そもそも制度が知られていない
わたし達は、毎月沢山の求人をいただき掲載をしています。誤ったマッチングを避けるため、応募できる在留資格を明記するわけですが、特定技能の制度そのものを知らずに、フルタイムで仕事ができると単純に考え問い合わせをする外国人がそれなりにいます。
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特に多いなと感じるのは、難民認定申請中の特定活動の方から、自分はビザの切り替えをしたいのだけど、特定技能にはどうなればなれるのか?という問い合わせです。
残念ながらほとんどが学校などをドロップアウトした難民認定申請中の特定活動で、特定技能では評価試験の受験は認めるようになったものの、基本申請しても許可はされないというのが、2021年1月現在の状況です。(コロナの影響等により学費が払えないなどで退学を希望する留学生であれば、留学生から特定技能への変更をすることは可能です。)
また、家族滞在や技能と言った在留資格の方々も現状週28時間しか働けないという理由と、技能のうち飲食店で働いていて新型コロナウィルスの影響により解雇されたり、お店が閉店してしまったコックさんたちからの応募が目立ちます。これらのビザから特定技能への変更はもちろん可能ですが、単にフルタイムで働くことのできるビザであることしか知られておらず、次に述べる申請要件ついて知識がないか、知っていても合格していないケースがほとんどです。
この申請要件、留学生の間でもあまり知られていないなという感触を強く感じています。特定技能では、日本語能力検定JLPT/N4(ほかのテストでも可。ですが、同等の日本語レベルが必要です。)さらに、日本ならではの職種区分と、その職種に応じた評価試験の合格です。テストの開催タイミングも知らなければ、受験申し込み方法もわからない、受験申し込み方法がわかっても、決済に必要なクレジットカードが持てないなどです。なかなか、受験さえもたどり着きませんね。
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中身を知っていても家族を連れてきたい
また、申請要件を満たしたとしても、働き始めたら家族帯同が認められないため、すでに家族がいる方々は、中々踏ん切りがつきません。さらに、家族を日本に連れてくることが、誉れと考えている外国人には旨みが薄いようです。
新型コロナウィルスの流行で今まであった仕事がなくなり、技人国(技術・人文知識・国際業務)のビザ保有者が大量に仕事を探しています。働く意欲があり、日本語等の要件を満たしている技人国ビザの方々の多くは、既に家族が日本にいて一緒に暮らしていることからも、なかなか特定技能には切り替えられないのが実情です。
さらに、応用編として技人国ビザの配偶者でも家族滞在の在留資格を持ち、申請要件2つをクリアさえすれば、十分に特定技能へ切り替えることができることを想定している外国人は少ないかと感じています。週28時間程度のパートではなく、現場のプロとして働くことができるのは、人手が足りない企業の現場でも、本当はたくさん働きたい家族滞在の方達にとっても良い解決方法であると感じています。
周知に工夫がいる
在留資格独特の特性や、申請要件を踏まえた上で、外国人の方にいかに特定技能が魅力的かと伝えていく必要があるように感じています。
外国から直接入国する場合、当人達にとっては、技能実習生とさほど変わらないわけですので、家族帯同できないのは最初から折り込み済みと捉えるのは容易かと考えます。
一方、日本国内にいる外国人が、特定技能を目指す場合には、最大5年で帰らなくてはいけないこと、家族は一緒に住めないことがあっても、日本企業への就職の方法としてさほど敷居が高くないことこそが魅力であるとをさらに大きくアナウンスしていくべきだろうと感じます。また、特に特定技能2号を認めている分野や、介護分野では特に介護福祉士の資格を保有することで家族帯同も5年という制限もなく、在留資格の更新を行うことで長く日本で働けるという魅力をアピールしていくことが必要だろうと考えています。
制度から2年経過して
とはいえ、一昨年、昨年に比べ徐々に外国人の間でも現場の仕事は特定技能なんだという理解は広がりつつあります。さらに言えば、留学生を卒業し特定技能として、就職するという選択肢を取らざるをえないということへの、新しい働き方なんだという在留外国人の理解は少しずつ増加してきたなと感じています。
私たちは、働く外国人本人と受け入れ企業双方にヒアリングを定期的に行なっていますが、受け入れ企業側では5年では折角身に付けた技術やスキルを、また一から教え直さなくてはいけないということに懸念をされていることも散見されます。
一方外国人側でも、長く日本で働くために、その企業でスキルアップをし社内での昇進により他の在留資格へ変更する方法を模索していることもしばしば見られます。
外国人に対し人生の殆どを日本で暮らすような制度を設けてしまうと、移民を事実上認めることとなり、国内の労働市場を守らなくては行けないという国の方針を理解しながらも、特定技能として働く外国人自身の人柄、素行やスキルを重用し始めた企業にとって、外国人を5年おきに入れ替えの聞く労働者として捉えていくのは、現場としては少々酷なような感触を覚えます。
さて、今年で第一期生の特定技能外国人は2年目、在留期限の通算5年の折り返し地点を迎えます。
私たちは現場での意見をヒアリングする中で、例えば特定技能で働く外国人そのものに、なにか特筆すべき技術や素行、人柄などを客観的に測れる尺度と、総合的な評価として受け入れ企業の直属の上司や企業の役員などの推薦等を持って、受け入れから5年を超えたとしても、企業ごとなのか特定技能全体の一定の人数なのか、それとも全体に対するパーセント等という形などで、現在は一部の分野にしか認められていない特定技能2号への切り替えなどが見えてくると外国人側も企業もありがたいかもしれません。