はじめに
日本の水際対策は2022年10月11日より、入国制限が大幅に緩和され、段階的に通常モードに戻ってきている傾向です。
本記事では、2022年の年末より徐々に回復傾向にある日本のインバウンド市場の変化と、日本に働きに来る外国人労働者の動向とについて解説していきます。
入国緩和後の状況
外務省が公表している10月11日より緩和されている水際対策について、現在の状況をまとめておきましょう。
①外国人の新規入国制限の見直し
外国人の新規入国について、日本国内に所在する受入責任者による入国者健康確認システム(ERFS)における申請は不要です。外国人観光客の入国について、パッケージツアーに限定する措置は解除となっています。
②査証免除措置の適用再開
査証免除措置の適用が再開されます。
ビザ査証の緩和
- 令和3年12月2日より前に発給されたビザの効力を一時停止していましたが、令和4年10月11日より効力の停止が解除されています。
- 水際対策により一時的に停止されていたビザ免除措置が、令和4年10月11日より再開されています。
- 外国人の新規入国制限が解除されています
③検査等の見直し
新型コロナウイルスへの感染が疑われる症状がある帰国者・入国者を除き、入国時検査を実施しません。入国後の自宅または宿泊施設での待機、待機期間中のフォローアップ、公共交通機関不使用などは免除されます。ただし、全ての帰国者・入国者について、世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに掲載されているワクチンの接種証明書(3回)または、出国前72時間以内に受けた検査の陰性証明書のいずれかを提出する必要があります。
④入国者総数の管理の見直し
現在1日50,000人を目途としている入国者総数の上限は撤廃されています。
インバウンド市場は復活の兆候
水際対策の緩和に伴い、円安を背景に日本を訪れる外国人観光客が増加し、日本政府はインバウンド復活に向けて推進しています。
2023年をスタートに、さらに訪日外国人の往来が活性化することを見込んで、日本政府は水際対策の緩和後「観光消費額5兆円」を達成することを目指しています。
訪日外国人が観光地ニッポンへ来日する目的は、1番に日本食、続いてショッピングとなっており、観光庁の調査では、訪日外国人が日本国内で買い物をする金額は、ホテルなどの宿泊費よりも高額であるという結果が出ています。
外国人観光客が日本で爆買いツアーを楽しむ…などのニュースが頻繁に流れているように、訪日外国人をターゲットにした飲食業界や観光業界が徐々に活性化してきている傾向です。また、外国人観光客の日本での移動手段であるタクシーや公共交通機関の利用者も増えて来ています。
訪日外国人数は急増中
日本政府観光局のデータによりますと、11月の訪日外国人数(推計値)は93万4500人。前月(49万8600人)からほぼ2倍となっています。10月11日に水際対策が大幅に緩和されたことから、訪日観光客が急増しており、インバウンド市場が回復してきています。
外国人労働者の入国の変化
水際対策の緩和に伴い、外国人労働者の往来も再開しています。新型コロナウィルスで足止めとなっていた外国人労働者と労働者不足の企業が、お互いにマッチングしやすい状況が戻って来ています。
外国人労働者の雇用においては、日本の雇用条件の厳しさや円安続きなどで、日本離れで他の外国へと働く場所を変更する一部の外国人もいますが、日本の入国制限が開けるのを待機していた外国人も大勢います。
各国のエージェントでも、日本への送り出し業務が再開されてきています。待機中の若者たちは、日本のビザを取得して家族総出で入国の準備をしている様子も見られます。
実際、水際対策緩和後の入国待機組の技能実習生・留学生の入国は増加しており、2023年からは、外国人観光客と外国人労働者ともに、さらに入国数が増えると見込まれています。
外国人労働者の入国緩和後の課題
外国人労働者の入国が再開され、明るい兆候であることに加えて、日本で外国人労働者が定着して働ける環境はあるのか?見直すことも必要となっています。
円安や日本の労働条件などにより日本離れの外国人が増えていることも現状です。
日本と同じように、同じアジア圏の韓国や台湾など外国人労働者を積極的に受け入れているため、日本が選ばれるためには、日本社会の受け入れ体制や雇用する側の対応などが重要な課題となっています。
外国人から見た日本の魅力については、日本はおもてなし国である、日本人や穏やかで親切、お金が稼げるなど、形式的な印象としてあげられますが、実際は、労働を目的とする若い外国人たちの中では、日本は厳しくなかなか稼げないという現状を捉えている傾向もあります。
また外国人労働者が日本で働く場合のハードルとして「日本語」があります。英語の通じない日本で、希望通りの給与がもらえず労働条件がよろしくなければ、単純に他国へ流れていくのは当然としてあり得ることです。
さらに、日本で外国人労働者を受け入れる場合は、外国人労働者に日本人のように働くことを求める傾向にあります。
受け入れ側が日本式のマニュアルを作成して外国人の研修会を行っているところもありますが、同時に日本人が国際感覚を育てることも重要課題となっていくでしょう。
まとめ
水際対策の緩和に伴い、外国人観光客や日本で働く外国人の若者たちの往来が活発化しています。2023年は、人手不足に悩む業界の方々と外国人労働者の方々がお互いに連携を組んでいける年になるように、また、長期的に日本が選ばれる国になるような仕組みづくりが重要となっていくでしょう。