外国人ドライバー採用で変わった一般貨物運送の現場—㈱ムソー東京営業所

外国人ドライバー採用で変わった一般貨物運送の現場—㈱ムソー東京営業所

東京・江戸川区を拠点に一般貨物運送を手がける㈱ムソー東京営業所。ドライバー55名、倉庫スタッフ40名、事務15名の計105名体制で、スーパーへのルート配送を中心に事業を展開している。現在、そのうち約30%が外国人スタッフだ。物流業界全体で人手不足が深刻化するなか、同社はいち早く外国人雇用に舵を切り、現場の体制を作り上げてきた。

きっかけは10年超のハローワーク採用の「限界」

外国人採用を検討し始めたのは、長年頼ってきたハローワーク経由での採用が機能しなくなってきたことが大きい。求人を出し続けても応募は芳しくなく、年間数十万円のコストをかけても面接まで漕ぎ着ければ良い方、採用に至らないケースが頻発していた。ドライバー職は体力的にきつく、週休1日も珍しくない。日本人にとっては「やりたがらない仕事」になりつつあった。

転機となったのが2021年2月。LTBの紹介で、中型免許を持つペルー人スタッフが入社した。「初めて外国人を迎える」という不安はあったが、その方は入社から数年が経った今も現場の第一線で活躍し続けている。「最初はどんな人なのかわからなくて不安だったが、実際に一緒に働いてみると、仕事への姿勢は日本人と変わらないと感じた」と担当者は振り返る。

外国人雇用の課題①—「契約」への意識の違い

外国人スタッフとの協働が本格化すると、日本人採用では気にならなかった点が課題として浮き彫りになった。まず「契約」に対する意識の違いだ。IさんやJさんといったドライバーは、契約条項に関しては明確に主張する姿勢を持っている。「契約外のことはできない」「日曜日は休む」という点については、交渉の余地なく主張されることもある。当初は戸惑う場面もあった。

担当者は述懐する。「日本人は我慢して頑張ってしまうが、外国人スタッフは自分の意見をはっきり言う分、現場の問題が早期に見えやすい面もある。家族を大切にする文化でもあり、ワークライフバランスへの意識が高いとも言える」。この違いが、雇用する企業にとって、良し悪しが分かれるところかもしれないが、新たに外国人を雇用しようという企業は、一定、心理的な準備があると良いかもしれない。

外国人雇用の課題②—言語・読み書きの壁とその乗り越え方

もう一つの課題が、言語・読み書きの壁だ。一般貨物運送の配送現場では、地名・店名・伝票・配達メモなど、日本語の読み書きが日常的に求められる。この点には一定の難しさがあると担当者も率直に認める。実務上の対応として同社が取り組んできたのは、「まず自分が走るルートを覚えてもらう」というアプローチだ。配達先の地名や店名を繰り返し体験することで、自然と現場で使う日本語が身についていく。

さらに現場のスタッフ自身から生まれた工夫もある。平仮名・カタカナ・漢字を数字などに置き換えて覚えるという方法で、商品名や配達先を管理するようにしたところ、読み書きに不慣れなスタッフでも正確に業務をこなせるようになったという。マニュアルや研修ではなく、現場の知恵として生まれたこの方法は、今では定着したノウハウになっている。

現在—「外国人がいないと回らない」現場に

現在、営業所の外国人は若いスタッフが多い。日本人ドライバーは50代後半が中心で、30代はわずか1名。そこに若い外国人スタッフが加わったことで、「現場の雰囲気が変わった。営業所が活気づいた」と担当者は話す。定着率も高い。日本での生活基盤を固め、長期間定着するスタッフ多い。今では「外国人スタッフがいないと現場が回らない」という認識が、営業所全体に根付いている。

これからの展望—多様な力を現場の「当たり前」に

少子高齢化と人手不足が構造的に進む日本の物流業界において、外国人ドライバーの採用はもはや「応急措置」ではなく、持続可能な現場づくりに不可欠な戦略となっている。㈱ムソー東京営業所では、今後も外国人スタッフの積極的な採用を続けながら、共に働きやすい環境のさらなる整備を進めていく考えだ。外国人雇用の課題を一つひとつ乗り越えてきた同社の経験は、同じ悩みを抱える物流・運送事業者にとっての先行事例となるだろう。

取材協力:㈱ムソー 東京営業所/取材・編集:Peregre編集部