はじめに
少子高齢化に伴い2030年に向けてさまざまな問題が表面化してくると言われています。私たちの暮らしや働き方に大きく影響してくる2030年問題では、日本の労働人口減少により、雇用においても新しい人材確保の手法を考えることが求められています。
本記事では、2030年問題に向けた企業が取り組むべき方向性として、外国人雇用の導入について解説していきます。
2030年問題とは
2030年に向けて人口減少・少子高齢化・年金制度などが、更に深刻化する社会問題が予測されています。
日本の人口の1/3が65歳以上となる2030年には超高齢化社会に伴い、医療や社会保障、雇用などにさまざまな問題が発生すると言われています。
2030年問題の前提には、第1次ベビーブームの時期に生まれた団塊の世代が75歳以上となり、高齢者の増加率がピークとなる2025年問題があります。
2030年の日本の労働人口
国立社会保障・人口問題研究所による将来推計では、日本の総人口は2030年に1億1,662万人、2060年には8,674万人にまで減少すると見込まれています。
また、生産年齢人口は2030年には6,773万人、2060年には4,418万人にまで減少すると見込まれています。
少子高齢化に伴う労働人口の減少は、長期的な経済成長に影響する可能性があるため、その解消策として労働人口増やす方法、またはAI導入で業務自動化を図るなどの経済活動が必要となっています。
労働人口減少による人手不足
働き方改革としてDX推進の取り組みと並行して、労働人口の減少による人手不足の解消策として、女性、シニア、外国人の雇用を増やす取り組みが進められています。
女性の労働人口を増やす取り組みとしては、育児サービスの充実があげられます。働く女性と育児の問題は、日本の労働者人口の増加に係わる課題となっています。
シニアの労働者人口を増やす取り組みとしては、シニアの人が年齢に応じた働きやすい職場づくりや労働環境を整備することがあげられています。
一方、外国人の労働人口を増やす取り組みとしては、日本政府が推進する外国人労働者受け入れのための在留資格の創設があげられます。
具体的には、人手不足の産業14分野に対して、在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」を活用した外国人労働者の受け入れが2019年よりスタートしています。
日本政府の目指す労働人口を増やす取り組みでは、外国人労働者受け入れにより2025年までに50万人超の入国者が見込まれています。
この外国人労働者の増加ぺースで受け入れ体制が継続可能となった場合、2030年までに2017年よりも外国人労働者が81万人増えると予測されています。(パーソナル研究所による予測)
2030年問題に向けて企業ができること
労働人口を増やす取り組みとして、外国人労働者の雇用について解説いたします。全国の有効求人倍率を踏まえて、企業が備えるべきことについて考えて行きましょう。
●全国の有効求人倍率の動向
厚生労働省が公表する令和4年2月の有効求人倍率によりますと、新規求人倍率(季節調整値)は1.21倍となり、前月を0.01ポイント上昇しています。
正社員有効求人倍率(季節調整値)は0.93倍となり、前月を0.02ポイント上昇となっています。
宿泊業、飲食サービス業(28.4%増)、製造業(27.6%増)、情報通信業(18.1%増)、教育,学習支援業(0.6%減)となっています。
都道府県別の有効求人倍率(季節調整値)では、就業地別では、最高は福井県の2.07倍、最低は沖縄県の0.86倍となっています。
厚生労働省の見解は、新型コロナウィルス感染拡大の影響や原材料価格の高騰により、先行きは見通しは不透明であると公表されています。
人材不足の企業においては、日本人社員以外で求職者の母数が多い外国人労働者に焦点を合わせる傾向が見られます。
●外国人労働者の受け入れ状況
厚生労働省が公表する「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2021年10月末現在)による数値となります。
外国人労働者数
1,727,221 人。前年比で 2,893 人増加し、2007年に届出が義務化されて以降、最高を更新しています。対前年増加率は 0.2%と、前年の 4.0%から 3.8ポイントの減少となり、コロナ禍の影響が外国人労働者の雇用や出入国状況に反映していると言われています。
外国人を雇用する事業所数
285,080 か所。前年比で17,837 か所増加し、届出の義務化以降、最高を更新しています。対前年増加率は 6.7% と、前年の 10.2%から 3.5 ポイントの減少となってます。
国籍別在留人数
- 位:ベトナム453,344 人 (外国人労働者数全体の26.2%)
- 位:中国 397,084 人 (外国人労働者数全体の23.0%)
- 位:フィリピン 191,083 人 (外国人労働者数全体の11.1%)
在留資格別人数
・「特定活動」 65,928 人 で、前年比 20,363 人 (44.7%) 増加。
・「専門的・技術的分野」 394,509 人で、前年比 34,989 人(9.7%)増加。
・「身分に基づく在留資格」が580,328 人 前年比 33,859 人 (6.2% ) 増加。
・「技能実習」351,788 人 前年比 50,568 人(12.6%) 減少。
・「資格外活動」の「留学」267,594人 で、前年比 38,963 人 (12.7%)の減少。
●外国人労働者を増やす取り組み
労働人口を増やす取り組みとして、外国人労働者の受け入れが注目されています。人手不足の産業では積極的に海外からの求職者に募集をかけて、日本政府が新しく創設した在留資格を活用することが可能となっています。
特に人手不足が深刻となる14業種の仕事で、外国人労働者向けの採用プログラムが各企業の人材確保の戦略として主な動向となっています。
●外国人労働者受け入れの在留資格
人手不足の解消策となる在留資格は、最長5年間の在留期間が設けられた「特定技能1号」と特定技能1号修了者が移行できる「特定技能2号」があります。
特定技能1号では、採用前の条件として日本語能力試験と14業種別の技能評価試験の合格証明書が必要であるため、求人条件として一定のスキルを取得した即戦力となる外国人労働者の確保が可能となっています。
また、外国人労働者の雇用を希望する企業のサポート的役割として、登録支援機関の利用もできるため、海外からの採用に慣れていない企業でも、雇用活動ができる仕組みができています。
外国人労働者雇用のメリットとデメリット
外国人労働者の受け入れは、さまざまな雇用メリットがあります。
- 労働力不足の解消につながる
- 社内環境が活性化する
- 新しい価値観が社風として生まれる
- 海外進出への足がかりとなる
- 若い人材が確保できる
一方、外国人雇用において気をつけたい点デメリットについても考えておくことが必要です。
- 文化、習慣の違いから生じるコミュケーション不足
- 雇用までの手続きが多く時間を要する
- 外国人に対応できる雇用管理体制が必要
- 労働基準法以外に入国管理法について理解が必要
まとめ
2030年問題に伴い、労働者不足から生じるさまざまな問題回避策として、外国人労働者の雇用について説明いたしました。2030年には日本の総人口が1億1,662万人、2060年には8,674万人にまで減少すると見込まれ、労働者確保のために外国人雇用の活動が盛んになってきています。
外国人労働者の雇用では、すでに人手不足が深刻化する産業分野に対して、新しい在留資格「特定技能1号」「特定技能2号」を活用した受け入れが始まっています。
特に人材確保が厳しい介護業界、建設業界では、現場での業務に対応できる外国人の活躍の場が拡大してきています。
外国人労働者の雇用では、メリットとデメリットを踏まえて、長期的な雇用計画として検討することが、将来の人材確保に繋がる活動だと期待されています。