公開日 2022年1月31日 最終更新日 2022年4月27日
目次
1 はじめに
2 特定技能制度をとりまく環境
3 受入の現場の混乱
4 手続に関する問題
5 特定技能制度の在り方
今回のコラムは当社の顧問行政書士であるフェロー行政書士事務所の行政書士、大塚香織先生に執筆をお願いしています。日々外国人と一緒に働いている人事や現場の皆さんにとって前から気になっていたことや、実際どうなのだろうという点について触れていくこととします。今回は話題の「続編:特定技能2号」について詳述していきます。
特定技能制度をとりまく環境
特定技能制度は、平成30年12月8日第197回国会(臨時会)において『出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律』が成立し、同月14日に交付、翌令和元年4月1日に施行され、3年が経とうとしています。
施行当初は、準備期間の不足から試験制度、相手国との2国間の協力覚書の締結などに時間を要したため申請数も増加せず、開始3カ月の許可人数がわずか11名、全て元技能実習生が特定技能へ移行したものです。
同年12月に至っても、『特定技能評価試験』合格者の許可件数は、宿泊分野と外食分野合計で115名、その他の産業分野については、全て技能実習生からの移行組でした。
令和2年に入ると、ようやく一部の産業分野では『特定技能評価試験』が安定的に実施されるようになったのも束の間、COVID-19の感染拡大の影響を受けることとなり、再び海外からの受入が難しくなりました。
令和2年4月には緊急事態宣言が発令されるなどの混乱のなか、『特定技能評価試験』の受験資格が拡大され、帰国困難者の受け皿として、特定技能の在留資格へ変更しやすくする運用が段階的に行われてきました。
令和3年9月末の統計によれば、38,337名の特定技能1号外国人が在留しているものの、実質的には技能実習生・留学生を中心とした既に本邦に在留する人々が特定技能の在留資格へ変更したもので、新規入国者は1割にも満たない状況です。
令和4年1月現在、感染症の状況は再び拡大をみせており、外食・宿泊を中心とした一部の産業分野は、引き続き多大な影響を受けることとなり、今後も予断を許さない状況が継続すると言えるでしょう。
受入の現場の混乱
特定技能制度の導入以前は、技能実習生、留学生等のアルバイト、永住者等の身分系在留資格者が、同様の職種で就労してきました。(ただし、ビルクリーニング、宿泊、飲食料品製造、外食分野を除けばアルバイトを雇用するケースは多くありません。)
留学生30万人計画の中で、日本に訪れた多くの留学生にとって、留学後の日本での就職は困難な問題でした。
特に、留学後の就労先として、特定技能に該当するような職種を選んだ場合、従来は在留資格を取得することができませんでしたが、現在は『特定技能評価試験』に合格することで、特定技能の在留資格で活躍の場を得られようになり、その点はプラスの側面と言えるかもしれません。
しかし、試験ルートで特定技能1号の在留資格を得るためには、分野によって異なるものの数日~数週間の学習を経て『特定技能評価試験』を受け、合格することが求められているのに対して、技能実習生が、特定技能1号へ移行するためには、3年間の技能実習を終え『技能検定(随時3級)』に合格する必要があります。
前者(試験ルート)、後者(技能実習ルート)の人材が混在する現場では、混乱が生じるケースも少なくありません。 それは、3年の実務経験を有する技能実習生と、未経験者である試験ルートの人材を制度上、同列に扱うことになるからです 。
さらに、介護分野の場合は、EPA、介護福祉士養成施設修了者なども混在することとなりますが、選択肢の幅が増えた分、ひずみが生まれやすいことには細心の注意が必要です。
