はじめに
難民ビザの外国人を雇用できるのか?という質問がよくあります。難民ビザの審査期間中は、一定の条件を満たしていれば、雇用は可能です。
ただし、雇用する前には、日本の難民認定制度について知ってから採用することをおすすめいたします。
難民問題は、現状に対してさまざまな課題がありますので、難民と言われる方々を雇用する際は、その旨、配慮のある対応が必要となるでしょう。
本記事では、「難民ビザ」の概要と、雇用する際の留意点について解説していきます。
難民ビザとは?
難民とは、紛争や人権侵害などから、自分の命を守るために、やむを得ず母国を追われて逃げざるを得ない人たちのことです。
難民と言われる人たちが、母国から逃れて日本で在留許可を得るために申請することを難民認定申請といい、「難民ビザ」とは、この難民認定申請の期間中に外国人が置かれている状況を示します。「難民ビザ」は、正式な在留資格の名称ではなく、難民申請が認定されると、在留資格「定住者」が付与されます。
難民認定申請の審査中は、申請結果が出るまでの待機期間に、在留資格「特定活動」を取得して日本に滞在することができます。
難民申請中の間は、数か月~数年かかることもあるため、この待機期間中は「特定活動」を活用して日本で働くこともできます。
難民認定申請の現状について
日本の難民認定率は低く、他国と比較しても、難民認定に厳しい国であると言われています。
※出入国在留管理庁の報告(令和3年)
- 難民認定申請者数:2413人
- 審査請求数:4046人
- 難民認定者数:74人
- 人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人:580人
難民申請が厳しい理由
もともと「難民ビザ」の目的は、母国の紛争などから逃れてきた外国人を難民として日本が受け入れるということです。
しかし現状では、難民以外の外国人が、日本で就労する目的で難民申請をするケースが多発しているため、入管審査が厳格化している状況が続いています。
難民ビザの申請中には、申請から6か月が経過した外国人に「特定活動」の在留資格が許可され、就労も可能となっているため、この制度を利用して日本で滞在したいと考える難民ではない外国人が増えています。
ただし、「難民ビザ」は厳しい審査のもとで行われるため、難民申請をしても結果として認定許可が得られず、退去強制で母国へ返される外国人がほとんどです。
難民認定の課題について
難民申請認定では、さまざまな課題があがっています。いくつか紹介していきましょう。
- 難民認定の審査では、ほとんどの申請者が不許可となる現状があるため、不許可となった外国人が送還された場合、いまだに母国で危険な状況が続いている人もいます。
- 母国から逃れて来ても、上陸を拒否されたり、オーバーステイである場合は、入国管理局の施設に送還され収容されている外国人も多く、長引く収容期間のため、カウセリングが必要な状況になっています。
- 難民認定中は、慣れない日本での生活で様々な問題もあり、行政サービスとして、生活や医療、教育の相談などが行われています。
- 難民認定が不許可となって、結果に対して不服である場合には、「再審の申し立て」が認められていいますが、この再審が繰り返されることで、難民申請が長期化する問題があります
- 難民ビザでは特定活動が取得できても就労不可となった場合には、収容施設へ送られるようになります。収容施設での生活は、支援機関からのサポートで成り立っているため長期化すると収容施設に滞在中でかかる医療費や生活費の問題があります。
難民ビザで就労する
難民ビザの申請中は、審査期間が長引く人もいるため、日本で在留できるための特別な措置として在留資格「特定活動」が取得できます。申請期間中に経済的な負担がかからないように就労することも可能となっています。
難民申請中の「特定活動」
難民申請中に取得できる在留資格「特定活動」では、基本的には「特定活動(6か月・就労可)」の条件で、日本に在留が認められます。
難民ビザの注意点
難民申請中に、もし、特定活動の許可がないまま働いた場合は、違法となり、外国人本人は不法就労として退去強制の対象となり、外国人を雇用した者には、3年以下の懲役や300万円以下の罰金のペナルティが科せられます。
難民認定後は?
難民認定が許可された外国人は、「定住者」の在留資格が取得できます。「定住者」は、【身分系在留資格】になるため、就労活動の制限はなくなります。原則として日本人と同じように職業を選んだり働くことができるようになります。
したがって、難民ビザの申請中に「特定活動」で日本で働いていて、難民認定許可が取得できると、在留資格「定住者」で日本で働きながら継続して生活することも可能となります。
難民認定後に得られること
難民認定制度により難民認定を許可された外国人は、3つの権利を得ることができるようになります。
永住権が取得しやすくなる
在留資格「永住者」の取得要件が一部緩和されます。
取得条件の中の「独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること」が免除されます。
難民旅行証明書が交付される
難民の認定を受けた外国人が、「難民旅行証明書」の交付されることで、日本を出入国することが可能となります。「難民旅行証明書」に記載されている有効期間内であれば、何度でも出入国することができます。
難民条約に定める権利を得る
難民条約により、自国民や一般外国人と同じ待遇が与えられます。
難民認定の申請方法
難民ビザで申請を行う場合は、申請窓口は、申請者の住所または管轄する地方出入国在留管理局あてに手続きを始めます。
申請できるのは、外国人本人で、申請者が16歳未満である場合、または病気により本人が提出できないときは親族が代理申請できます。
申請の流れは、まず、第一次審査があります。難民認定申請書の審査期間が、2か月以内に行われます。
次に、難民認定審査「許可/不許可」が決まり、許可の場合は、在留資格「定住者」が付与されます。
不認定の場合は、不認定通知を受けてから7日以内に「異議申し立て」をすることができます。また、不認定であっても、【人道上の配慮が必要と判断された場合】は「特別在留許可」が取得できるケースもあります。
申請に必要な提出書類
難民申請には以下の書類を準備します。
- 難民認定申請書
- 3か月以内に撮影された写真4×3
- 申請者が難民である証明資料
- パスポート(または在留資格証明書)
- 在留カード
- 仮上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可、一時庇護のための上陸許可を受けている外国人はその許可書
- 仮放免許可書(仮放免中の外国人の場合)
まとめ
母国から逃れてきた外国人が、難民認定許可を得てから在留資格「定住者」が付与されるまでは、並大抵ではない状況や様々な問題があります。
この難民審査中には就労できる「特定活動」を活用して日本で働くことができますが、この仕組みを利用した難民ではない人の申請数が増えている現状があります。
難民ビザで働くことができることを逆手に取って難民申請をする外国人を抑止するために、日本の難民申請が厳しくなっていることもあります。
難民ビザで外国人を雇用する際は、本記事で解説した内容を参考に、適切な判断で採用していくことをおすすめいたします。