外国人と税金
外国人を雇用したんですけど、税金や社会保険は対象になりますか?という質問を受けることがあります。
対象になります。正社員としてだけではなく短時間労働者でも、収入によって所得税・住民税も対象となることがあります。
各税金や社会保険、雇用保険、外国人特有の免税制度など詳しく見ていきましょう。
外国人と源泉所得税・扶養親族
基本は日本人と全く同じです。給与をもらって働くサラリーマンなどで、国外に扶養親族がいる場合、取り付けなくてはならない書類があります。
控除対象者 | 受けられる所得控除 | 必要な書類 |
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「お子さんが三人いらっしゃるようで、まとめて奥さんの口座に送金しているそうなんです。それは扶養控除として条件満たしますか?」残念ながらNOです。控除対象(16歳以上か障害者控除を受ける場合)は送金明細は控除対象者ごとに必要です。
なお、外国人が留学生で所定の教育機関に所属している場合は「勤労学生控除」の対象になることもあるので、年末調整の際には確認をしてあげてください。
文部科学省に認可を受けている学校法人や大学の学生であれば対象で、バイトの収入だけで年間130万円以下であれば所得税は非課税です。
所得税の計算例(令和2年から)
130万円ー55万円(給与所得控除)ー48万円(基礎控除)ー27万円(勤労学生控除)=0円
勤労学生とは:国税庁HP「勤労学生」
所定の教育機関とは:学校教育法
外国人と住民税
外国人も所得によっては住民税の対象となります。雇用する際に注意をするべきは就労時間に制限がある在留資格(留学や家族滞在など)がある方を雇用し、特別徴収を行うこととなり課税額が賦課決定通知を受けた場合に、自社で雇用している以上の収入があるような場合には、本人にダブルワークの可能性がないか、時間が超過していないかヒアリングすることをお勧めいたします。
外国人と租税条約
二国間租税条約で、所得税や住民税が免除されている場合があります。ここでは日本国内の企業などで外国人を雇い入れるという観点から免税かどうかを議論していきたいと思います。なかなか複雑ですが、働く外国人にとって有利になるような制度になるかと思うので押さえておきたいものです。
租税条約で税金が免除される国籍と在留資格 | 所得税 | 住民税 | 根拠条約/備考 | |
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中国 | 留 学 | 免税 | 免税 | 日中租税条約第21条/留学生が学校教育法第1条に規定する所属する場合、生計のための所得にかかる所得税・住民税を免除。 |
技能実習 | 免税 | 免税 | 日中租税条約第21条/技能実習生が技能の訓練等による所得については所得税・住民税を免除。 | |
ベトナム | 留 学 | 課税 | 課税 | 日越租税条約第20条 |
技能実習 | 課税 | 課税 | 日越租税条約第20条 | |
フィリピン | 留 学 | 年間1500USDを超えないものは免税*1 | 課税 | 日比租税条約第21条/留学生が学校教育法第1条に規定する所属する場合、生計のための所得にかかる所得税が免税。 |
技能実習 | 年間1500USDを超えないものは免税*1 | 課税 | 日比租税条約第21条 | |
インド | 留 学 | 課税 | 課税 | 日印租税条約第20条 |
技能実習 | 課税 | 課税 | 日印租税条約第20条 | |
インドネシア | 留 学 | 年間60万円を超えないものかつ、入国から5年以内のみ免税。*1 | 課税 | 日尼租税条約第21条/留学生が学校教育法第1条に規定する所属する場合、生計のための所得にかかる所得税が免税。 |
技能実習 | 年間60万円を超えないものかつ、入国から5年以内のみ免税。*1 | 課税 | 日尼租税条約第21条 | |
タイ | 留 学 | 入国から5年以内のみ免税。 | 課税 | 日泰租税条約代19条/留学生が学校教育法第1条に規定する所属する場合、生計のための所得にかかる所得税が免税。 |
技能実習 | 入国から5年以内のみ免税。 | 課税 | 日泰租税条約代19条 | |
スリランカ | 留 学 | 年間36万円を超えないものは免税。*1 | 課税 | 日正租税条約第14条/留学生が学校教育法第1条に規定する所属する場合、生計のための所得にかかる所得税が免税。 |
技能実習 | 年間36万円を超えないものは免税。*1 | 課税 | 日正租税条約第14条 |
*1 超えない「もの」は「者」と考えてよいかと思います。つまり、年間1人毎で計算するということになります。(英語原文 income from his personal service…during any calendar year)ただし、最大60万円は、そもそも給与所得としては課税所得がゼロになることに加え、技能実習生はフルタイムで働くことが想定されているため実質的にあまり該当する方が出なさそうですね。
外国人と社会保険
外国人も日本人と同じように、同じ条件で社会保険の加入対象になります。下記の学校に所属する学生は免除となります。
国民年金も20歳を超えて日本に住所があれば(半年以上居住していると理解していいかと思います)、学生でも納付義務があること、また日本人の学生と同じように、学生納付特例制度と言って免除申請をすることも可能です。
フルタイムで働いている外国人が退職したあと、厚生年金はどうなるのか。脱退一時金と言って加入していた期間により戻ってくる金額が異なります。
ざっくりいうと、加入していた期間が6ヶ月以上37ヶ月以上で最小43,230円、最大280,620円となります。
対象者
- 第1号被保険者(任意加入被保険者も含む)期間が6か月以上であること
- 日本国籍を有しないこと
- 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていないこと
- 国民年金の被保険者でないこと
以下の方達は脱退一時金支給要件から外れます。
- 国民年金の被保険者
- 日本国内に住所があるとき
- 障害基礎年金などの年金を受けた場合
- 国民年金の対象を外れた日から2年以上経っている場合(日本から出国等し住所を持たなくなった日から2年以上を経過した日)要は日本を離れて2年を経過してしまうと請求権がなくなるということですね。
外国人と労働保険
外国人も日本人と同様、労働保険、労災保険と雇用保険の対象です。学生(学校教育法に定める教育機関に所属する者)は雇用保険は対象外です。就業時間によって加入対象となるか否かが変わります。労災保険は常に対象と考えて間違いないでしょう。さて、実務として失業保険は支給できるのかについて議論していきたいと思います。
フルタイムで働いていた技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)の外国人が、自己都合で退職した場合です。
3ヶ月の待機期間を経て失業保険を受給できるのかといえば、かなり難しいとしかいえないと考えます。理由は、技術・人文知識・国際業務(技人国ビザ)は就労することがすなわち日本に在留する理由となり、3ヶ月もの間働いた実績が無いとなると母国に帰りなさいというのが入管法上の見立てです。(あくまで技人国ビザのままでいた場合ということになります)
いかがでしたでしょうか。外国人を雇用するにあたり、税金、社会保険、労働保険など日本人と同じように管理していかなくてはならないことはお分かりいただけたのではないかと思います。当社では、外国人雇用に関する不安が少しでも和らぐよう、このコラムをご覧になっている皆さんに外国人雇用に関する資料をプレゼントしています。ぜひ、ダウンロードしてみてください。