特定技能2号の各分野試験には、それぞれ主管団体が作成した学習用テキストがあります。2023年の対象分野大幅拡大を受け、テキストの内容・構成も分野ごとに大きく異なります。本記事では、主要8分野のテキストを実際に確認し、職務技能の難易度・構成・特記すべき追加内容という観点で比較・整理しました。
外国人材の受け入れ担当者の方、また特定技能2号移行を支援する実務者の方に役立てていただければ幸いです。
特定技能2号とは:簡単なおさらい
特定技能2号は、「熟練した技能」を持つ外国人材のための在留資格です。1号と異なり在留期間の上限がなく、配偶者・子どもの帯同も可能。条件を満たせば永住権取得への道も開かれます。
2023年6月の閣議決定で対象分野が従来の2分野(建設・造船)から一気に11分野へ拡大されました。それに伴い、各分野の主管団体が独自に試験テキストを整備しています。
8分野テキスト比較:一覧表
| 分野 | 主管団体 | テキストの性格 | 試験形式 | 生活習慣・マナーの記述 |
|---|---|---|---|---|
| 飲食料品製造業 | OTAFF | 職長スキル+生活指導 | 学科+実技 | ◎ 詳細(第3.01版で新規追加) |
| 外食業 | 日本フードサービス協会 | 店舗運営・接客特化 | 学科 | なし |
| 宿泊 | 全旅連 | 旅館業法+接客業務 | 学科 | なし |
| 建設 | JAC | 現場管理・安全管理 | 学科+実技 | なし |
| 自動車整備 | JASPA | 高度技術問題集 | 学科(CBT) | なし |
| 製造産業(工業製品) | JAIM | KYT・作業安全 | 学科(CBT)+ビジキャリ3級 | なし |
| 農業 | 全国農業会議所 | 農薬・農業機械・労働法 | 学科 | なし |
| 漁業 | 水産海洋技術研究所 | 船上安全・衛生 | 学科 | △ 上司の指示遵守等の記述あり |
分野別詳細レビュー
① 飲食料品製造業(OTAFF)
テキスト最新版:第3.01版(2026年4月)
全分野の中で最も異色の構成を持つのがこの分野です。2026年4月改訂の第3.01版では、第1章冒頭に「日本に住み続けるために大切なこと」という節が設けられ、以下のような生活習慣・マナーに関する内容が詳細に追加されています。
- ゴミの分別・出し方(曜日・場所のルール)
- 道路・公共の場所でのマナー(唾・タバコの吸い殻等)
- 騒音への配慮(夜間の音楽・洗濯機の使用等)
- 自転車の交通ルール(飲酒・スマホ使用禁止等)
- 電車・バスでの振る舞い
- 食事のマナー(箸の使い方、「いただきます」等)
- 入浴・トイレの使い方
- 手洗い・咳エチケット
職務内容の章立ては「第1章:職長として働くための基本」「第2章:食品衛生」「第3章:品質管理」「第4章:生産管理」「第5章:労働安全」「第6章:社会の変化と会社の方針」。品質管理(QC7つ道具・3σ管理)や生産管理(PDCA・稼働率・設備管理)など、管理職レベルの内容が求められます。
ポイント:試験テキストでありながら「生活案内」に踏み込んでいる唯一の分野。食品安全と生活衛生が直結する業種特性が背景にあると考えられますが、他分野にはない特徴的な追加内容です。
② 外食業(日本フードサービス協会)
テキスト構成:店舗運営・衛生管理・食品調理・接客の4分冊
外食業の2号テキストは4冊構成で、それぞれ独立した試験領域に対応しています。
- 店舗運営:QSC(品質・サービス・清潔)管理、計数管理(労働時間・客数・客単価)、発注・棚卸し、雇用管理、人材育成・OJT、防火・防災
- 衛生管理:HACCPに基づく衛生管理、食中毒防止
- 食品調理:調理技術と品質基準
- 接客:接客の基本、クレーム対応
生活習慣・マナーに関する記述は見当たらず、完全に職務技能・法令・マネジメント知識に特化した内容です。計数管理の問題例(FLコスト比率、客単価計算等)が含まれており、数値管理能力が問われます。
ポイント:飲食料品製造業と同じOTAFF管轄の分野ですが、テキストの方向性は大きく異なります。店舗マネージャーレベルの経営数値の理解が必要。
③ 宿泊(全旅連)
テキスト構成:フロント業務・企画広報・接客・レストランサービス・安全衛生管理
旅館業法の理解を前提とした構成で、フロント業務(予約管理・チェックイン・チェックアウト・会計)から企画・広報(SNS運用含む)まで、宿泊施設の管理職業務全般をカバーしています。
接客章では「身だしなみ・姿勢・言葉遣い」「クレーム対応」が詳しく扱われており、和食・洋食のマナー解説も含まれています(ゲスト向けのサービス提供という文脈)。ただし外国人労働者自身の生活習慣に関する記述はありません。
ポイント:サービス品質とブランド管理の視点が強く、外国人ゲスト対応も視野に入れた内容。旅館業法・安全衛生・施設管理が試験範囲に含まれる点が他の飲食系分野との違いです。
