特定技能と永住者では企業対応が異なる
在留資格による「法的制限」と「就労条件」の違いは以下のとおりです。
- 永住者は就労制限が一切なく、日本人と同様の働き方ができる。職種や業務内容を問わず採用が可能で、長期雇用にも対応しやすい
- 特定技能(1号)は「業種と職種が限定」されており、運送業であれば一定の技能試験・日本語試験に合格したうえで初めて働けるというもの。在留期限があるため、継続雇用のためには定期的な更新や「特定技能2号」への移行準備も必要
採用可能な業務範囲の違いと企業が注意すべき点
「永住者」は、法律上の就労制限が一切なく、日本人と同じ立場で運送業では以下のような職種にも就くことが可能です。
- 大型・中型トラックドライバー
- 配送補助(助手席、荷物の積み下ろし)
- 倉庫内作業(仕分け、梱包、在庫管理)
- 配車・運行管理者
- 事務(受付、経理)
- 営業(法人営業、顧客対応)
- チームリーダー、管理職
企業としては「業務範囲を気にせず柔軟な人材配置」ができるため、マルチタスク人材としての育成も容易だといえるでしょう。
キャリアパス設計も自由度が高く、将来を見越したジョブローテーションも可能です。
対して、「特定技能」1号は、出入国在留管理庁が明確に定める「対象職種」でのみ就労可能です。運送業においては、主に以下の範囲に限定される点は知っておきましょう。
- 自動車運送のドライバー(普通免許保有が前提)
- 荷物の積み降ろし(直接運送に関係する作業)
- 配送前の車両点検
- 簡易な整備・日常的な清掃作業
業務の逸脱があれば資格外活動となり、不法就労となるリスクがあります。
たとえば、「ドライバーに倉庫業務も任せたい」といった場合、「永住者」であれば問題ないものの、「特定技能」では違反になる可能性があるといえるでしょう。
在留資格更新と長期雇用計画の違い
永住者は「永住する資格」を持つため、在留期限がなく、更新手続きも必要ありません。
そのため、企業側にとって以下のようなメリットがあります。
- 一度採用すれば、更新スケジュールの確認や管理が不要
- 長期雇用を前提とした育成・教育投資がしやすい
- 結婚・住宅購入など生活基盤を日本に置いているケースが多く、転職や離職リスクが低い
企業の人材戦略において「定着率の高い中核人材」として位置付けやすく、キャリアアップ制度やマネージャー職の登用計画にも組み込みやすい点が特徴です。
対して、特定技能1号は在留期間が決まっています。
原則として1年・6ヶ月・4ヶ月のいずれかで設定され、最長5年までとなっています。期間中は、本人が在留資格更新を希望する場合、企業側は以下の書類を揃えたうえでの申請支援が必要です。
- 就労継続に関する評価資料(勤怠やスキル評価)
- 雇用契約書(最新のもの)
- 特定技能所属機関の変更がないことの確認書類
- 登録支援計画の更新内容
- 地域との共生施策に合わせた人材の活用計画の提出
また、5年を超えて働かせたい場合は、特定技能2号への移行が必要です。
職種別の試験に合格し、かつ業務経験年数などの条件を満たさなければなりません。企業は事前に以下のような支援体制を整える必要があります。
- どの職種で2号取得を目指すかを明確化する
- 試験対策・学習時間の確保
- 実務経験の証明書作成
在留資格の更新漏れ・条件違反があると、企業側にも受入れ停止や罰則のリスクがあるため、人事や総務部門には専門知識と綿密なスケジュール管理が求められます。
運送業における永住者と特定技能の採用と初期コストの違い
「永住者」を運送業に採用する場合は、基本的に日本人と同様の雇用プロセスで対応可能です。
以下のような標準的な採用フローで完結するため、法的な制限や特別な支援義務もありません。
- 履歴書の提出
- 面接
- 雇用契約
たとえば、配送助手や倉庫作業員としての採用も問題なく、普通免許や中型免許を保有していれば、軽貨物配送や中型トラックのドライバーとして即戦力になり得ます。
対して、「特定技能」を活用して外国人を採用する場合は、採用前から複雑な準備が求められます。
まず、技能試験・日本語試験に合格していることが前提となり、そのうえで「登録支援機関」と連携するか、自社で「支援計画書」を作成して届け出なければなりません。
また、支援内容は、以下のような幅広い項目が必要です。
- 日本での住居確保支援
- 携帯電話・銀行口座の開設同行
- 生活オリエンテーションの実施(交通ルールやゴミ出しのルールなど)
- 苦情相談窓口の設置
- 日常生活や社会保険に関する説明
地方の運送会社にとっては、住環境や生活支援の整備がネックになるケースも多く、初期コスト・人的リソースともに無視できない負担となります。
運送業における永住者と特定技能の教育・育成体制の違い
「永住者」は、すでに日本で数年〜数十年暮らしている場合が多く、日本語での業務指示や日常会話に問題がないケースがほとんどです。
そのため、就業開始後は、荷物の取り扱いや配送ルートの研修など、業務に直結する実務教育に集中できるため、育成コストが最小限に抑えられます。
また、永住者の中には日本の運転免許をすでに保有している人も多く、軽貨物配送などで即戦力として活躍してもらうことも可能です。
都市部でのラストワンマイル配送や高齢化が進む地域での宅配便ニーズにも柔軟に対応できるでしょう。
対照的に、「特定技能」の外国人は、業務開始前後に多面的な教育が必要です。
日本語能力がN4〜N3程度であることが多く、交通標識の理解、安全確認の指差し呼称など、運転業務特有のリスク管理教育も必要です。
加えて、運転免許を持っていない場合は、取得までの期間や学費を企業側が負担するケースもあり、最短でも数ヶ月〜半年以上の準備が必要です。
そのため、特定技能から運送業の人材採用を考える場合は「長期的な育成前提」であり、企業が教育体制とキャリアプランを明確に設計することが大切だといえるでしょう。
まとめ
運送業で外国人材を活用する場合、永住者と特定技能では、企業が行うべき対応が大きく異なります。
短期的に即戦力がほしいなら永住者、長期的に人材を育てていくなら特定技能といった形式で、企業の目的に応じて適切な選択をすることが重要です。
よくわからず不安といわれる外国人労働者の確保を、10年以上外国人の採用支援をしてきたLTBが、格安の完全採用成功報酬型で外国人採用をサポートいたします!ぜひお問合せください。