風営法と対象施設
風営法(正式名称:風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)は、風俗営業に関するルールを定めた法律で営業の場所や時間、方法などに一定の制限を課すことで、地域の治安や青少年の保護を目的としています。
単に“風俗”と聞くと一部の業種を連想しがちですが、実際には飲食店や遊技施設、深夜営業を行う店舗なども対象となるため、想像以上に広範な業態が関係します。
では、どのような施設が具体的にこの法律の規制対象になるのでしょうか。
区分 | 主な風営法の対象となる施設例 | 具体例 |
接待を伴う飲食店(1号営業) | キャバクラ、ホストクラブ、スナック | 客の隣に座って接待を伴う |
低照度飲食店(2号営業) | 暗い照明のバー | 10ルクス以下の店内での飲食提供 |
区画席飲食店(3号営業) | 個室カラオケバー | 5㎡以下の見通せない個室 |
遊技場(4・5号営業) | パチンコ店、麻雀店、ゲームセンター | 射幸心をあおる遊技を提供 |
性風俗関連特殊営業 | ソープランド、ファッションヘルス、ストリップ劇場、アダルトショップ | 性的サービス・興味を喚起する |
無店舗型風俗営業 | デリヘル、アダルトビデオ通販 | 店舗を持たずにサービス提供 |
映像送信型性風俗 | アダルトライブ配信サイト | ネット上で性的映像を送信 |
電話異性紹介営業 | テレクラ、ツーショットダイヤル | 店舗または無店舗での異性紹介 |
深夜酒類提供飲食店 | 深夜バー、居酒屋(0時~6時) | 酒類を提供する深夜営業店 |
法律に指定された言葉ではなく、イメージしやすい言葉に置き換えています。
詳しくは警視庁のこちらのページをご参照ください。
風営法に抵触する可能性がある店舗の営業を行うには、営業の種類に応じて公安委員会への「許可申請」または「届出」が義務付けられています。
たとえば、接待行為を伴う1号営業や性風俗関連特殊営業については、「営業許可」を取得しなければなりません。
一方、深夜酒類提供飲食店のように、一定条件下で営業可能な業態は「届出」によって営業が認められています。
無許可営業や届出漏れは、営業停止や罰金などの行政処分の対象となります。また、外国人を雇用する場合には、在留資格によって風営法対象施設での就労が禁じられているケースが多くあります。
たとえば、「留学生」「家族滞在」「特定活動(ワーホリや就職活動中)」などの資格では、在留カードの裏面に「風俗営業等の従事を除く」と明記されています。接客業務だけでなく、裏方業務(清掃・調理補助)であってもその施設内であれば、就労不可と解釈されます。
また、企業側が知らずに外国人を該当施設で働かせた場合でも、「不法就労助長罪」に問われる可能性があり、最大で懲役3年または罰金300万円が科される可能性があります。
そのため、風営法に関係する業態で外国人を雇用する場合は、以下3つの項目を確認しましょう。
- 営業許可や届出の有無
- 雇用予定者の在留カードの記載内容
- 就労可能な活動範囲(特に「指定書」の確認)
実際に、風営法の許可を得たうえで、外国人材の在留資格や在留カードも問題ないという場合は、接客業における外国人採用の方法や人材育成の方法を確認してみましょう。
風営法が絡む施設で働けない在留資格
風営法対象施設での就労が禁止される在留資格は、以下のとおりです。
在留資格 | 特徴 | 禁止の理由と注意点 |
留学生 | 日本の教育機関に通う外国人。週28時間までの資格外活動が許可される | 在留カードの裏面に「風俗営業等の従事を除く」と明記。表向きは清掃や厨房であっても、施設が風営法対象であればNG。許可された場合は28時間の労働が可能となり、休暇の間は週40時間まで拡大可だが、風俗業への従事は禁止 |
家族滞在 | 就労ビザを持つ配偶者などの扶養家族 | 単独での就労不可。資格外活動の許可を得ればアルバイト可能だが、留学生と同様に風俗関連の施設は就労禁止 |
特定活動(ワーキングホリデー、就職活動中等) | 法務省が個別に認めた活動内容によって働ける | 「指定書」に具体的な活動内容が記載されており、そこに風俗業が含まれていなければ就労不可。中には曖昧なケースもあるため、必ず「指定書」の確認が必要 |
技能実習 | 技能の習得を目的に日本企業で実習を行う制度 | 対象となる職種・業種が厳密に決められており、風俗業は制度の目的に反するため完全にNG。たとえ厨房や清掃でも不可。派遣先の職種が制度に適合していない場合、不正実習として受け入れ停止になるリスクも |
外国人を雇う前に気をつけたい3つのポイント
外国人を雇用する際には、在留資格の確認だけでなく、外国人材がどのような業務に就くか、その業務が法律上問題ないかを慎重に見極める必要があります。
とくに風営法の対象となる施設では、働ける業務内容や施設への立ち入り自体に制限があるケースも多いといえます。
ここでは、実際に雇用を進める前に確認しておきたい重要なポイントについてみていきましょう。
適切な対応をとることで、外国人本人だけでなく企業側も安心して雇用を行うことができます。
1.接客でなくても働けないケースがある
風営法の対象となる施設では、客と接しない清掃や調理補助といった業務であっても、その施設に立ち入ること自体が禁止されているケースもあります。
たとえば、留学生や家族滞在の在留資格を持つ人は、裏方業務であっても風俗営業の店内で働くことはできません。
2.在留カードだけでは判断できないこともある
在留カードには就労の可否が記載されています。しかし、「特定活動」などの資格では、カードだけでは不十分な場合があります。
このようなケースでは、パスポートに添付された「指定書」も確認し、就労可能な活動内容を把握することが必要です。
3.雇用者側も処罰される可能性がある
外国人本人だけでなく、雇った企業側も「不法就労助長罪」に問われるリスクがあります。
知らなかったでは済まされず、最大で懲役3年または罰金300万円が科される可能性もあるため、雇用前の確認は必須です。
まとめ
外国人を雇用する際には、単に「働けるかどうか」ではなく、「どこで、どの業務に就かせるのか」を慎重に判断することが求められます。
風営法に該当する施設では、たとえ裏方の業務であっても在留資格によっては就労が禁止されており、知らずに働かせてしまうと企業側にも法的責任が及びます。
在留カードの記載内容だけでなく、パスポートの指定書や施設の営業許可状況なども事前に確認し、適切な範囲で雇用を行うことが重要です。
法令遵守と安全な雇用環境づくりのために、制度を正しく理解し、慎重な対応を心がけましょう。