化について考える場合、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化に分けることができます。高コンテクスト文化とは、可視化しにくい文化でわかりにくく誤解を生じやすい特徴があります。コンテクストとは、空気を読む、文脈、状況、環境等の意味を持ち、言葉以外の情報を読み取ることが求められます。日本は高コンテクスト文化に該当し、言わなくてもわかるだろうという暗黙の状況が日本人同士では成立します。ただし、外国人社員が、日本人の文脈を理解できずにコミュニケーションが上手くいかないこともあります。異文化には、目に見えない文化があることを知っておくと良いでしょう。
まとめ
外国人の採用を成功させるためには、まず、外国人雇用状況を把握し、コロナの影響による各種手続きなどの方法を確認することが必要です。外国人を採用する状況や背景を知ってからは、過去に外国人を採用して成功へと繋がっている会社の事例などを参考に、採用活動を進めると良いでしょう。具体的には、言語や異文化の違いを理解し、常に柔軟な思考でコミュニケーションできるような社員研修や、外国人社員と日本人社員が共通した価値観で働ける労働環境つくりができていることが必要となるでしょう。