接客業における外国人材採用の選択肢
ここでは、接客業における外国人採用の選択肢についてみていきましょう。
2022年の農林水産省の「外食業分野における特定技能外国人制度について」では、既に18.2万人の外国人材が外食業に従事しているというデータがあります。
特定技能(特定技能1号・特定技能2号)
特定技能は、外食業や宿泊業などを含めた12分野で、一定の技能と日本語能力を有する外国人材を受け入れる制度です。
接客業では、主に外食業や宿泊業が対象になります。
特定技能1号で一定期間就業した後、特定技能2号へ移行できる場合があり、2号に移行すると在留期間の上限がなくなる業種もあります。
採用メリットは、以下の点です。
- 試験に合格しなけば保有できない在留資格。そのため、ある程度の語学力や実務スキルが担保されており、即戦力になりやすい
- 特定技能2号に移行できる分野であれば、長期的な雇用や外国人材のキャリアアップも視野に入れられる
ただし、受け入れ企業は事前に登録支援機関との契約や必要書類の整備などの手続きが必要です。
また、在留資格の取得や更新手続きには一定の要件があるため、定期的に制度変更の情報収集やノウハウも得なければなりません。
資格外活動(留学生アルバイト・高度人材ビザ)
日本の学校に在籍する留学生は、資格外活動許可を得ることで週28時間以内のアルバイトが可能です。
また、高度人材ビザは、専門分野の知識や高いスキルを持っているため、大学卒業レベルの資格や実務経験を活かせます。
そのため、リーダーやマネジメント業務、経営コンサルタントとして採用することも可能です。
留学生の場合は、大学や専門学校で日本語を学んでいるため、ある程度のコミュニケーション能力を期待できる点です。
接客業においては、話す・聞く・喋る能力が必要とされるため、高いスキルを期待できるでしょう。アルバイトを経て、卒業後に正社員として採用するなどのキャリア形成も可能です。
留学生の場合は、就業時間の制限(週28時間以内)があるため、繁忙期や土日祝のシフトに制限が出るケースもあります。
夏休みや冬休みなど時期によっては、40時間に拡大することも可能ですが、教育機関の休暇を把握しなければなりません。
留学生の長期休暇について、詳しく知りたい方はこちらの記事から。
身分系在留資格:永住権・日本人の配偶者など
永住権(永住者)や日本人の配偶者は、身分系在留資格を持つため、就労制限がほとんどありません。
永住権の場合は在留期限もなく、日本人の配偶者等でも多くのケースで制限なく就労が可能です。
そのため、生活基盤を日本に置いており、長期雇用を見据えた採用を行いやすい点も特徴です。
また、業務内容や就労時間の制限が極めて少ないため、シフトや役職の柔軟な設定が可能です。
ただし、日本語能力やスキルに関しては、一般的な日本人アルバイトと変わらないケースもあります。
そのため、面談・採用時の見極めが重要になるといえるでしょう。
外国人材を育成する3つの方法
ここでは、外国人材を育成する3つの方法について解説します。
言語研修・コミュニケーション教育
接客業では、正確かつ丁寧な言葉遣いが求められるため、日常会話よりも高いレベルの日本語能力が必要です。
そのため、以下のような研修を実施しましょう。
- 接客用語
- ビジネス敬語
- 電話応対やクレーム対応用語
一般的な日本語力とは別に、業種特有の専門用語や敬語表現を教えるカリキュラムを組むことが大切です。
また、コミュニケーションに関しては以下のような方法から自社にあった方法を選択しましょう。
- ロールプレイング: 具体的な接客シーンを想定した演習を行い、フィードバックを実施する
- 多文化理解: 相互理解を深めるために、外国人材だけでなく日本人スタッフも含めて、文化的背景の違いを学ぶ場を設ける
- 通学や集合研修が難しい場合は、オンライン教材やeラーニングを導入し、業務と並行して学べる環境をえる
自社で内容・プログラムを策定して実施する方法と外部に依頼する方法があるため、自社のリソースと相談しながら実施することが大切です。
OJT(On-the-Job Training)とメンター制度
接客サービスの基本は「実務経験」を通して磨いていく部分が大きく、現場での指導が重要です。
そのため、配属先となる店舗や部署ごとに、指導担当者(先輩社員やチームリーダー)を明確にし、日々の接客や業務の合間にフィードバックを行うとよいでしょう。
また、新たに来日・入社した外国人材には、職場や日本の社会ルールへの順応を支援する「メンター」を付ける制度も効果的です。
業務面に限らず、生活面や文化面など幅広い相談に対応することで、定着率の向上を期待できます。
どの方法でも目標となる接客レベルや達成すべき知識・技能をリスト化して、段階的にクリアできるように提示しましょう。
長期的なキャリア支援と組織体制作り
接客業で働く外国人材にも、管理職候補や本部勤務など上位職へのステップアップが可能である旨を明示しましょう。
日本人でも同様ですが、どのレベルのスキルや知識があれば、どのようなステップや立ち位置を望めるのかを示すことでモチベーションアップにつながります。
また、異文化への理解を深める場合には、次のような取組みが大切です。
- 異文化交流イベント: 社内や店舗内で、各国の文化を紹介し合うイベントを定期的に開催する
- 情報共有: 多言語対応の社内掲示板やSNSを活用し、業務連絡のみならず、生活情報やレクリエーション情報を共有する
外国人材が孤立しなくなり、日本人スタッフ側も多文化に対する理解が深まるため、全体的に働きやすい職場環境を作ることが可能です。
加えて、評価する場合は主観的な評価ではなく、チームワークや売上などの多角的な視点からの評価制度の構築が大切です。
まとめ
接客業における外国人材の採用は、在留資格のチェックと自社の体制構築によってスムーズに実施できるといえるでしょう。
ただし、採用する人材の要件や待遇は、日本人と同様の条件でなければなりません。
そのため、接客業で外国人を採用する場合は、相談しつつ、自社の採用制度を見直す必要もあります。
LTBでは、「外国人採用を検討しているが社内体制がこれでいいのか迷っている」という場合や「今後外国人採用を実施したい」という相談を受け付けています。今後接客業で外国人採用を選択肢の1つとして検討している場合は、LTBまでご相談ください。