運送業の現状
貨物運送業の年齢層と求人倍率について触れていきたいと思います。まずは年齢層について総務省が提示している労働力調査をグラフにまとめました。運送業では2019年時点で、40代以上の方達が主要な年齢層になっていて、2009年に比べこの10年で年齢層が高くなっていることがわかります。
一方、求人倍率は以下のようになっています。2010年はリーマンショックの影響を受けてか、自動車運転の職業の有効求人倍率も1を下回っていますが、一方2019年と2020年を比較した際、新型コロナの影響があるといえど人手が足りていないことが数値として明確に出ています。
全産業と運送業における有効求人倍率の推移(全国を対象) | |||||
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項目/年度 | 2000年 | 2010年 | 2019年 | 2020年 | |
全産業 | 1.03 | 0.56 | 1.53 | 1.03 | |
自動車運転の職業 | 1.54 | 0.99 | 3.39 | 2.19 |
この数値の推移を見ても、今後高齢化による人手不足が顕著になっていくことは容易に想像できます。
人手不足をどのように補っていくのか
運送業・トラック業界で働く女性は全産業の43%に比べたったの2.5%でしかありません。先にも述べた通り、29歳以下の若年層も10%を切る状態です。人手不足は若年層や女性の活躍で補うことができるのでしょうか。もしそうであれば運送業界に人材が流入してこない理由はどんなことにあるのか考えていきます。
拘束時間
運送業における拘束時間、つまり労働時間にフォーカスしていきます。平均して30時間ほど拘束時間が長いことがわかります。
全産業平均と運送業における労働時間の月間推移 | ||||
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項目/年度 | 2000年 | 2010年 | 2020年 | |
調査対象産業平均 | 151時間 | 146時間 | 138時間 | |
運輸業 | 181時間 | 179時間 | 164時間 |
賃 金
2019年時点において、年収ベースで運輸業は男性で289万円、女性で224万円、働き盛りと言われる30代〜40代の男性でも310万円、女性でも230万円程度となります。
他の産業と比較すると、全年齢平均で小売卸売は男性352万円、女性240万円、金融業は男性461万円、女性280万円、情報通信(IT)業は男性397万円、女性306万円となり、男女の賃金格差が大きいことや他の産業に比べて賃金が低いことがわかります。
産業間・男女間の賃金格差(年収ベース) | ||||
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性別/業種 | 運輸業 | 情報通信業 | 金融・保険業 | 卸売・小売業 |
男性 | 289万円 | 397万円 | 461万円 | 352万円 |
女性 | 224万円 | 306万円 | 280万円 | 242万円 |
ここまでの統計から見えるのは、女性や若年層を取り入れるには業界全体の効率化などによる賃金アップや女性の地位向上、働きやすい環境整備などが、対策として必要になるということが挙げられますが、如何せん日本国内の労働人口が減少することを踏まえれると、業界内の人材の取り合いが起きることは想像に硬くないのではないでしょうか。
外国人は人手不足のピンチヒッターになりうるか
では外国人は第三の選択肢としてあり得るのでしょうか。現在外国人労働者は300万人日本に在留しています。2020年6月時点でもっとも多いのが身分系と言われる、永住者、定住者、日本人の配偶者で約半数の150万人になります。身分系の在留資格を持つ方たちは一切の就労制限がありません。そして永住者の方達は平均10年以上日本に在留して初めて在留資格を許可されるため、日本の生活様式や日本語でのコミュニケーションに不便のない方達が多いのが特徴です。さらに、日本人と同じように日本の運転免許を保有している方も多く、普通自動車に限らず、中型免許から大型、大型特殊まで様々な免許を保有しているのが現状です。
外国人をドライバーとして積極的に活用しない手はないと考えられます。では、なにが活用の障壁になっているのでしょうか。運送業にとり、私たちがヒアリングして課題だと思われるものは「見た目」、「読み書き」、「荷主の反応」に分けられると感じています。残念ながら「見た目」や「荷主の反応」は悲しい事実ですが、食わず嫌いを、まずは取り入れ、社内で慣れていってもらう取り組みをして行ってはどうでしょうか。また、読み書きも漢字圏ではない外国人にとり、やはり敷居が高いことも挙げられます。もちろん伝票を読める方も多くいますが、現場での伝票などの書類を工夫するだけで変わってきそうですね。
私たちのお客様では、伝票やマニュアルなどの多言語化を進めています。また、日本人の同僚と変わらない待遇を取ることで仲間意識が育まれ、会社に対する忠誠心も高くなっているように思います。
運送業は特定技能外国人受け入れ分野の対象になるのか
最後に、特定技能外国人を運送業で取り入れられるかどうかについて触れていきす。2021年1月現在、特定技能外国人を受け入れられる分野は14業種となっていて、運送業は対象ではありません。
全日本トラック協会が2020年6月、自由民主党が主催する外国人労働者等特別委員会の業界ヒアリングで、技能実習2号対象職種に追加するように要望を出されています。さらに、2020年7月には自由民主党内でコンビニと運輸への特定技能外国人を追加することについて骨太方針策定に向け提言が行わる方針であると複数メディアが報道しました。
運輸業では1号はすでに技能実習生として現場で受け入れて作業をさせることができますが、とはいえ1年限りなのが現状です。人手不足を少しでも解消するために、技能実習生2号と特定技能で外国人の受け入れの幅が広がる可能性は大きいと言えます。