④ 建設(JAC)
テキスト構成:職長の職務・現場管理・安全管理・コミュニケーション能力
「職長」「班長」という立場での現場管理に特化した構成です。安全管理能力・マネジメント能力・リーダーシップ能力・コーチング能力・コミュニケーション能力・問題解決能力・技能技術的能力の7つの能力区分が明示されており、体系的に整理されています。
段取り・作業管理、送り出し教育、工期・原価・品質の管理、建設業法・労働安全衛生法などの法令知識も含まれます。
ポイント:2019年の制度創設当初から2号対象であったため、テキストの完成度が高い。土木・建築・ライフライン設備の3区分それぞれに対応。
⑤ 自動車整備(JASPA)
テキスト:学科試験問題集(CBT方式)
他分野とは異なり、公開されているのは試験問題の例題集です。内容はエンジン性能(平均有効圧力・熱効率・軸出力)、コンロッド・ベアリング、ピストン・リング、シリンダ・ヘッドなど、高度な自動車整備技術の専門知識が問われます。
CBT方式の四択問題で、実技試験も別途実施されます。日本語の技術用語の読解力が相当程度求められる試験設計です。
ポイント:全分野の中で最も技術特化型。自動車整備士の資格知識に近い水準が求められ、学科試験問題の難易度は専門職レベルです。
⑥ 製造産業・工業製品製造業(JAIM)
テキスト:実技試験問題集(CBT方式)+ビジキャリ3級(生産管理)
機械金属加工・電気電子機器組立て・金属表面処理の3区分があり、いずれもCBT方式で実施されます。試験問題はKYT(危険予知訓練)4ラウンド法、作業安全、整理整頓・5S推進などの現場管理が中心です。
他分野にはない特徴として、ビジネス・キャリア検定試験(ビジキャリ)3級・生産管理分野への合格が追加要件となっています(2023年6月から)。また学科試験はマークシートからCBT方式へ移行済みです。
ポイント:唯一、別資格(ビジキャリ3級)の取得が必須。受験者にとっては2つの試験対策が必要となり、準備の負荷が高い分野です。
⑦ 農業(全国農業会議所)
テキスト構成:安全衛生管理(耕種農業・畜産農業の共通・専門別)
農薬の種類と安全取り扱い(毒性区分・使用ルール・PPE着用)、肥料の管理、廃棄物の分類、夏場の熱中症対策、農業機械(乗用型トラクター・刈払機等)の安全操作が主な内容です。
労務管理の章では労働基準法(賃金・労働時間・休暇)の基礎知識も扱われており、職長として部下を管理するうえで必要な法令理解が含まれています。
ポイント:耕種農業・畜産農業の2専門区分があり、共通テキストと専門テキストの組み合わせで学習します。季節ごとの農業リスク管理の理解が問われます。
⑧ 漁業(水産海洋技術研究所)
テキスト構成:養殖業(共通・給餌・無給餌)+外国人漁業労働者用安全衛生教材
船上作業特有の安全管理(波浪・船体動揺・海中転落防止・命綱の使用)から始まり、養殖業の専門知識(給餌管理・水質管理・病害防止)が中心です。
「外国人漁業労働者用安全衛生教材」は「船長や漁労長などの監督者の指示を守るとともに、あなた自身が自分を守る行動を取ることが大切」という文言で始まっており、監督者への従属を明示している点が特徴的です。漁業の危険性の高さから、指揮命令系統の遵守が安全上重要な業種特性を反映しています。
ポイント:外国人材向けの安全教材が独立して整備されている唯一の分野。船上という閉じた環境での指揮命令への服従が安全に直結するため、他分野とは異なる視点でのコンプライアンス意識が求められます。
まとめ:分野選定・育成計画のポイント
各分野テキストを横断して比較すると、以下の特徴が浮かび上がります。
難易度・専門性の観点
自動車整備・製造産業は技術専門性が突出して高く、学習期間の確保が重要です。建設は体系的に整備されており、職長教育の流れが明確です。外食・宿泊は業務範囲が広い分、分冊構成で対策しやすい設計になっています。
試験準備の観点
製造産業(工業製品)はビジキャリ3級という追加要件があり、他分野より時間的コストが高くなります。自動車整備・製造はCBT方式で随時受験が可能なため、スケジュール調整はしやすい側面もあります。
テキスト内容の観点で特筆すべき点
飲食料品製造業の第3.01版(2026年4月)には、他のすべての分野には見られない「日本の生活習慣・マナー」に関する詳細な記述が新規追加されています。ゴミの出し方・自転車ルール・食事マナー・衛生習慣など、技能試験の枠を超えた生活者としての適応を求める内容です。受け入れ企業の担当者は、テキストの改訂内容を定期的に確認し、OJT・生活支援の内容にも反映させることが有効です。
本記事の情報は各主管団体の公開資料をもとに2026年4月時点でまとめたものです。試験の詳細・最新情報は各主管団体の公式サイトをご確認ください。
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