永住者と特別永住者とは
日本で外国人を雇用するにあたって、特に「永住者」と「特別永住者」の違いを正しく理解しておきましょう。
まず、永住者とは、日本に中長期在留している外国人が一定の要件を満たし、法務大臣の許可を受けて「永住許可」を得ている人を指します。個別に審査され、結果として「日本に永続的に住む権利」を得ています。
次に、特別永住者とは主に第二次世界大戦前後に日本に居住していた在日韓国・朝鮮人、およびその子孫を対象とした特別な地位です。
日本の植民地時代の歴史的経緯を背景に、日本政府が特別に認めている在留資格です。
申請ではなく、歴史的事実に基づく権利に近い在留資格でといえます。
項目 | 永住者 | 特別永住者 |
資格の取得方法 | 申請に基づき、法務大臣の許可が必要 | 生まれながら、または歴史的背景による地位 |
主な対象 | 中長期滞在を経て永住を希望する外国人全般 | 戦前から日本に居住する在日韓国・朝鮮人とその子孫 |
在留期間 | 無期限 | 無期限 |
就労制限 | なし(全職種可能) | なし(全職種可能) |
在留カード | 「永住者」と記載 | 「特別永住者証明書」として別管理 |
再入国許可 | 通常の「みなし再入国許可」適用 | より長期間の再入国許可が可能、扱いが緩やか |
退去強制の条件 | 犯罪行為等により可能性あり | より厳しい制限あり(重大な犯罪に限定) |
社会的背景 | 個人の努力と条件で取得 | 日本の歴史的事情に由来する特別措置 |
雇用における永住者と特別永住者の雇用における共通点と違い
外国人材の採用にあたって、「永住者」と「特別永住者」はどちらも就労の自由度が高く、企業にとって魅力的な存在です。
しかし、両者には細かな違いもあるため、共通点と注意すべき違いについてみていきましょう。
項目 | 永住者 | 特別永住者 |
就労制限 | なし(すべての職種・業種で就労可能) | なし(すべての職種・業種で就労可能) |
労働条件の扱い | 日本人と同等(労基法・社保適用) | 日本人と同等(労基法・社保適用) |
再入国許可 | 出国後2年以内に再入国しないと永住資格を失う可能性がある | 出国後も特別な保護があり、失効リスクは非常に低い |
退去強制の対象 | 重大な犯罪行為により永住権取り消し・退去の可能性あり※厳格化(下記参照) | ごく重大な場合に限り退去強制対象(保護が厚い) |
日本語力・文化適応 | 個人差が大きく、採用時の確認が必須 | 多くは日本生まれ・日本育ちで、日本語も文化理解も高い |
※厳格化について永住者の退去要件に関しては、以下のように2024年6月に出入国管理及び難民認定法(入管法)が改正されより、厳格化されました。
- 在留カードの携帯義務違反や届出義務違反
- 公租公課の故意の不納
- 1年以下の刑罰(住居侵入、窃盗)を受けた
とくに未納と1年以下の刑罰でも取り消しが実行される点は大きな変更だったといえるでしょう。
また、11月18日には次のような改訂も行われました。
- 原則として10年以上日本に在留している。就労資格も含む
- 租税公課は支払っていたとしても期限内の履行でなければマイナスとして扱う
- 独立の生計を営む資産や技能を有すること
詳しくは、出入国在留管理庁の「永住許可に関するガイドライン(令和6年11月18日改訂)」を参照してください。
永住者と特別永住者の雇用に活かせる具体的な事例紹介
ここでは、永住者や特別永住者を採用した場合、「どのように企業の現場で活躍できるのか」についてみていきましょう。
具体的な成功例を知ることで、採用後のイメージをより明確にすることができます。
運送業での永住者活躍事例
人手不足が深刻な運送業では、永住者の積極的な採用が進んでいます。運送企業が求めているのは、単なる労働力ではなく、長期的に安定して働ける即戦力の人材です。
日本語での社内外コミュニケーションが可能であり、交通ルールや接客マナーを理解し、かつ安全運転を遂行できる人材として、永住者に注目が集まっています。
とくに以下のような場面で活躍している状況です。
- 普通自動車免許を活かし、小口配送や宅配便業務に即対応できる
- 日本語での顧客対応や社内連絡も問題なく行えるため、教育コストを抑えられる
- 日本在住歴が長い永住者であれば、日本独特の時間厳守文化にも馴染みやすい
永住者を採用することで、即戦力化が早く進み、労働力の安定確保が実現できます。
また、日本語対応が可能なため、顧客満足度の向上やクレームリスクの低減にもつながります。
在留資格に制限がないため、在留更新業務の負担もなく、企業側の手続きコストやリスクも最小限に抑えることが可能です。
製造業での永住者活躍事例
製造業では、永住者が単純作業だけでなく、現場を支える中核人材として成長する例が増えています。
製造業の現状は、設備オペレーションや品質管理といった、一定のスキルを要する人材が慢性的に不足している状況です。
そのうえで、少子高齢化の影響で国内の労働力が減少しているため、製造現場では安定した人材確保が喫緊の課題となっています。永住者であれば、在留期間の制限がないため、以下のような観点から、技能の習得に時間がかかる業務でも長期育成が可能です。
また、日本語能力が一定以上である場合が多く、製造現場特有の指示や安全衛生ルールを確実に理解し実践することが期待できます。
- 生産ラインの作業者として即戦力化
- 複数工程を担当できる多能工への育成が可能
- 品質管理やラインリーダーとして日本人スタッフをまとめるポジションにも就任
また、外国人労働者に対する理解がある企業であれば、永住者に機械オペレーターや検品担当といったより高付加価値な業務を任せるケースも増加しています。
接客業での特別永住者起用例接客業では、特別永住者の高い日本語力と文化適応力が大きな強みとなっています。
とくに、特別永住者には以下のようなメリットがある点が高く評価されているといえるでしょう。
- 日本で生まれ育った人が多く、日本語は母語レベルで運用できる
- 文化的にも日本社会に完全に適応しているため、接客マナーやビジネス慣習を自然に理解しており、即戦力として期待できる
- 在留資格に制限がないため、就業時間や業務範囲にも制約がなく、シフト勤務や繁忙期対応にも柔軟に対応できる
たとえば、接客業に目を向けると、特別永住者は以下のような場面で即戦力として活躍しています。
- 飲食店やホテルのフロント業務において、自然な日本語での接客が可能
- 電話応対、クレーム対応といった高度な日本語運用が求められる場面にも対応できる
- 英語や中国語を話せるバイリンガル人材として、インバウンド対応にも貢献
また、大手ホテルチェーンや外食企業では、特別永住者を店長候補として採用し、将来的な管理職への登用を見据えた育成を進めるケースも増加している状況です。
まとめ
永住者と特別永住者は、どちらも在留期間に制限がなく、就労制限もありません。
そのため、長期的な戦力として期待できる在留資格です。とくに永住者は運送業や製造業において、即戦力から中核人材まで育成できる可能性を持っています。
対して、特別永住者は高い日本語力と文化適応力を備えているため、接客業においても即戦力として活躍が期待できます。
それぞれの特性を正しく見極め、企業側が積極的に支援・育成を行うことで、安定した人材確保と組織力向上が実現できるでしょう。
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