建設業で働く特定技能外国人
特定技能の業種
ご存知かもしれません。特定技能は14種類の業種で外国人を労働者として雇い入れが可能な制度です。雇用期間が1号2号を通して10年となります。今回は2号が認められている建設業界について述べていこうと思います。
特定技能1号についてはこちらで確認。
建設業界の労働者に関するファクツ
総務省労働力調査より2019年現在、499万人の建設業従事者のうち35%が55歳以上となっています。一方34歳以下で建設業に携わる方は20%以下でしかありません。
平均年齢も職種別に建設・土木作業従事者47歳、型枠大工46.3歳、とび職38歳、鉄筋作業従事者43.9歳、大工50.4歳、左官53.6歳、配管従事者45.8歳、電気工事従事者45.2歳で建設業全体をとって見ても45歳を超えています。(「総務省労働力調査」より作成)

一方、2019年12月、国内で新型コロナウィルスが発生する直前、当初想定されていた翌年2020年のオリンピックに向け施設整備に建設人材の需要がたかかった時の全国平均としての有効求人倍率は7.5でした。新型コロナ発生後も求人自体は減ったとはいえ2020年4月現在、5.49と他の業種に比べ高水準を維持している状態です。オリンピックに向けた一時的な需要があるとはいえ、そもそもの日本の社会の構造的な少子高齢化が顕著に現れているといえそうです。
では建設業従事者の全体推移を見ていきましょう。
建設業従事者の推移 |
1995年 |
2000年 |
2010年 |
2015年 |
2019年 |
653万人 |
588万人 |
499万人 |
500万人 |
499万人 |
一方、技能実習生制度がスタートしたのは約30年前1993年です。技能実習生は2015年には約3万人、2016年には4万人が建設業に携わっています。これは、2011年にくらべ3倍超になります。
国籍の上位5カ国はベトナム6,750人、中国3,121人、フィリピン1,279人、インドネシア871人、カンボジア261人です。(2015年)
建設業に携わる外国人と在留資格種類
さて、急速な高齢化と人手不足が顕著である業種であることはわかってきました。ここからはどんな職種にどのようなルートで外国人を活用できるのかという点で見ていきます。
就労(技能の習得を含みます)が可能な在留資格は「特定活動(建設業)」「技能実習」「特定技能1号及び2号」「身分系の在留資格等」です。
技能実習生を受け入れ可能な職種は24職種36作業です。うち、鉄工、塗装、溶接は建設業者が実習実施機関である場合に限られ、この3職種は特定技能の建設業への移行は不可ですが、産業3分野への移行は可能となっています。
黄色のマークを付したものは特定技能1へ無試験で移行可能な職種となります。

