はじめに
外国人を雇用する場合、どの在留資格であれば雇用可能なのか?自社業務に適用する資格は?など悩んでいる方も多いでしょう。
在留資格には、大きく分けて就労できる資格とそうでない資格があります。
日本の企業で働く場合、就労できる在留資格で雇用することが条件となり、さらに自社業務に合う在留資格を選ぶことが必要です。
なお、従事する業務については、スキルや実務経験が必須となるものと単純作業を含む広い範囲のものがありますので、雇用の際は確認が必要となります。
そこで、本記事では、日本で就労できる在留資格の中でも、高度人材を雇用できる「専門的・技術的分野」の在留資格について解説していきます。
就労できる在留資格とは?
日本で外国人が取得できる在留資格には、大きく以下の2つに分類できます。
- 就労できる在留資格
- 就労できない在留資格
- 就労できる在留資格
現在、19 種類あります。加えて、以下の在留資格の他に「身分・地位にもとづく在留資格」も同様に、就労制限が無く日本で働くことができます。
〇「身分・地位にもとづく在留資格」:「永住者」「日本人の配偶者等」「永住者の配偶者等」「定住者」の4 種類
- 外交
- 公用
- 教授
- 芸術
- 宗教
- 報道
- 高度専門職
- 経営・管理
- 法律・会計業務
- 医療
- 研究
- 教育
- 技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)
- 企業内転勤
- 介護
- 興行
- 技能
- 特定技能
- 技能実習
- 就労できない在留資格:留学、家族滞在、短期滞在などです。
専門的・技術的分野の在留資格とは?
では、本題の、専門的・技術的分野の在留資格とは何か?について解説していきます。
専門的・技術的分野の在留資格では、高度人材を雇用することができます。
高度人材とは【就労できる在留資格】の中で主に『技術・人文知識・国際業務』の取得者を指します。
技術・人文知識・国際業務とは?
技術・人文知識・国際業務は、大学・大学院で学んだ知識と実務経験を活かして日本の企業で就労できる在留資格です。
技術・人文知識・国際業務の頭文字を取って、通称「技人国ビザ」と言います。
技術・人文知識・国際業務の取得要件
技術・人文知識・国際業務の取得要件は以下の通りです。
日本と海外では教育課程が異なるため、それぞれ定められた範囲で、条件を満たしていることが必要です。
日本の大学、大学院、短大、専門学校卒業者
専門学校の場合は「専門士」または「高度専門士」の取得者であることが必要です。
海外の大学、大学院、短大卒業者
海外の卒業者の場合、短期大学は準学士/大学は学士/大学院は修士/等の学位取得者であることが必要です。学歴に関する書類を提出するようになります。
高卒・中卒の外国人
従事する業務に関連する実務経験が、一定の年数以上の場合は取得が認められるケースがあります。この場合は、過去に勤務した会社の「在職証明書」が必要です。
- 技術、人文知識の分野で10年以上の実務経験者であること
- 国際業務の分野(翻訳通訳業務が対象)で3年以上の実務経験者であること
技術・人文知識・国際業務の在留期間は?
技術・人文知識・国際業務の在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月です。
最初の申請で在留期間1年間の取得を行い、延長する場合は更新を継続していくことが一般的です。
長い期間の在留許可を得るためには、外国人本人の活動内容と雇用する企業のサポートにより、在留期間の長いビザを取得できるようになっていきます。
なお、技術・人文知識・国際業務から永住許可を取得するには、日本に10年以上居住していることや、5年以上就労の在留資格で日本で働いていること、さらに安定した経済活動ができている証明等、一定の条件が揃っていることが必要となります。
技術・人文知識・国際業務で従事できる業務内容
技人国ビザで従事できる業務内容は、技術/人文知識/国際業務の3分野ごとに細かく定められています。
なお、単純作業での雇用は認められていません。
技術分野で認められている業務範囲
理学、工学、その他の自然科学の分野の知識と実務経験のある外国人を雇用できます。該当する業務は、機械工学技術者、システムエンジニア等です。
人文知識野で認められている業務範囲
法律学、経済学、社会学、その他の人文科学の分野の知識と実務経験のある外国人を雇用できます。該当する業務は、企画、営業、経理等の事務職等です。
国際業務野で認められている業務範囲
外国の文化に基盤を有する思考もしくは感受性を必要とする業務で外国人を雇用できます。該当する業務は、語学教師、通訳、翻訳、デザイナー等です。
技術・人文知識・国際業務の必要書類
技術・人文知識・国際業務の必要書類は以下の通りです。外国人本人と会社側が準備する書類があります。
- 在留資格変更申請書
- 証明写真
- パスポート
- 在留カード
- 学歴を証明する書類
- 実務経験を証明する書類
- 日本語試験合格証のコピー
- 住民税の納税証明書
- 就職先の登記事項証明書
- 雇用契約書
- 前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表
- 直近年度の決算書類
- 会社概要書
- 職務内容説明書
技術・人文知識・国際業務の申請の流れ
海外から外国人を雇用する場合と、日本に在留している外国人を雇用する場合について解説します。
海外からの申請の場合
代理人・取次者が、在留資格認定証明書の交付を申請する
代理人・取次者が、在留資格認定証明書の交付後、海外の外国人本人に証明書を送付する
外国人本人が、在外領事館にてビザの申請を行う
外国人本人が、日本入国し就労スタートする
日本在住外国人からの申請の場合
現在、取得している在留資格と新しい業務内容の関連性を確認する
雇用契約を結ぶ
在留資格の変更申請または更新申請を行う
転職者の場合は「契約機関に関する届出」の提出を行う
なお、申請手続きにかかる時間は、およそ1ヶ月~3ヵ月くらいになります。申請内容に不備があった場合は、追加書類などを提出するなど、さらに時間を要する場合もあります。
技術・人文知識・国際業務で雇用する際の注意点
技術・人文知識・国際業務で雇用する際は、学歴と実務経験が、従事する業務内容に適用していることが必要です。
関連性のない業務内容だった場合は、不許可になる可能性もあります。また、追加書類等の提出や説明で許可される場合もあります。
では、技人国ビザで従事する業務内容について、いくつか例題をあげておきましょう。
技人国ビザで飲食業界で雇用する場合
店舗管理、マーケティング、営業職、事務職、通訳・翻訳業務などに限定されています。
技人国ビザでは、接客や調理人、ホールスタッフなどの業務は該当しないので、特定技能や技能実習、技能など他の在留資格で検討しましょう。
技人国ビザでホテル・宿泊業で雇用する場合
フロント業務、事務職、通訳・翻訳業務などに限定されています。
技人国ビザでは、宿泊客への接客サービスや客室清掃、レストランの配膳等の業務は該当しないので、特定技能や技能実習、技能など他の在留資格で検討しましょう。
技人国ビザで製造業で雇用する場合
CAD、生産管理業務、工場以外の本社で営業・経理等に限られています。
技人国ビザでは、現場作業や組立作業、単純作業などの業務は該当しないので、特定技能や技能実習、技能など他の在留資格で検討しましょう。
まとめ
「専門的・技術的分野」の在留資格に該当する『技術・人文知識・国際業務』のビザについて解説しました。
技人国ビザで外国人を雇用する際は、従事する業務範囲が、外国人本人の学歴と実務経験に適用することが必要です。
従事する業務範囲以外の場合は、申請しても許可されない場合がありますので、注意が必要です。
なお、技人国ビザの申請においては、専門家のアドバイスを受けながら正しい申請手続きを行うようにしていきましょう。