はじめに
少子高齢化による人手不足が問題となる中、外国人求職者と外国人を雇用したい会社とのマッチングの仕組み作りが、外国人採用活動の重要なポイントとなっています。
人材不足により外国人雇用を推進している会社では、外国人社員を採用しても継続できず離職してしまうケースが課題となっています。
定着した雇用を継続するためには、雇用する側の条件の他に、外国人求職者の事情や、外国人が会社や仕事に求めることは何なのか?知っておく必要があります。
本記事では、外国人を採用する前に心得ておきたいポイントについて解説いたします。
文化や習慣の異なる外国人が求める日本の会社とは何なのか?魅力的な会社であるためのヒントになる内容となります。
外国人求職者が日本を選ぶ理由
まずは、外国人求職者が、なぜ日本の会社に就職したいのか?理由をいくつかあげていきましょう。
就労国として日本を選ぶ外国人に、離職せずに働き続けてもらうためには、日本を選ぶ動機について知っておく必要があるでしょう。
日本は治安が良い
世界で最も安全な国をランキングする世界平和度指数( Global Peace Index )では、日本は、上位10位以内に入っており治安の良い国としての認知度が高い傾向です。
平和度の評価基準は、国内紛争、治安悪化、軍事力強化など平和維持への不安要素の測定値によります。
日本は他国と比較しても不安要素が低い数値となっており、外国人から見る日本は、安全な国としての印象が高くなっています。
例えば、夜道を一人出歩けることや、電車内や繁華街では危険性が低いなどは、犯罪が日常化している国の外国人から見ると日本は安心して暮らせる魅力があります。
自分の国で働くより給与が高い
自分の国では求人が少なく就職しても給与が安いため、労働条件の良い日本の会社を目指す傾向があります。
「日本の最低賃金」は先進国の中では低く、アジア圏の中では一番高い傾向にあります。
厚生労働省公表の「外国人雇用状況の届出」による外国人労働者 国別ランキングでは、中国、ベトナム、フィリピン、ブラジル、ネパールと続き、アジア圏からの就労者が上位を占めています。
おもにアジア諸国の外国人は、自国では高い給与が見込めないため、家族や親せきの期待を背負って日本で働き、海外送金が目的となっている場合が大半です。
なお、高い給与を期待して来日する外国人の金銭感覚については、日本人とは全く異なるため、正式に採用する場合は、採用する外国人の母国の事情などについて詳しく理解しておくとトラブル防止に役立つでしょう。
教育・研修制度がある
就労先で日本語教育や社内研修が受けられることは、外国人にとってメリットのひとつです。日本へ就労する条件は、日本語能力試験の合格がありますが、各業界の現場で即戦力として働き続けるためには、採用後も研修や教育が継続されることが理想的です。
慣れない日本での生活と仕事の両立を実践するためには、会社が指導できる教育や研修サポートは、外国人社員にとって有意義な制度となります。
日本の文化が好き
純粋に日本が好きという理由で日本を選ぶ外国人もいます。日本の文化に興味を持ち、日本への憧れや期待が、日本就労への動機づけとなる場合もあります。
外国人が興味を持つ日本文化の中でも、古来からの伝統文化の他に、アニメ、マンガ、ゲームなど、日本のサブカルチャーが人気のあるジャンルとなっています。
日本文化への興味が、日本で働き続けるモチベーション向上に役立つこともあります。
日本文化への興味について、外国人社員と日本人社員が共有できる環境があるとコミュニケーションがしやすくなるでしょう。
外国人求職者が日本の会社に求めること
外国人求職者が日本を就労国として決める動機が、良い結果に繋がるように、外国人社員が働きやすい職場環境づくりが大切です。
では、次に、外国人求職者が、日本の会社や仕事に求めることについて解説していきます。
希望の給与額が得られること
外国人にとって、日本の給与が高いことは最大の魅力です。
日本を就労国として選ぶ外国人は、自国の給与では満足できないため、高い給与を得るために来日しています。ただし、理想と現実がズレてしまうと離職へ繋がるケースとなってしまいます。
外国人社員の離職が多い職場では、外国人社員と日本人社員で給与に差があることや、労働条件と給与が見合わないこと、また、所得税や社会保険料などの控除額が給与から差し引かれていることなど、それぞれの状況について理解できずにトラブルとなることがあります。
高い給与への期待から低給与への不満に繋がらないためにも、会社の適切な説明に対して外国人社員の理解力が必要です。
福利厚生の充実
福利厚生は、社員のやる気や能率の向上のために会社が導入する雇用のシステムです。外国人社員にとっても同様に、働くモチベーション維持のために必要となる仕組みです。
福利厚生には、基本的な給与の他に、ボーナスや住宅手当、交通費、育児支援、保養施設の利用などの他にも、オリジナルの制度を取り入れている会社もあります。
外国人雇用をする会社では、外国人社員が仕事に集中できる環境づくりのために、生活に役立つ福利厚生があると良いでしょう。
適切な労働時間
外国人社員は、日本人と同様に「労働基準法」に基づいた時間内で働くことが求められています。原則として、1日に8時間/1週間に40時間を超えて労働は不可/労働時間が6時間を超える場合は45分以上/8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与える/などの法律に守られた労働時間があります。
外国人社員だから…という理由で、決められた労働時間以外で働かせたり、不適切な労働条件で働かせたケースが過去に発生しています。不当な労働条件による働き方は、外国人が日本を就労国として選ばなくなる要因となるため、改めて労働環境を見直すことが必要です。
企業文化の理解
日本の企業文化は独特であるため、外国人社員が理解をするためには、時間をかけて繰り返し学んでもらうことが必要です。
外国人が理解しにくい日本の企業文化には、自分の時間より仕事を優先するというスタイルがあります。外国人の場合、家族の時間や自分の時間を優先して、時間外の仕事は次の日に持ち越すことが大半です。
ライフスタイルの違いが仕事への向き合い方にも影響し、仕事優先の日本の企業文化や、周りに同調して行動しなくてはならない日本人の特徴が、外国人社員が働きにくくなる要因にもなっています。
外国人社員が理解しにくい日本の企業文化の特徴は、残業、時間厳守、年功序列などがあります。これらの企業文化に関しては、外国人社員が仕事に集中できるために改善することも必要です。
言葉の壁がない職場
外国人社員とのコミュニケーションがうまく行かず、仕事がはかどらないことや、業務内容が伝わらないためにストレスが溜まることもあります。
言葉の壁のストレスは、雇用する側だけではなく外国人社員にとっても同じです。
解決策としては、外国人社員のための日本語研修や日本人社員への英語研修または外国人の母国語研修など、外国人社員と日本人社員がお互いに共有できる言葉の数を増やしていくことが必要です。
また、採用後の言葉の壁のストレスを減らすためには、採用前の面接で、外国人の語学能力がどのくらい実践で役立ちそうか判断しておくと良いでしょう。
まとめ
外国人求職者が、日本の会社や仕事に求める内容について解説しました。
外国人が日本を就労国として選ぶ理由には、さまざまな動機から日本という国に魅力を感じていることがあります。
魅力のある日本を選んだ外国人に対して、外国人を雇用したい会社ができることは、外国人が期待していることを、どのような体制で受け入れることが可能か考えていくことが必要となるでしょう。