次は建設業に携わる特定技能外国人とその受け入れ方法や業界に特徴的な取り扱いなどに触れていきます。
定住者と永住者の違いはなに?
身分系のビザ3種
日本人の配偶者等、定住者、永住者とも日本の選挙権がないだけで、就労だけではなく日本人の様に一切の制限がないのが、こういった身分系のビザになります。
日本人の配偶者等はわかりやすいかと思います。日本人と結婚すればこの在留資格を得られることになります。
日本人の配偶者等とは
日本人の配偶者等とは、
- 日本人の配偶者
- 日本人の特別養子
- 日本人の子として出生した者
となります。
特別養子というのは家庭裁判所へ「特別養子縁組」の申し立てをし、審判を経て成立するものになります。なお、2020年4月に民法が改正になり「原則として15歳未満の未成年者の福祉のため特に必要があるとき」に認められるものとなり、従前の「原則6歳未満」から認められる年齢が広くなりました。
では、雇用する側として「日本人の配偶者等」の在留資格が有効なのかといった点から詳述していきます。
婚姻関係の成立は婚姻届が受理されていることを指します。まれに、前の夫や妻とは離婚が成立しており、現在、内縁の夫や妻がおり、在留期間が残っているから大丈夫という理解の外国の方もおられますが、そこは要注意です。その在留資格は前の夫や妻との婚姻関係があるからこそ有効なのです。プライベートに基づくことで聞きづらいかもしれませんが、不法就労につながる恐れもあります。うまくヒアリングするようにしたいですね。
この事実が判明した場合には、是非、「入管に行って相談してきてください。」と伝えましょう。
「在留カードを見て、『日本人の配偶者等』と書いてあり、面接し日本語も上手なので安心したため、採用しようと思った。ただ、在留カードに書かれている住所がかなり遠く、県外なので『奥さんはご一緒ですか?』と聞くと、故郷に残してきているという。」ここは要注意です。ご本人に基本、別居はこの在留資格の趣旨から外れること、さらにはその理由を詳しくヒアリングしてみましょう。
定住者とは何か
定住者とは法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者としています。入国管理及び難民認定法にはややこしく書いてあるので簡潔に列挙しました。
- ミャンマー難民で、マレーシアもしくは、インドネシアに庇護されている者で、国際連合難民高等弁務官事務所により保護が必要と認められ、日本に対してその保護を推薦する者
- 日系人(二世、三世)
- 日系人の配偶者(二世、三世)
- 実親が日本人、永住者、定住者、日系人、日本人の配偶者又は永住者の配偶者が扶養する未成年で未婚の実子
- 養親が日本人、永住者又は定住者で、かつ扶養者であり、本人が6歳未満の者(特別養子を除く)
- 中国残留邦人とその配偶者、20歳未満の実子等
さて、ここで不思議な感覚が生まれると思います。ミャンマー難民で国連高等弁務官が保護を訴えているのに日本で難民と認定しないこと、日系人だけなぜ特別なのか、この点に触れてゆきます。
ミャンマー難民については、2010年より政府がUNHCR国連難民高等弁務官事務所とともに「第三国定住による難民の受入れ事業」とし創設されたものです。いわゆる難民と法律上の大きな違いは「本邦の国内で難民申請をする者」としており、国外にいる者は対象ではありません。
第三国定住による難民の受入れ事業(政府資料より)
日系二世及び三世については1980年代、バブル時代の最盛期だったころ、政府はいわゆるブルーカラー系の3K職種の深刻な人手不足対策として、その昔南米のペルーやブラジルに渡航した日本人に着目をしました。その二世、三世を日本に呼び戻すべくこの在留資格が1989年に生まれたのです。
当社においては、定住者は東海・北関東エリアからのご登録が多く、特に「自動車部品等の製造業」や「飲食料品の製造業」に携わる方が多い傾向にあります。
永住者とは
永住者は外国人が希望して申請をし認められる在留資格になります。
通常10年以上、日本で収入を持ち生活してきた実績があり、素行が優良である者に許可が下りる在留資格と考えて間違いありません。
つまり、税金や社会保険を滞納なく納付をし犯罪歴等がないことが申請要件に含まれています。
この犯罪歴等には罰金刑も入り、例えば、無免許運転や30キロ以上速度超過等も該当します。
なかなか、厳しい条件ですね。
なお、2019年に新しく始まった特定技能や技能実習生が日本に5年10年在留していても、残念ながらこの永住者許可要件の10年にはカウントされません。
申請時に必要な一般的な書類の抜粋です。
- 在職証明書
- 扶養する者もしくは本人の住民税納税証明書3年分等
- 身元保証書
- 身元保証人の住民税納税証明書
永住者はその在留資格を許可されるハードルが高いことは触れてきました。在留期限も無制限となり、就労制限がないことから安心して雇用につなげられる在留資格の一つです。では、実際に雇用する場合の不安材料は何になるでしょうか。
偽造という観点から言えば、在留カードを確認する方法以外にありません。出入国在留管理庁は 在留カード等番号失効情報照会で在留カードが有効かどうか確かめることができるサイトを運営しています。残念ながら在留カードの偽造技術が高くなりつつあること、そして巷ではこの番号さえも3万、5万偽造カードとともに販売されているのも事実です。
では、どうやって防げばいいのか不安になりますね。在留カードに埋蔵されているICチップをアプリでスキャンするほか、本人へヒアリングをすることをお勧めします。
当社においては、在留カードに記載のある「住所」に実際住んでいるのか、最寄りの駅等をヒアリングした際に矛盾が生じないか、また、その在留資格取得に至った経緯を尋ねることとしています。矛盾があれば雇用は控えたほうがいいかもしれません。

特定技能1号とは
特定技能1号とは
特定技能1号とは2019年4月に施行された「特に人手不足が顕著な14業種」に外国人を労働者として受け入れるべく創設された制度になります。
ここでは「なぜそもそも外国人を労働者として日本で受け入れて行かなくてはいけないのか、他に方法はないのか、逆に外国人を雇用するメリットはあるのか?」という点、さらには「現場でのメリットデメリット」「今までとの違い」について言及して行こうと思います。
日本は言わずと知れた少子高齢化社会です。2025年には「超」高齢化社会がやってきます。少子高齢化、人口減少。2025年には毎年死亡すると予測される人数は65歳以上で140万人、全体で160万人と言われています(厚生労働省推計今後の高齢化の進展より)。一方、出生率は1.36(2019年)出生数は90万人を割っています。(日本経済新聞2020年6月5日19年の出生率1.36)出生した人口から死亡した人口を差し引きしてずっとマイナスが続くことが予想され、このままで行けば年間70万人ずつ人口が減少していってしまうことになります。

