はじめに
在留資格『特定技能』を活用して漁業分野で外国人を雇用する場合、外国人の漁業スキルを判断する「漁業技能評価試験」の合格が基準となります。
日本の漁業分野では高齢化や人手不足が問題となり、解消策として海外からの人材確保が注目されています。
本記事では、日本の漁業分野の状況を踏まえて『特定技能』漁業分野での受け入れ状況と在留資格の概要、「漁業技能評価試験」の難易度などについて説明いたします。
人不足が深刻化する漁業分野
漁業分野では人材不足が深刻化しており、有効求人倍率は高昇傾向にあります。
現役の漁業従事者は、全体的に50代以上の高齢層が多く、60代、70代の漁業従事者も珍しくない状況にあります。漁業分野での若年層の人材確保が進まないため、その対応策として外国人労働者受け入れが始まっています。
漁業分野の人材確保への課題
高齢化と若手就業者の減少で漁業分野での人材確保が難しくなっっており、人手不足が解消しない理由として以下の課題があげられています。
- 3kイメージが強いため、若年層の人材確保が難しくなっています。
- 自然条件に左右される仕事であるため、自然災害やトラブルに対応できる人材が集まらなくなっています。
- 農業分野と同様に、労働時間や就業規則が安定しないため、職場環境の改善が必要となっています。
- 漁業分野での業務は専門性が求められるため、見習い期間に耐えられる人材が集まらない状況があります。
- 漁業が盛んな地域は過疎化の問題があり、人手不足の問題が生じています。
- 最低賃金の低さは改善の対象となっています。
- 人手不足解消策として在留資格『技能実習』での受け入れが進んでいましたが、労務管理や受け入れ体制の不備などがあり問題となっています。新たに設けられた『特定技能』での受け入れにおいては適切な条件による雇用が必要とされています。
漁業分野の外国人受け入れ状況
『特定技能』漁業分野では、最大9,000 人の受け入れ人数が予定されています。2020年12月末の出入国在留管理庁の報告では、漁業分野で549人(漁業320人/養殖業229人)となっています。
国籍別では、総数549人中、中国37人/インドネシア368人/フィリピン3人/ベトナム141人となっています。
在留資格別の取得状況では、漁業・養殖業いずれも、技能実習からの移行ルートの外国人が多く、新規に試験ルートでの受け入れは伸び悩んでいる状況です。
『特定技能1号』漁業分野について
『特定技能1号』では以下の要件にそって外国人を雇用することができます。
『特定技能2号』に関しては、現在漁業分野での受け入れは実施されていませんが、現在、業種拡大が検討されています。
- 制度:特定技能制度
- 在留期間:特定技能1号は通算で5年間/特定技能2号は在留制限なし
- 目的:就労
- 業務範囲:漁業と養殖業
漁業:
- 漁具・漁労機械の点検・換装
- 船体の補修・清掃
- ⿂倉、漁具保管庫、番屋の清掃
- 出漁に係る炊事・賄い
- 漁船への餌、氷、燃油、⾷材、⽇⽤品その他の操業・⽣活資材の仕込・積込
- 採捕した⽔産動植物の⽣簀における蓄養その他付随的な養殖
- ⾃家⽣産物の運搬・陳列・販売
- ⾃家⽣産物⼜は当該⽣産に伴う副産物を原料⼜は材料の⼀部として使⽤する製造・加⼯及び当該製造物・加⼯物の運搬・陳列・販売
- ⿂市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
- 体験型漁業の際に乗客が⾏う⽔産動植物の採捕の補助
- 社内外における研修 など
養殖業:
- 漁具・漁労機械の点検・換装
- 船体の補修・清掃
- ⿂倉、漁具保管庫・番屋の清掃
- 漁船への餌、氷、燃油、⾷材、⽇⽤品その他の操業・⽣活資材の仕込・積込
- 養殖⽤の機械・設備・器⼯具等の清掃・消毒・管理・保守
- ⿃獣に対する駆除、追払、防護ネット・テグス張り等の養殖場における⾷害防⽌
- 養殖⽔産動植物の餌となる⽔産動植物や養殖⽤稚⿂の採捕その他付随的な漁業
- ⾃家⽣産物の運搬・陳列・販売
- ⾃家⽣産物⼜は当該⽣産に伴う副産物を原料⼜は材料の⼀部として使⽤する製造・ 加⼯及び当該製造物・加⼯物の運搬・陳列・販売
- ⿂市場・陸揚港での漁獲物の選別・仕分け
- 体験型漁業の際に乗客が⾏う⽔産動植物の採捕の補助
- 社内外における研修 など
- 技術水準:一定の専門性・技能が必要。「漁業技能評価試験」の合格。
技能実習2号を良好に修了している場合には試験免除。 - 日本語能力:①日本語能力試験(N4以上)
②国際交流基金日本語基礎テスト(A2以上)
技能実習2号を良好に修了している場合には試験免除。
『特定技能』漁業分野の技能評価試験について
『特定技能』漁業分野の要件では、漁業の現場で対応できるスキルを判断するために、「漁業技能評価試験」の受験合格が基準となっています。
なお一般社団法人大日本水産会HPより「漁業技能測定試験」の受験に必要な学習用テキストをダウンロードすることができます。
対応言語は日本語、中国語、インドネシア語、英語、ベトナム語で閲覧できます。
漁業技能評価試験の概要
・試験管轄機関:一般社団法人大日本水産会
・試験内容:
漁業学科:漁業全般と安全衛生に係る知識、業務上必要となる日本語能力
漁業実技:図やイラスト等からの出題。
漁具・漁労設備の適切な取扱い方/漁獲物の選別
養殖業学科:養殖業全般と安全衛生に係る知識、業務上必要となる日本語能力
養殖業実技:図やイラスト等からの出題。
養殖水産動植物の育成管理/養殖生産物の適切な取扱い方
・試験方式:CBT方式 または、ペーパーテスト方式
・試験範囲:「漁業」と「養殖業」
・日本語能力の範囲:業務上必要となる日本語能力を測定する。
・受験対応言語:日本語
・受験資格:満17才以上
特定技能「漁業技能評価試験」の実施状況
一般社団法人大日本水産会が公表している試験実施状況によりますと、2020年1月~2022年3月までの受験合格率は、以下の数値となっています。
「漁業技能評価試験」は、日本国内と海外ではインドネシアにて試験が実施されています。