1. スキルポートフォリオと職務ヒストリーで「できること」を可視化する
永住者には在留制限がありません。
そのうえで、経歴やスキルは多種多様だといえるでしょう。
形式的な履歴書だけでは判断しづらい能力の把握は、以下のようにスキルポートフォリオを作成することが重要です。
カテゴリ | 内容 |
業務経験 | 職種名、担当作業、在籍期間、チーム規模 |
使用ツール・機器 | 操作可能な設備、ITツール、工場機械など |
言語能力 | 日本語レベル(JLPT N1〜N5)、ビジネス会話・読解力の有無 |
資格・免許 | フォークリフト、溶接、調理師、衛生管理者、玉掛け、大型免許、大型特殊免許、中型免許、(大型・普通)二種免許 |
ソフトスキル | コミュニケーション能力、協調性、責任感、報連相の習慣 |
評価・実績 | 表彰歴、成果指標(生産数、顧客満足度など) |
実施内容としては、以下のような方法が考えられます。
- 過去の担当業務や使用ツール、勤務年数、成果の有無をヒアリングし、一覧化する。この際、人数が多い場合はシステムで管理する方法もある
- 専門性・日本語レベル・管理経験・資格保有状況なども含めて評価
- デジタル管理により、複数人の比較や社内配属の検討に活用
配属ミスの予防や教育コストの最適化が可能になり、採用後のミスマッチや教育計画の最低帰化もしやすくなるでしょう。
また、どうしても過去の実績や職務経歴の長さに着目違いであるものの、どのように業務に取り組んできたのかも明確に把握し、記載することが重要です。
2. 相互メンタリングとクロスカルチャーセッションで関係構築を支援
単なる指導役ではなく、互いに学び合う「相互メンタリング制度」の導入は信頼関係の構築に効果的です。
たとえば、形式的な指導を超えて、価値観・文化・職場での気づきを共有し合う、業務外でも相談ができる関係性を築ければ、相互に成長が期待できるといえるでしょう。
導入事例は以下のとおりです。
- 永住者が母国の働き方や文化を紹介、日本人社員が日本の業務文化を解説
- 月1回のクロスカルチャーセッション(雑談+振り返りの場)を設定
- メンターは職場で最も距離の近い社員が理想的
永住者の「職場に必要とされている」という意識を育てたうえで、定着意欲を高めることに加え、職場全体の多文化理解を深める効果にも期待できるでしょう。
以下のような実践方法であれば、導入しやすいといえます。
- 永住者に関係性の高い社員を候補としてペアを決める
- 月1回など定期的な交流やフィードバックを行う
- 仕事だけでなく文化を学び合う交流会を実施する
人事評価として、メンターだけでなく、同僚や上司も含めることで社内全体で永住者の定着率を高めることにもつながります。
3. キャリアパスの提示と成長支援で長期雇用を実現
永住者は子供がいたり、持ち家を所有していたりするケースも多く、在留資格の中でも日本での生活基盤が確立しているといえるでしょう。
そのため、「長く働きたい」という意欲を持っており、企業としても「長期的な雇用」を前提とした人材育成を計画しやすい状況にあります。
永住者に対しては、明確なキャリアパスの提示とスキル向上支援がモチベーションと定着の両面に効果的です。
具体的な支援例は以下のようなものがあります。
- 3年・5年後の職種・役職の目標像を可視化(キャリアマップの作成)
- 社内資格制度や外部講座受講支援、語学支援(N1~N2の取得支援など)
- 半年に1回のキャリア面談で進捗確認とフォローアップ
企業が個別に成長に向き合うことで、永住者は「ここでキャリアを築ける」という実感を持ちやすくなります。
4. エンゲージメントチェックと心理的安全性の確保
永住者は、在留資格の中でも日本語によるコミュニケーションに苦労する機会は少ないといえるでしょう。
しかし、業務の対応として「表面上は問題なさそう」であっても、言いづらさや孤独感を抱えているケースがあります。
企業は、定着支援として、心理的なサポートの仕組みも構築することが重要です。
おすすめ施策:
- 月1回の匿名アンケートで困りごと・満足度をヒアリング多言語対応で、職場の人と気軽に話せているかどうかなどを質問する
- スコアが低い場合は人事またはメンターが個別面談を実施アンケートでは拾いきれない悩みを拾い解決する
早期に対処できれば、本人の信頼獲得につながり、離職リスクの低下にもつながるでしょう。
ただし、フィードバックの伝え方やアンケート方法としてストレスを軽減できる方法には工夫が必要です。
5. 専門用語を含めた業務マニュアルの多言語化・図解化
永住者は日常会話レベルの日本語が堪能だといえるでしょう。
しかし、業務に特化した専門用語や社内ルールには不慣れなケースも少なくありません。
そのため、多言語対応したマニュアルの準備や図・動画の作成などといった工夫も必要です。
たとえば、以下のような取組みは効果的だといえるでしょう。
- 図や写真を多用したビジュアルマニュアルの整備言葉やOJTのみでは伝わりづらいケースを想定し、正しい手順をマニュアルに記載する。また、分かりやすい表記に統一する
- 一部多言語表記(特に注意事項・安全管理項目)を追加製造業や建設業では、手順の違いが事故や命に関わるケースもある。そのため、永住者の母国語に合わせた説明と用語に変換することも大事
- 動画教材を共有し、スマホ等での自主学習を可能にする
教育担当者の負担を軽減しつつ、永住者の「分からないけど聞きにくい」を回避しましょう。
ただし、マニュアルは配るだけでなく、研修として必ず実施するといった取組みが大切です。
内容に変化があった場合には、日本人も含めて伝わりやすい形式を模索していくことを意識しましょう。
より詳しい外国人材の採用成功事例と失敗事例についてはこちらの記事も参照。
まとめ:
永住者は、採用手続きが日本人と同様で就労制限がなく、長期雇用に向いた外国人材だといえます。しかし、能力や適応力には個人差があるため、スキルの把握やキャリア支援といった企業内の仕組み作りが必須です。LTBでは、玉掛けやクレーン、大型免許を持ってダンプを運転している永住者や定住者、日本人の配偶者、帰化した外国人(日本国籍)が毎月100名ほどお仕事を探すために登録をしてくれています。技能実習生に限らず、外国人労働者の採用幅を広げてみませんか?