総務省 我が国の人口の推移より
少子高齢化で労働力減少に歯止めをかけるための一つの施策として政府が打ち出したのが特定技能です。政府は当初の目論見として2019年から向こう5年間で35万人の特定技能外国人を生み出すことを目標にしています。
皆さんの周りで人手不足に困っている経営者はいらっしゃいますでしょうか。この文章を執筆しているのがコロナによる緊急事態宣言下のため、逆に仕事を探すのが大変な求職者が多いのが実情かと思います。
そんな中でも製造や建設、介護といった生活インフラ・エッセンシャルワークといった業種は人材を探しています。現場スタッフの高齢化も目立ってきていて、新入社員が60代ということも散見されます。シニア層がバリバリ働ける社会は素晴らしいと思います。一方、少子化がついて回る現在の日本社会ではシニア層もいつかは事切れてしまうことになります。
ここからは、特定技能1号外国人が日本社会で期待されていることや、彼らの就業に関する制限、実際の現場の生の声などをピックアップして行こうと思います。
日本に住む外国人は約300万人
出入国在留管理庁は、2021年3月、昨年末時点の在留外国人数が293万3137人であったと発表しました。この数字は前年末と比べ約20万人も増えており、5年連続で過去最多を更新しています。中でも注目すべきは技能実習生の数の伸び様です。昨年末時点での国内の技能実習生は約41万人にも上り、留学生約34万人を優に超える数となりました。
一方、2019年4月に新たに創設された在留資格「特定技能」はどうでしょう。政府は初年度で最大約4万7000人を見込んでいましたが、現実は2020年9月時点でたったの8,769人です。
「特定技能」って何?
さて、就労ビザにはどんな種類があるでしょうか。メジャーな技術・人文知識・国際業務から教授、芸術、宗教などの種類まで、特定技能を含め全部で19種類あります。
そのうち特定技能で外国人の受け入れが可能な業種は特定産業分野と呼ばれる14分野です。
- 介護
- ビルクリーニング
- 素形材産業
- 産業機械製造業
- 電気・電子情報関連産業
- 建設
- 造船・舶用工業
- 自動車整備
- 航空
- 宿泊
- 農業
- 漁業
- 飲食料品製造業
- 外食業
特定技能外国人への道
そもそもどのような手続きを踏めば「特定技能」という在留資格を手に入れることができるのか?これには大きく分けて2種類のルートがあります。
- 技能実習2号を良好に修了した者が、技能実習の業務内容に関連する特定産業分野に移行する。
- 国際交流基金日本語基礎テストか日本語能力試験(N4以上)どちらかに合格し、かつ特定産業分野別に定められた技能評価試験に合格する。
1の場合は、もうすでに技能実習生として似たような仕事をこなしてきた人たちが、原則いったん帰国した後で在留資格を変更し、より長い期間日本に滞在することができるようになります。2 の場合は、卒業後の進路として日本で働くことを考えている留学生を見込んでの制度といえるでしょう。
日本語の理解度は?
2のルートで特定技能ビザを取得するには「国際交流基金日本語基礎テストか日本語能力試験(N4以上)を合格する」、という要件がありますが、どのくらいのレベルの日本語力なのか、日本人の感覚からは分かりにくいですね。
言葉で説明するとするならば、
- ごく基本的な個人的情報や家族情報、買い物、近所、仕事など、直接的関係がある領域に関する、よく使われる文や表現が理解できる
- 簡単で日常的な範囲なら、身近で日常の事柄についての情報交換に応ずることができる
- 自分の背景や身の回りの状況や、直接的な必要性のある領域の事柄を簡単な言葉で説明できる
といったレベルです。これでもイメージがつかみにくいかと思いますので、実際にこのレベルで話している音声を聞いて頂くとよりはっきりとお分かりになるかと思います。こちらのページのA2レベルを参考にしてみてください。
A2レベルとは
技能評価試験ってどんな内容?
例えば、外食業の試験内容を見てみましょう。試験は3科目から構成されています。「衛生管理」、「飲食物調理」、「接客全般」の3つをしっかり学習することが求められます。「衛生管理」では、食中毒の知識や食物の汚染防止、HACCPなどを、「飲食物調理」では、食材の下処理、調理方法、調理器具などを、そして「接客全般」では接客における基本動作や食事マナー、営業準備と閉店作業やクレーム対応についても学びます。
当社では外食業分野における特定技能外国人第1号を送り出しています。技能評価試験合格まで週に1回学生たちと共に机に向かって試験の準備を進めてきました。専門学校生の彼らですが日本でのアルバイト経験を生かし「飲食物調理」や「接客全般」の学習は案外早く進みました。しかし難関は「衛生管理」。食中毒の原因となるウイルスや細菌の名称(O157、セレウス菌、サルモネラ菌、ウェルシュ菌、ノロウイルス等)はもちろん、鶏の卵なら中心温度が70度で1分以上の加熱が必要など詳細な知識まで求められます。彼らも首をかしげながら必死に勉強していました。

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